ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第四十六話 コンテナの輸送
久しぶりに会ったヴァンに助けられたことで何とか命からがら帰還したアッシュは小型艇を海岸の近くに停めて重たいコンテナを運びながら医務室に向かう。
「あー、重たい…後はこれをレギオンズ本部に持っていくだけね…ほら、あんた達。まずはここのハンターキャンプの医務室で手当て受けたら向かうわよ…」
「「………」」
「どうしたラザラス?レッド?」
無言の二人にニコルが振り返ると、レッドが口を開いた。
「悪い…俺はこのミッションから降りる」
「俺もだ…」
「はあ!?」
レッドとラザラスから出た言葉にアッシュが勢い良く振り返ると、良く見れば二人の表情は青い。
「今回は助かったけど…ライブメタルの近くにいたらあんな奴がまた出てくるかもしれないだろう?」
「あんな化け物を相手にしてたら命がいくつあっても足りねえよ…悪いが続けるんだったら続けたい奴だけやってくれ」
「お、おい!?」
逃げるように去っていく同期二人を止めようと追いかけていくニコル。
それを見たアッシュは頬を膨らませた。
「何よこの根性なし!良いわよ、だったらアタシだけでやるわよ!!ニコル、先に医務室行ってるわよ!!」
痛む体を動かしてハンターキャンプに向かおうとした時、アッシュの視界に一人の少年…グレイの姿が入った。
「子供!?あんた、大丈夫!?」
呼び掛けてもグレイは意識を失っているので返事がない。
「あーもう…これ…絶対…女の子のすることじゃないでしょ…」
コンテナと少年を引き摺って、アッシュはハンターキャンプの医務室へと向かうのであった。
「はあ、クタクタだわ…全くあいつらは!」
適当に道具を手にして自分で手当てをするアッシュ。
するとグレイが身動ぎした。
「うわああっ!……あれ…?ここは……?」
悲鳴を上げて飛び起きたグレイにアッシュは道具を落としそうになるが、何とか落とさずに済んだ。
「ちょっと、いきなり何よ!?医務室で大きい声出さないでよ」
アッシュの姿を認識したグレイはバスターショットを構えた。
「!?お前、僕を殺しに来たのか!?」
「はあ!?何でアタシがあんたを殺さないといけないわけ!?あんたが打ち上げられてた海岸からハンターキャンプまで重ったい荷物を抱えながら運んだのに随分な挨拶じゃない!?」
「僕を…運んでくれた?」
アッシュの言葉にグレイはバスターを下ろした。
「ええ、アタシもここのハンターキャンプのハンターじゃないけど、命からがらここまで逃げてきて、医務室に向かう途中であんたを拾ったのよ。あんたって見た目によらず重いわね~…それで?あんたの名前は?一体何があったのよ?初対面の怪我人のアタシに銃を向けたんだからそれなりの理由がないと怒るわよ」
「僕は…グレイって呼ばれてた…。気が付くと何かの建物の中で…パンドラって奴に、いきなり殺されそうになって…それで逃げてきたんだ。後は何も分からない…何も覚えてないんだ。」
「ふーん、なるほどね…確かにそれならいきなり銃を向けてきたのも納得出来るわね…いいわ、許してあげる。あんたも訳ありみたいだしね」
ハンター稼業を営む人の多くは“訳あり”であったりする。
ハンターの一人一人には何かの理由があり、イレギュラーによって故郷を滅ぼされたり、アウターで大きなお宝を発見してかつての大悪党のセルパンのような地位と財を得ようと故郷を飛び出した者。
そしてそもそも家族がハンターであったりするので、自分もなろうとする者もいたりする。
比較的安全なインナーではなく危険を冒してまでアウターで活動する事情は、大きい理由や小さな理由を含めて人の数だけ存在するのだ。
「その…お前の名前は?」
「あんたねぇ…初対面の女の子相手にお前はないでしょ?まあいいけどね。年齢(とし)は近そうだし…アタシはアッシュ。こことは違うハンターキャンプで活動していたハンターよ。ここはハンターの活動拠点のハンターキャンプで、世界中のアウターに存在するわ。その様子だと、グレイはハンターキャンプのこと知らないでしょ?アタシについて来なさい。隣の部屋にトランスサーバーがあるらしいからね」
「あ…あの…!」
「ん?何よグレイ?」
外に出ようとするアッシュを呼び止めるグレイにアッシュは振り返った。
「…その…助けてくれて…ありがとう…」
「ああ、別に良いわよ。困った時はお互い様ってね。あのまま放っていても気分が悪いしね」
それだけ言うとアッシュはトランスサーバーがある隣の部屋にグレイを連れていき、トランスサーバーにグレイを乗せてアクセスさせる。
「アッシュ?これは?」
「この機械はトランスサーバーって言う転送装置よ。インナーにある物と違って特定の行きたい場所に行くにはEクリスタルが必要になるけど、これからこの機械に世話になるだろうから覚えときなさい。えーっと…発行完了。はい、あんたのハンターライセンスよ」
アッシュがトランスサーバーから一枚のカードを抜き取ると、それをグレイに手渡す。
「ハンターライセンス?これは?」
「文字通りよ。あんたがハンターキャンプのトランスサーバーにアクセスしたことで正式なハンターとして認められたわ。ハンター認定の年齢ギリギリだったらしいからあんた十四歳なのね…アタシの一個下ね」
「そうなんだ…十四歳…でも僕はハンターになるつもりは…」
自分の年齢が分かったことに不思議な気分を感じながらもハンターになるつもりはないグレイは慌ててライセンスを返そうとする。
「あんた、ここ以外に行く宛てなんかないでしょ?最近迷惑なことに違法ハンターが増えててねー。そのライセンスがないとどこのハンターキャンプでも施設を利用出来ないのよ。ハンターキャンプで過ごしていくためには、ハンターライセンスは必要不可欠よ。トランスサーバーで再発行出来るけど…出来るだけ無くさないでね」
「分かった…ありがとう…」
「素直でよろしい。そうだ、グレイ…あんた戦える?その銃…飾りってわけでもないんでしょ?」
「え?う、うん…建物から逃げ出す時に…でかい奴とも戦った」
「そう、最低限の経験はあるってわけね…グレイ、アタシのミッションを手伝ってくれない?」
「ミッション?」
「そう、これからアタシは連合政府・レギオンズからの依頼でライブメタルを渡しに本部に向かうんだけど…同期の連中がねぇ…」
ラザラスとレッドが抜けたことを考えると、ニコルも抜けてしまうだろう。
流石に怪我をした自分一人だけでライブメタルを守り切る自信はなかった。
「レギオンズ?何か分からないことだらけだ…」
「本当に重症ねえ…まあ、あんたにとっても悪い話じゃないわよ?レギオンズはライブメタルを高値で引き取ってくれるらしいし、賞金は百万ゼニー。手伝ってくれればあんたに半分あげるわ、生きていくためには色々と必要でしょ?五十万ゼニーあれば当分は生活に困らないわよ?」
「…分かった…行くよ。でもどうしてアッシュは会ったばかりの僕にここまでしてくれるんだ?」
「言ったでしょ?困った時はお互い様ってね………それに自分のことが分からないって言うあんたの気持ち…分からないでもないしね」
「え?」
最後の辺りが聞こえなかったグレイは不思議そうにアッシュを見つめるが、アッシュはコンテナをグレイに押し付けた。
「はい、これ。ここのハンターキャンプの輸送列車のあるステーションまで運んでね」
「ま、待ってくれよ…アッシュ…!」
いきなり持たされた重たいコンテナにグレイはフラフラになりながら先を行くアッシュを追うのであった。
そして目的地のステーションに到着する頃にはグレイはヘトヘトになっていた。
「コンテナ運びご苦労様♪」
「酷いよアッシュ…先に行くなんて」
輸送列車に乗り込んだアッシュとグレイ。
アッシュはニヤニヤと笑いながらグレイに冷たいジュースと軽食のサンドイッチを渡した。
「別に意地悪したわけじゃないわよ。アタシはまだご飯食べてないし、あんたもまだでしょ?あんたが来るまでにステーションの売店で買ってたのよ。腹が減っては戦は出来ぬってね!ほら、食べましょ」
動き出した輸送列車。
コンテナに背を預けながら座ったアッシュとグレイは食事をしながら会話をした。
「そうそう、これからアタシ達が向かうレギオンズは数百年前の戦争の後に、各国の代表が集まって作った連合政府の事よ。人間とレプリロイドのための法律を作った…ようするにこの世界で一番偉い組織なの」
「一番偉い…そんな組織が欲しがる物って何なんだ?」
「ライブメタルって言う珍しいお宝よ。レギオンズはそれに莫大な賞金をかけてるのよ。アタシの手に納まるサイズで百万ゼニーもするのよ。」
「ライブメタル…どこかで聞いたことがあるような…ところでアッシュ…アッシュはどうしてハンターをしてるんだ?」
“ライブメタル”と言う単語に聞き覚えがあるような気がしたが、全く思い出せないのでアッシュにどうしてアッシュはハンターをしているのかを尋ねた。
「ん?アタシがハンターをしてる理由?……まあ、手伝ってくれてるんだし…いいか…アタシさ、ハンターに拾われて育ってきたんだ。イレギュラーに襲われたどこだかの町で、一人だけ生き残ってたんだって…だから、本当のアタシを知っている人は誰もいない…アタシ自身も知らないの…だからなのかもね、自分のことを何も分からないって言うあんたが…放っておけなかったのよ。アタシ、お節介だからさ」
「そう…なんだ…ごめん、アッシュ」
酷いことを聞いてしまったことに気付いたグレイは表情を暗くしながら謝罪した。
「別に気にしなくていいわよ。だからアタシは世界一のハンターになるって決めたんだ。あいつと約束したしね…歴史にアタシの物語を刻み込んで、みんなに知ってもらうのよ。アッシュって奴がいたってね、だ・か・ら!レギオンズからの依頼は絶対に成功させないとね!!」
「そっか…凄いなアッシュは…僕にはそういう生きるための理由がない…」
「だったらアタシとチームを組む?過去が分からなくても歴史に名前を刻むことくらいは出来るんじゃない?世界中にグレイって凄い奴がいるんだって轟かせちゃいなさいよ。道を歩けばみんなあんたに頭を下げるかもよ?」
「はは…何だよそれ………ありがとう…アッシュ」
アッシュの言葉に少しだけ気持ちが軽くなったグレイは初めて笑顔を浮かべた。
「こいつらもオイラと同じ…自分のことを…知らないのか…?」
「「?」」
突如聞こえてきた声に二人は周囲を見渡した。
「グレイ、あんた何か言った?」
「僕は何も…アッシュこそ何か言ったんじゃ…」
「ん?お前ら、オイラの声が聞こえるのか?」
「やっぱり聞こえる…!」
「アッシュにも?実は僕にも…」
コンテナの方を振り返った瞬間、先頭車両の方で爆発が起こり、イレギュラーが現れた。
「イレギュラー!?もしかしてライブメタルを狙ってきたの!?」
「……あっ!?」
二人の前に現れたのはプロメテとパンドラだった。
それを認識した二人はライブメタルの入ったコンテナを守るように立ちはだかる。
「…プロメテ!あんた生きてたのね…ヴァンはどうしたの!?」
「…見つけた…ロックマンの…失敗作…それに…ライブメタル…モデルAの…コンテナ…」
「ふん、俺は簡単には死なん。あいつも同じように生きてるだろうよ…それにしてもまさかあいつの知り合いだったとはな」
「…ロックマン…モデルOの…関係者?」
「ふん、それはどうでもいいことだ。どうせここで死ぬ…それにしてもパンドラ、こんなガキ一人処分出来てないのか」
「ごめん…プロメテ」
パンドラの謝罪にプロメテは大鎌を構えながらアッシュとグレイを見つめる。
「まあいい、さっさとこいつらを始末してライブメタルを取り返すか」
「そうはさせないわよ!アタシのハンター人生に懸けて、こいつは渡さない!グレイ、こいつらはアタシが食い止めるからあんたはライブメタルを持って逃げるのよ!!」
「そんな、アッシュ!」
レーザーショットを抜いてプロメテとパンドラを攻撃するが、二人からすれば蚊に刺された程度でしかない。
「せやあっ!!」
「きゃあっ!?」
プロメテが鎌を振るって衝撃波を繰り出すと、アッシュを吹き飛ばしてコンテナに叩き付ける。
そしてアッシュと一緒に衝撃波を受けたコンテナに大きな亀裂が入った。
「アッシュ!」
力なく倒れたアッシュを抱き起こすグレイ。
「屑が…そこで大人しく死んでいろ。次はお前だ」
プロメテが次の標的をグレイに定めた。
「くっ…このままじゃ…嫌だ…!僕は…僕は…っ!」
「っ…アタシは…こんな所で…」
何も分からないまま死にたくないと願うグレイと、志半ばで死にたくないと願うアッシュ。
そんな二人の想いに応えるかのように壊れたコンテナから一つの金属が飛び出した。
「おい!お前ら!死にたくなかったらオイラの言う通りにしろ!オイラの声が聞こえるなら、お前らのどっちかが変身出来るはずだ!力を貸してやる!」
「だ…誰だ…?」
「あんたは…一体…?」
「オイラはライブメタル・モデルA!意識を集中して、叫べ!ロックオンって!」
「「っ…!!」」
モデルAの声に導かれるまま、アッシュはグレイに支えられながら立ち上がり、二人は同時に叫んだ。
「「ロック…オーンッ!!」」
「適合者確認!R.O.C.K.システム、起動開始!!」
二人の体は光に包まれ、見た目に少々の違いはあれどほとんど同じ姿の二丁拳銃を携えたロックマンへと姿を変えた。
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