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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第十八話 ベースの防衛

 
前書き
ベースの防衛戦ですが、内容はかなり変わるかと 

 
シュウを街に送り、ガーディアンベースに戻った二人は破損したモデルH達をフルーブに任せて司令室のブリッジに向かった。

ブリッジに入るとモニターで状況を見聞きしていたプレリーとジルウェが痛ましげにヴァンを見ていた。

「ヴァン、エール…お帰りなさい………その、ヴァン…私…何て言えばいいのか…」

「良いんだよ…あの時の俺は…本当に化け物…イレギュラーだった。」

本当に快感だった。

パープリルの体を斬り刻んでいくことに自分は確かな悦びを感じていた。

それは明らかに普通ではない感情であり、あの時の自分はシュウに化け物と言われても仕方がなかった。

「そんなことないっ!あいつ…今回は見逃したけど今度会ったらアタシがボコボコにしてやるんだから…!」

拳を鳴らして憤るエールにヴァンは首を横に振る。

「良いって…寧ろこれで良かったんだ。俺みたいな奴がガーディアンにいることが分かれば、あいつもガーディアンに入りたいなんて思わないだろ」

「ヴァン…お前…」

「ここに帰る前にエールから聞いたんだ。あいつ、ガーディアンに入ろうとしてたんだろ?…これから先…もっと強い敵と戦うことになるから…これで良かったんだ。あいつを死なせないために…」

「そうか…なら、俺が言いたいことは一つだけだ。頑張ったなお前ら」

ヴァンとエールの頭に手を乗せて労いの言葉をかけるジルウェ。

「先輩…」

「ジルウェ…」

「辛かったな…お前らが家族を喪った場所でその仇と向き合わないといけないってのは…こんな時、お前達と一緒に戦えない自分が情けないな」

「そんなことないよジルウェ…アタシが…乗り越えられたのは……ヴァンやプレリー達……ジルウェが…いて…くれたから…だよ…」

「あ、そうだ。プレリー…依頼のぬいぐるみだ。これ以上溜め込むなよ?」

何だかあまり邪魔してはいけないような雰囲気を何となく感じたヴァンはプレリーに依頼のぬいぐるみを渡した。

「……ありがとう…ヴァン、お疲れ様…あなたも辛かったわよね。あの場所であなたのお母さんの仇と向き合わなければならなかったのは…それに彼のことも」

彼らの会話を聞く限り、シュウと言う少年はヴァンがジルウェ・エクスプレスにいた頃からの知り合いらしい。

そんな彼にあのようなことを言われて傷付かないはずがない。

ヴァンは優しい人だからだ。

「良いんだ。もうこれで覚悟は決まったからな」

「え?覚悟って…」

ヴァンの言葉の意味を聞こうとしたプレリーだったが、それを遮るようにガーディアンベースが揺れた。

「!?」

「きゃあっ!?」

突然のことにヴァンは驚き、エールは体勢を崩しそうになったが、何とか堪えた。

「オペレーター、報告を!」

「レーダーにセルパン・カンパニーの飛行艇の反応があります!恐らくそれによる攻撃です!!」

プレリーの指示にオペレーターはレーダーがキャッチした飛行艇の反応を言うと、ジルウェが表情を歪めた。

「セルパンの奴…ガーディアンベースを沈めるつもりだな…自分がいた組織を躊躇わずに攻撃するなんてな」

「丁度良いじゃないか先輩…セルパン・カンパニー自慢の飛行艇を一隻も残さず叩き墜としてやる!!」

甲板に出て迎え撃とうとするヴァン。

それを見たエールは慌ててフルーブに通信を入れる。

「ヴァン!待って!フルーブ、モデルH達は!?」

『無理です!破損が酷すぎて本来の力が出せません!!』

「…仕方ない…残ったライブメタルで切り抜けるしか…」

モデルX、モデルZを握り締め、唯一無傷のモデルPを見遣る。

「モデルP…アタシに力を貸してくれないかな?ベースのみんなを守るために…」

「拙者もまたお主と同じく弱き者のための刃…今一度(ひとたび)、弱き者の刃となろう」

「ありがとうモデルP!!ダブルロックオン!モデルPX!!」

新たなるダブルロックオンの変身、モデルPXとなったエールもヴァンを追い掛けて甲板に飛び出した。

「ヴァン…エール…無事に帰ってこいよ…」

「お姉ちゃん…お兄ちゃん…二人を守って…」

残されたジルウェとプレリーは戦いに向かったヴァンとエールの無事を祈った。

甲板に出た二人はセルパン・カンパニーの飛行艇に攻撃を仕掛けていた。

正確にはヴァンが飛行艇をバスターショットで狙撃し、エールがチャージ攻撃の十字手裏剣からのクナイの連続投擲で敵の飛行艇から射出されるコンテナを破壊しながらだ。

モデルPXのチャージ攻撃である十字手裏剣はモデルZXの一段階チャージと同じ時間であり、セミチャージバスターよりも高威力なので本来ならコンテナのような物の破壊に適したモデルFが使えないが、これならモデルZXよりも早く破壊出来る。

時には十字手裏剣を展開したまま回転させて簡易的な盾にすることで敵からの攻撃を防御する。

「墜ちろ!!」

ヴァンが放ったチャージバスターが飛行艇を貫き、残りの飛行艇も残り一隻となった時、複数のコンテナが射出され、エールは即座に破壊しようとするが、間に合わずにメカニロイドの出撃を許してしまう。

「「っ!?」」

コンテナから飛び出したイレギュラーの中には大鎌を担いだ死神のようなレプリロイドのプロメテと、杖を持った神官のようなレプリロイドのパンドラ。

エリアDで見た二人はメカニロイドを引き連れてベース内に侵入した。

「…あいつらは…あの時の……!」

エールが呟いた直後にプレリーからの通信が入った。

『敵の部隊がガーディアンベースに侵入してきたわ!一番下にある動力部に向かってる!中に戻って動力部を守って!』

「くっ!やらせるか!」

ヴァンとエールはベース内に戻るが、メカニロイドがベース内を徘徊しており、このままでは非戦闘員が巻き込まれてしまう。

「エール、動力部は俺が何とかするからこいつらを頼む」

「で、でも…」

「心配するな、死ぬつもりなんかない…アースクラッシュ!!」

エールにメカニロイドを任せてヴァンは近道をしようと、拳にエネルギーを纏わせて床を殴り付けて穴を開けた。

「(後でプレリーに謝るか)」

アースクラッシュで作った穴に飛び込んで一気に動力部に向かう。

一方、動力部ではプレリーとジルウェがプロメテとパンドラから動力部を守ろうとしたのだが、ジルウェはプロメテに一蹴され、プレリーの喉元に鎌の刃が翳されていた。

「っ…」

「赤のロックマン…確かジルウェと言われていたな?あのエールとか言う小娘がモデルZを持っていたと言うことは、お前…戦える体ではないようだな?戦えないロックマンなど必要ない。こいつを始末したら次はお前だ」

「ぐっ…止め…ろ…」

「弱い奴の言葉など虚しいだけだ」

ジルウェの言葉に耳を貸さず、プロメテはプレリーの首を斬り落とそうとした直前に天井が吹き飛んだ。

「その手を放せ」

天井を破壊して現れたヴァンは躊躇なくプロメテの脳天にアルティメットセイバーの切っ先を突き刺そうとしたが、プロメテは咄嗟に鎌で受け止めた。

そしてヴァンは距離を取るついでにプレリーとジルウェを抱えて大きくバックステップする。

「大丈夫か二人共?」

「ヴァン…!」

「すまない、助かった」

二人の無事を確認したヴァンはプロメテとパンドラに鋭い視線を向ける。

プロメテは不敵に笑い、パンドラは無表情のままだ。

「…来た…あの時の…少年……想定外のライブメタル……モデルOの…真紅のロックマン」

「ようやく会えたな、小僧。確か…ヴァンと呼ばれていたな?俺達はお前と会えるのを楽しみにしていた。」

「イレギュラーにそう思われても嬉しくもなんともないな」

「フフフ…イレギュラーか…だが、お前もまたイレギュラーな存在だぞ?本来このゲームにモデルOと呼ばれるライブメタルは存在しない。そのモデルOで変身したお前は想定外のロックマン…そしてお前を中心に次々と想定外のことが起きている。数百年前に滅んだ存在が蘇り、お前を求めて猛威を振るっている。これはこのロックマン同士が殺し合い、王の座を巡るゲームを仕組んだあの男すら予想していなかったことだ。」

「………つまり、セルパンの他にも倒さないとならない奴がいるってことか…そのゲームを仕組んだ奴は必ず見つけてやる…!その前にお前達だ…っ!!」

セルパンの他にも倒さないとならない存在がいることを知ったヴァンはまずは目の前の敵に集中する。

「良い目だ…セルパンにはガーディアンを潰すように言われたが……まあいいだろう。お前の力を見せてもらうぞ…古の戦争で破壊神と恐れられた悪魔のレプリロイドの力をな」

「……プロメテ……ずるい……」

「何、楽しみは残しておいてやる。モデルOのオリジナルの破壊神の肩書きが偽りでなければの話だがな」

「(こいつらもモデルOのことを知っている…モデルOのオリジナルのこと調べたのか?ガーディアンベース以外で…?)」

つまり“あの男”とやらは大昔の戦争の歴史を知っていることになる。

プロメテが鎌を構えたことでヴァンもセイバーを構えた。

「ヴァン…」

「プレリー、先輩を連れて下がってろ…こいつらは…イレギュラーは全て倒す………何があってもだ」

その言葉に強い決意を感じたプレリーは妙な胸騒ぎを覚えたが、このままいても邪魔になるだけなので動力部を出た。

シャッターが閉じた瞬間、ヴァンとプロメテのセイバーと鎌の刃が激突した。

力は拮抗、ヴァンは拳にエネルギーを纏わせたオメガナックルでの一撃をプロメテに叩き込もうとするが、プロメテは不敵に笑うとワープした。

「こっちだっ!」

拳が空振りし、プロメテはヴァンの真上を取って鎌を構えながら急降下した。

「当たるかっ!」

即座にヴァンはダッシュでかわし、バスターを構えてチャージバスターを発射する。

「ぬんっ!!」

プロメテは振り返り様に鎌で薙ぎ払うと、そのままヴァンに斬り掛かるが、ダブルジャンプで斬擊と衝撃波をかわす。

「はあああああっ!!」

「せぇやああああっ!!」

セイバーによる回転斬りをプロメテに繰り出しながら急降下するヴァンに対して、プロメテも鎌を高速で回転させながら上昇する。

互いの刃が何度も激突し、このままでは埒が明かないと判断したヴァンは回転斬りを中断して殴り掛かり、それをプロメテは鎌の柄で受け止めた。

「くそっ!!」

プロメテを強引に弾き飛ばし、その勢いを利用して距離を取り、チャージを終えたバスターを構えてチャージバスターを放った。

「焼き尽くせっ!!」

それをプロメテはワープで回避、再びヴァンの真上を取ると、髑髏を思わせる紫色の炎を四発発射した。

髑髏の炎からヴァンに向かって火球が放たれ、最初はかわせたが、回避後の隙を突いてきたために数発喰らってしまう。

それを見たプロメテは笑みを浮かべるが、次の瞬間のヴァンの変化に僅かだけ瞠目した。

火球を受けたアーマーの損傷が瞬く間に直っている。

いや、直っていることはいい。

ロックマンのアーマーには自己修復機能があるのだから直るのは当然なのだが、ヴァンの場合はあまりにも速すぎるのだ。

そしてその驚きは隙となってヴァンのセイバーによる三連擊を受けてしまう。

「ぐっ!!」

アーマーが裂傷を負うが、先程のヴァンと同じスピードで修復されていく。

「うおおおおっ!!」

至近距離でチャージバスターを放つヴァンに、プロメテはジャンプで回避するとヴァンに向かっていく。

「(なるほど、こいつ…そういうことか)」

ヴァンの状態を理解したプロメテは笑みを深めてヴァンのセイバーを防いでいく。

「オーバードライブ!ダブルチャージバスターを喰らえ!!」

バックステップで距離を取ってオーバードライブを発動し、この状態時のみ使えるダブルチャージバスターでプロメテを攻撃する。

「ふんっ!せやあっ!!」

鎌で防ぎ、ヴァンはオーバードライブを発動した状態でプロメテに向かっていく。

「でやああああっ!!!」

再び互いの刃がぶつかり合うが、オーバードライブによる出力上昇のためか、プロメテが力負けする。

「フ…ハハハッ!!俺が力負けするのは一体何百年ぶりだろうなぁ!?もっとだヴァン!もっと力を引き出せ!このゲームを生き残り、あの男が仕組んだゲームの流れを崩していく…それが想定外の存在であるお前の存在理由なんだっ!!」

「俺の生き方は俺が決めるっ!お前が決めることじゃない!!」

ヴァンとプロメテの戦いを見つめていたパンドラは小さく呟いた。

「モデルO…私達と同じ…呪われたロックマン…」

その呟きは戦っているヴァンには聞こえなかった。

「フハハハハッ!もっとだ!もっと…楽しもうじゃないかぁっ!!」

プロメテの髪が硬質化して伸びて床に刺さった次の瞬間に壁と床に鋭利な刃となって生えた。

「ぐっ!?」

刃によって体にいくつもの傷が刻まれたが、ヴァンはダメージに構わずオーバードライブで強化したチャージセイバーをプロメテに叩き込んだ。

「ぐはっ!……フフフッ…!良いぞっ!!破壊神の肩書きは伊達ではなかったらしい」

吹き飛ばされたプロメテは体勢を立て直して鎌をしまった。

「……プロメテ……怪我してる……」

「ふん、こんな傷はすぐに治る…あいつと同じようにな」

「………どういうことだ?」

「お前と同じだ。俺達もライブメタルに呪われたロックマン…お前の同類だ」

同類と呼ばれたことにヴァンの表情が歪んだ。

「お前はライブメタルと一体化しているな?つまり変身の解除も出来ないだろう。そんな状態となったらもう人としての人生を迎えることなど出来ん。モデルOのオリジナルを考えれば…お前の未来は絶望しかない」

「………だからどうした?こんな体になった時点でまともに生きられるなんて思っていない。だったらこの力で全てのイレギュラーを倒してやるだけだ!セルパンも、お前達も、そしてお前達の言うあの男って奴もだ!!」

「フフフ…大きく出たな…認めよう、お前はこのゲームに参加する資格がある。もっと強くなることだ。強くなって…ライブメタルのオリジナルのような存在になればあの男に会えるかもな…」

「……あの少女も…来る…」

「何?」

パンドラの呟きにプロメテが反応すると、モデルZXへと変身したエールが駆け込んできた。

「ヴァン、大丈夫!?」

「…プロメテ…あれは…あの時の…少女……モデルZと…モデルXの……融合体……」

「さしずめ…モデルZX(ゼクス)というところか。複数のライブメタルを組み合わせることで更なる力を引き出す…あの女が作ったライブメタルにそんな機能があったとはな」

プロメテの言葉にプレリーが動力部に駆け込んできた。

「待って!あの女って…!もしかしてお姉ちゃんのことを知ってるの!?」

「…そうか、あの女の仲間ということは…お前、この時代の者じゃないな…?フフフッ…これも因縁という奴か!面白いことになってきた…!おい、小娘」

プロメテは笑みを浮かべながら宙を浮き、エールを見下ろす。

「っ……」

自分を見下ろすプロメテをエールは睨み返した。

「あの男の仕組んだゲームに参加する資格があるかもう一度試してやろうと思ったが…今日はとても気分がいい。見逃してやる…次に会う時まで腕を上げておくことだな。お前も俺達の仲間として認められるように頑張ることだ」

「お前達の仲間に…?何を言ってるの!?」

エールが叫ぶが、プロメテは気にせずにヴァンとエールに向かって口を開いた。

「もっと強くなれ、そして俺達を追ってこい…モデルVがお前達を待っているぞ…!ハァーッハッハッハッ!!」

高笑いしながらプロメテはパンドラと共にガーディアンベースから去っていった。

『プレリー様!敵の飛行艇が離れていきます!』

「…敵は撤退しました、被害状況の確認をして下さい。それと…怪我人の手当てを優先してあげて」

『了解しました』

「…二人共…司令室に戻りましょう…」

オペレーターとの通信を終えたプレリーはヴァンとエールにブリッジに向かうように促し、二人はブリッジに向かうのであった。 
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