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俺の妹がこんなに可愛いわけがない~とある兄と弟の日常~

作者:雪月花
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第二話『俺の弟と妹がアキバに来るわけがない! 前編』

 
前書き
京介「え、コレをよむのか?えっと……この物語は、兄貴の雄夜と俺京介の日常を描いたものだ。過度な期待はしないように。
 そして、この物語はすべてフィクションだ。実在する、団体名、施設名、その他諸々とは一切関係無いからな。
 最後に、小説を読むときは部屋を明るくしてPC画面又は携帯の画面からできるだけ離れて読んでくれ。……っと、こんな感じで良いのか?」 

 
ダムッ…ダムッ…ダムッ………


 無人の体育館に響くボールをつく音。その音の正体は楽しげにバスケットボールでひとりドリブルをしている高坂雄夜だった。


「よっしゃ!3P!」


 3pラインからワンハンドシュートをうつ。うったボールはゴール目掛けて綺麗な放物線を描いていく。


 バスッ…


そのまま、ゴールに吸い込まれるようにネットを潜った。


「…ふぅ~……」


 一息つきながら汗を袖で拭う。


「ナイスシュート!さすが、元日本一の高校生バスケットプレイヤー」

「……なんで、この時間にお前がここにいるんだ?クリス。確か今講義中だろ?」

「今日は休講です」


 この、金髪に蒼い瞳の整った顔をしたハーフの女性、彼女は柳瀬・クリス・麻希奈。雄夜の幼なじみである。


「それなら、こんな所いないでサークル棟にでも行けばいいのに…」

「ユーヤ、忘れたの?これでも私、元バスケットボールプレイヤーだよ。ボールの音が聞こえたら嫌でもこっち来ちゃうよ」

「はいはい」


 クリスと雄夜は中学、高校共にバスケ部に所属していた。しかし、常に共に歩いてきた二人だがその道は対照的だった。
雄夜は中学の頃からその恵まれた才能と努力で天才と呼ばれていた。クリスは能力的にはかなり下の方で特に特出した物はなかった、ある物を除いては…


「なら、見せてくれよ。全国№1のシュート率を誇った『コート上の狙撃手』の異名を持つ柳瀬・クリス・麻希奈のシュートを…」

「あははは、懐かしいねぇ、その呼ばれ方。でも長いこと打ってないから、もう入らないよ…」

「別に入らなくてもいいんだよ。俺はただ、久しぶりにお前のシュートが見たいだけなんだ」

「………しょうがないなぁ~、一回だけだよ」


 ボールを雄夜から受け取りダムッダムッとついてり擦ったりして感触を確かめる。
3Pラインまで出てゴールを見据える。そして、一呼吸置いて構えてシュートをうつ。


 バスッ!


 雄夜がうったシュートとはまたちがった感じのシュートが綺麗な放物線を描き吸い込まれるようにネットを潜った。


「ナイスシュート…」

「ふぅ~、まさか一本目で入るとは思わなかったよ」

「またまた。ほら、汗拭けよ化粧が落ちるぞ」

「うん、ありがとう」


 雄夜からタオルを受け取り汗を拭く。たった一本シュートを打っただけとは思えない汗をかいている。
クリスが『コートの狙撃手』と呼ばれるのはこのシュート一本に掛けるもの凄い集中力があるからだ。
クリス曰く集中している時は周りがすべて止まっているように見えているらしい。









 ◇◇◇◇◇









「ぷはぁ~!!やっぱり、運動した後のドリンクはおいし~♪」

「もう少し上品に飲めないのか・・・」

「別にいいじゃん、今はユーヤしか居ないし」


 ニシシッと笑うクリスを少し呆れたように見る雄夜。


「そうそう、ユーヤ。頼みたいことがあるんだけど」

「別にいいが、課題のレポートなら手伝わんぞ」

「違うよ……って、レポートなんてあったけ?」

「ああ。確か提出期限は週明けだったかな」

「ユ、ユーヤは終わってるの?」

「もちろん、先週の土、日で終わらせた」


 雄夜の言葉に若干顔を青くする。
なぜなら今日は金曜日、週明けまでなら今日を入れてあと3日しか残っていない。
頑張れば終わらないこともないがそれでも誰かの手伝いがあっての話しだ。


「ユ……ユ~ヤ~…」

「だー!!手伝ってやるから、泣きつくなぁ!!……たく、それで?お前の頼みってなだよ」

「あ、うん。あのね………」









 ◇◇◇◇◇









「………で、何で俺は日曜にここにいるんだ?」


 現在、雄夜はクリスと共にヲタクの聖地秋葉原に来ている。
雄夜は訳も教えてもらえずに半強制的に連れてこられた、当の本人はと言うと―――


「アキバよ、私は帰ってきたー!!」


 何か某機動兵器で言いそうなセリフを思いっきり叫んでいた。
それを見ている雄夜は片手で顔を覆いながら「はぁ~…」と溜息をついて項垂れていた。


「……なぁ、そろそろここに来た理由(わけ)教えてくれないか?」

「……ユーヤはさぁ、私が『オタクっこあつまれ』っていうコミュニティに入っているのは知っているよね」

「ああ、まあな……で、それが?」

「うん、実は今日そのコミュのオフ会があるんだ」

「ふ~ん………それで、そのことと俺がここに呼ばれたのといったいなんの関係があるんだ?」

「だから、ユーヤにも一緒に来て欲しいなぁ~……なんて」

「なにバカ言ってんだよ。確かお前の入ってるそのコミュニティって女の子限定だろ?そんなところに、男の俺が行けるわけ無いだろうが」

「うん、だからさ私に良い考えがあるんだ」

「ほほぉ、ならお前の無い頭で考えた『考え』とやらを聞かせてもらおうか」

「なんか、ユーヤの言葉が心にグサッ!ときたけどあえてスルーするよ私…。とりあえず、ついてきて」


 果たして、クリスの考えとは……答えはWebで!じゃなくて後々に……さて、ここで、この秋葉原に足を踏み入れた若い男女がもう二人居た。









 side高坂京介









「とらのあな……ゲーマーズ本店……ラジオ会館……これが、ヲタクの聖地秋葉原!」

「(なんか、やたらとテンション高いな桐乃の奴)おい、物珍しいのは解るけど見るのはオフ会終わった後にしとけよ」

「わ、わかってるって。てか、あんまり近くに寄んないでよね。彼氏だと思われたくないし」

「(俺だって思われたくねぇ~よ…)」


 桐乃の言葉に小声で文句を言った京介。当の桐乃は未だに目をキラキラさせて辺りをキョロキョロと見渡していた。


「……たく。それじゃあ、最後に確認しとくぞ、俺は先にオフ会のある店に行ってるから困ったことがあったら何でも良いから合図をしろ。そしたら助けてやっから」

「うん、わかった。てか、どうしてあんたは雄兄みたいに女顔に生まれなかったのよ」

「あのな、誰もがアニキみたいに女装が似合うと思うなよ、お前!」

「あんた、自分で言ってて悲しくなんない?」

「うるせえよ!お前から振ってきたんだろうが!」


 ギャーギャーと口論をする京介と桐乃。端から見ると痴話げんかをする恋人にしか見えないな。


「あーもう、俺は行くからな」

「あ……」


 去っていく京介の背中を少し心細く見つめる桐乃。
一緒にいて欲しいと素直に言えない桐乃……ツンデレ乙!









 side高坂雄夜









「お前の考えって……これかよぉぉぉーーー!!」


 雄夜の心からの叫びが店内に響く。ここは、コスプレ衣装の貸し出し販売をしているクリス御用達の店『コスプレshop メイビー』である。


「おお~さすがユーヤ似合ってる~♪夜空さんもそう思いますよね?」

「うん、確かに男の子じゃなくて男の娘だね」


 この黒のショートヘアーの少しツリ目の女性はこの店の店長の『夜空』さん。
夜空とはコスプレイヤーネームで本名ではない。

サバサバした性格で姉御肌。クリスとは6年ほどの付き合いになる。
制服フェチで店では様々なアニメ、ゲームの制服を日替わりで着ている。


「いやいやいや、そんな笑顔で親指をサムズアップされながら褒められても嬉しく無いですから!」


「何を言う。女装が似合う男の娘ほど可愛いものは無いぞ。それに一言女装と言ってもだな……」










 …………
 ………………
 ……………………
 …………………………









「―――と言う訳なの、わかった?」


 長々と女装についての持論を述べた夜空の横でクリスはうんうんと頷きながら聞き惚れていた。


「さっすが、夜空さん。勉強になりました!」

「クリスは物わかりが良くて嬉しいぞ」


 ガシッと堅い握手をする二人。それを端から見ていた雄夜はこう呟いた。


「(駄目だコイツラ……)」
 
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