ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第十七話 破壊神の力
前書き
モデルOXとの違いを出すためにオーバードライブ中でもチャージセイバーが使えますよ。
寧ろOXよりO単体の方が強いです。
マンドラゴを破壊してパープリルを追い詰めた二人だが、目の前に現れた檻に閉じ込められたシュウの姿に二人は動きを止めた。
「シュウ!?」
「何でシュウが!?」
ヴァンとエールは何故シュウが囚われているのか分からず、困惑してしまう。
「ヒャハッ!人質さ。おい、女のガキ。こいつの命が惜しかったらてめえの持ってるライブメタル…モデルH、L、Fを俺様に寄越しな。そうすりゃ助けてやるぜ?」
「何!?」
「そんな…」
パープリルの要求にヴァンとエールが目を見開く。
「外道が…!」
「汚ぇ真似しやがって…!」
「最低ね…」
要求された三人もパープリルの外道なやり方に吐き捨てる。
「嫌なら良いんだぜ?こいつがどうなっても良いならよぉ!!」
爆弾を取り出し、シュウの檻に投げつけようとするパープリル。
「ひいっ!!」
「や、止めて!!」
いくら喧嘩してても付き合いが長い知り合いを失いたくはないエール。
しかしライブメタルはプレリーの“お姉ちゃん”が作った大切な物なのだ。
苦悩するエールにモデルH達は前に出た。
「……俺達がお前の手に渡れば、その者の命は保証するのだな?」
「ヒャハッ!約束してやるぜ!ライブメタルさえ手に入りゃこんなガキに用なんかねえよ!!」
「………良いだろう」
「モデルH!?」
シュウとの交換に応じるモデルHにエールは驚く。
「確かに俺様達はあのガキとは何の関わりもねえが…」
「人間を…自分達が信じる正義のために戦い続けてきたオリジナルから受け継いだ誇りって物があるのよ」
「……ごめんっ!!」
エールが謝罪すると、モデルH達はパープリルの手に渡った。
「ヒャハハハッ!これさえ手に入りゃあ、このガキは用済みだぜ!!」
「うわあっ!?」
「シュウ!!」
檻ごと蹴り飛ばされたシュウをヴァンが受け止めた。
「ヴァン…」
「大丈夫か?」
「あ、ああ…またお前らに助けられちまったな…」
「ヒャハハハハッ!!お優しいこったなぁ!だがよ、てめえらには実験に付き合ってもらうぜぇ?」
「実験…?」
ヴァンと共にシュウを背後に庇っているエールがパープリルの言葉に表情を顰めた。
「こいつらを使った同時ロックオンだぁ!!」
「「ぐあああああっ!!」」
「きゃあああああっ!!」
無理やり力を引き出されているモデルH達の悲鳴にヴァンとエールの目が見開かれる。
「モデルH!モデルL!モデルF!!」
「くそおっ!!」
チャージを終えたバスターショットを構えてヴァンはチャージバスターを放つが、パープリルはそれを凄まじいスピードでかわした。
「何!?」
「ヒャハハッ!凄え…これがモデルHのスピードかよ!」
パープリルのボディは元々持っていたライブメタルを含めて合計四つのライブメタルのエネルギーで金色に染まっていた。
「ぐうう…エール!ヴァン!俺達に構うな!早くこいつを倒せ!!」
「で、でも…こいつを攻撃したらモデルH達まで…!!」
「遠慮は…いらん…っ…こいつを生かしておけば…どういうことになるかは…お前達が誰よりも知っているはずだ!!」
「そうだぜ…こんなクソ野郎に取り込まれたままでいるくらいなら…いっそぶっ飛ばされた方がマシってもんだぜ…っ!!」
「早くこいつを…倒しなさい…っ!私達の意志が…残っているうちにっ!!」
「次はモデルFのパワーを見せてやるぜぇっ!!」
「まずい!!」
チャージを終えたZXバスターを構えてエールはチャージバスターで迎え撃つ。
しかし炎を纏わせた拳がチャージバスターをあっさりと掻き消してしまった。
そしてパープリルの拳はエールの体に叩き込まれた。
「ごふっ!?」
あまりの威力にエールは口から血を吐きながら吹き飛ばされる。
「エール!!よくも!!」
ヴァンはアルティメットセイバーを抜いてパープリルに斬り掛かるが、パープリルはモデルHのスピードでヴァンの攻撃を容易くかわしてしまう。
「次はモデルLの力を見せてやるぜぇっ!!」
「使う前に叩き斬ってやる!!」
チャージを終えたセイバーでチャージセイバーを繰り出すが、パープリルのボディの表面に強固な氷の膜が出来ており、モデルOのセイバーですら突破出来ない程の防御力であった。
「凄え…凄えぞぉっ!!今の俺様は無敵だーーーっ!!」
モデルHのスピードとモデルFのパワー、そしてモデルLの防御力を得たパープリルの猛攻に二人はまともな抵抗も出来ずに吹き飛ばされるだけ。
「がは…っ!」
「うう…くっそぉ…」
倒れ伏しているエールはモデルLの力をまともに受けたのか全身が凍り付いていた。
ヴァンもモデルFの炎に全身を焼かれて相当のダメージを負っている。
「っ………」
エールは悔しげに涙を流している。
このままでは確実に負け、パープリルは人々を襲って自分達のような存在を増やし続ける。
倒さねばならないのに全く敵わない自分が悔しくて仕方がない。
「…………何が………だ……」
「あん?」
ヴァンの呟きが聞こえなかったのか、パープリルの視線が向けられる。
「(何が、破壊神のライブメタルだ…何が…世界を滅ぼしかけただ…こんな奴に…手も足も出ないなんて…力が…欲しい……母さん達を…殺した…こいつだけは…)」
「はっ、動けねえのかよ。それにしてもこのパワーは凄えぜ、まだまだ試し足りねえし、これから街で一暴れするか?」
ヴァンを嘲笑しながらパープリルは自らを破滅へと導く言葉を口にした。
「(ああ…こいつを………)」
“全てをゼロにするために”
“全て破壊し、無へと帰せ”
“力を求めよ”
“我は…”
頭の中に響くモデルOの声が鮮明になっていく。
体はどんどん熱くなっていくのに寧ろ心地がいい。
体の内側から力が溢れて来るようだ。
もう、抑えられない。
「(粉々にしてやりたい)」
“我は救世主(メシア)なり”
その言葉を最後にオーラを纏ったヴァンはゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと目を開いた。
瞳の色は、いつもの翡翠ではなく鮮血を思わせる紅であった。
「ヒャハッ!まだ立てるのかよ!面白ぇ、もっとこのパワーを試させてくれよぉっ!!」
炎を纏わせた拳で殴り掛かろうとするが、掌に刻まれたΩの文字が煌めき、手にエネルギーを纏わせるとそれを容易く受け止めた。
「は…?」
「消えて無くなれ」
呆然とするパープリルに言い放たれた言葉はヴァンのものとはとても思えない冷たさだった。
ヴァンの振るったセイバーがパープリルの両腕をあっさりと斬り落とした。
モデルLの氷の膜でパープリルのボディの防御力が格段に上がっているにも関わらずだ。
「ギャハアアアアアッ!!!」
「ふん」
あまりの激痛によるパープリルの悲鳴に何の感慨も抱かずにヴァンはセイバーを振るった。
右足
左足
右肩
左肩
ヴァンがセイバーを振るうごとにパープリルのパーツがあっさりと宙を舞う。
「嘘…だろ…俺様は…四つのライブメタルを使ってん…だぞ…?たった一つのライブメタルのロックマンのガキに…最強無敵の俺様がぁ…」
「うるさい」
チャージを終えたバスターを倒れ伏すパープリルに向け、チャージバスターで胴体を吹き飛ばすと頭部だけが転がる。
そして残った頭部をゆっくりとした動作で踏みつけると、少しずつ力を入れていく。
ミシミシと嫌な音が鳴り、パープリルの頭部が変形していく。
「ち…畜生…!俺は幹部なんだぞ…!強いんだぞ…!強い…はずだろ……!?」
次の瞬間、パープリルの頭部は踏み潰された。
「ひ、ひいっ!?」
パープリルの凄惨な最期に一部始終を見ていたシュウは腰を抜かして震えていた。
「ヴァン…?」
「は…ははは…」
あまりにも惨いパープリルの最期、そしてそれを与えたヴァンに呆然としながらエールは立ち上がった。
ヴァンは自分の両手を見つめながら凶悪な笑みを浮かべた。
「凄い…力が溢れてくる…!今の俺ならどんなイレギュラーでも倒せる!!何もかも壊せる…全てをゼロに…っ!!」
「何言ってるのヴァン!?何か…変だよ!?正気に戻ってよ!!」
エールがヴァンに触れながら正気に戻そうと呼び掛けるが、振り返ったヴァンの表情は険しく、とても幼なじみの彼女に向けるような物ではなかった。
「うるさい…っ…雑魚が俺に指図するな!!」
「…っ…ヴァン!!!」
ヴァンの言葉にショックを受けたが、明らかに正気ではないヴァンをこのままには出来ず、先程よりも声を大きくして名前を呼んだ。
「………え?」
瞳の色が紅から翡翠に戻り、自分の失言に気付いたヴァンは慌ててエールに謝罪する。
「エール…ごめん、悪かった…そんなつもりじゃ…」
「…いいよ、アタシが弱いのは事実だし…それよりもあの力は何なの?オーバードライブみたいだけど…」
いくらライブメタルのリミッターを外したからとは言え、あそこまで豹変するものだろうか?
「………分からない…頭の中でモデルOの声がはっきりと聞こえた瞬間に力が溢れ出してきて……でも、こんな状況だし使える物は使おうと思う」
「ヴァン、お願い…アタシ、もっと強くなるから…だからあの力は使わないで…凄く嫌な予感がするの…ヴァンが、アタシの知ってるヴァンじゃなくなりそうで…」
「…………分かったよ、でも本当にやばいと感じたらこの力を使うぞ」
「…………」
不安そうにするエールにモデルXが助け船を出してくれた。
「大丈夫だよエール。僕がヴァンのオーバードライブの制御を手伝うよ、出力は大幅に下がるけれどこれでヴァンも安心して使えるはずさ」
「……サンキュー、モデルX…そうだ、モデルH達は!?」
二人はパープリルに取り込まれたモデルH達を探すと、残骸から罅だらけの状態となったモデルH達を発見した。
「大丈夫!?酷い…」
「先程の無理なロックオンのせいだ。」
あまりにも酷い状態にエールは絶句するが、聞き慣れない声に気付いて振り返ると、パープリルの腕から一つのライブメタルが飛び出した。
「あなたは?」
「拙者は影のライブメタル・モデルP。ようやく自由になれたが、モデルH達は力を無理に引き出されたせいでこのような状態となってしまった…意識はあるかモデルH?モデルF?モデルLよ?」
モデルPが声をかけると、何とか意識が覚醒したモデルHが答えた。
「…っ…モデル…P…か…あのロックオンで相当な負荷がかかったようだ。変身なら何とかなるが、オーバードライブとチャージが使えん…」
「俺様もだ…」
「私もよ…女の扱いを戦闘馬鹿以上に理解してないわね……あの猿…っ!」
モデルFもモデルLも意識はハッキリとしているようで、何とか声を出してくれた。
それに安堵してヴァンはシュウの方を振り返った。
「ひ…っ…」
パープリルの最期を見たシュウの表情は恐怖で歪んでいた。
「おい、シュウ…お前も大丈…」
「く、来るな!化け物!!」
「…………」
その言葉を聞いたヴァンの言葉は止まってしまい、体も止まってしまった。
「あ……」
「シュウ…っ!あんたねぇ!!」
「良いんだよ別に…俺は先にトランスサーバーの所に戻ってる…待ってるからシュウを街まで送ってやってくれエール…」
ヴァンの表情を見て自分の暴言に気付いたシュウ。
暴言を吐いたことに怒って掴み掛かろうとしたエールを抑えると出口のシャッターではなく、この部屋の入り口となるシャッターへ向かった。
そして二人は別行動を取り、ヴァンは先にトランスサーバーへ行き、エールはシュウを街に送った。
「あ、あのさ…エール…」
「ガーディアンに入るってのはああいうことだよ。とんでもないイレギュラーと戦うこともあるし、下手したら死んじゃうかもしれない…ねえ、シュウ…もう、仕事以外でアタシ達に関わらないで、巻き込まれても知らないから」
それだけ言い残してエールもまたトランスサーバーのある所へと向かったのであった。
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