ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第十一話 束の間の休息
前書き
プレリー=アルエットなので、モデルOの姿のヴァンは思いっきりゼロを彷彿とさせますよね…。
ヴァンはプレリーの部屋で休憩も兼ねてエール達からのお土産である肉まんを温め直して食べていた。
ほとんどがイレギュラーの襲撃で駄目になってしまい、無事な数個を頂いている。
因みにお土産の件で懐が致命的なダメージを受けただけではなく、そのほとんどが駄目にされてしまったジルウェは仕事中に密かにイレギュラーとセルパンに対して怒りを燃やしていたのであった。
金の恨みは恐ろしいのである。
「ヴァン」
「ん?」
声がした方を振り返ると、飲み物を持ってきてくれたらしいプレリーがいた。
「えっと、お疲れ様」
「プレリー…おう、ありがとな。」
飲み物はどうやら林檎ジュースのようで、一口飲むと林檎の酸味と甘さが疲れた体に染み渡る。
何故ミッションもないのにヴァンがプレリーの部屋にいて、その上疲れているのかというと、プレリーの部屋の整理と片付けがまだ終わっていないのである。
話し合いの結果、空き部屋の一つにほとんどのぬいぐるみを保管して、お気に入りのぬいぐるみを二つか三つだけ部屋に置いておくと言うことになったのだが、今まで溜め込んでいた量が量なだけに、かなりの時間が掛かっている。
「ふう、なあ…本当にこの量は異常だぞ?エールも驚いてたしな」
エールもヴァンと一緒に運び屋の仕事が始まる前までは手伝ってくれていたのだが、あまりのぬいぐるみの量に“可愛い”の認識の前に驚愕していた。
「う…」
「ところで回収したアイテムは本当に俺達が持っていて良いのか?」
ミッションではイレギュラーを破壊した際にEクリスタルや回復エネルギーを落とすことがあるのだが、時間経過で無くなってしまう回復エネルギーはともかくEクリスタルはガーディアンでも使うことがある物なので自分達が使って良い物なのだろうか?
「ミッション中に回収したアイテム類はヴァンとエールが使って良いのよ。確かに今はヴァンとエールもガーディアンの一員となっているから本来なら戦利品はみんなで共有するべきなのかもしれないけれど、ガーディアンのメンバーで最も危険なミッションに向かうあなた達に優先的に回すべきだと思ってるわ」
「そうか、分かった。なら、これからもありがたく使わせてもらうさ」
「……ヴァン、フルーブが二つ目のエレメントチップの調整を終えたから、あなたにこれを渡しておくわ」
プレリーが手渡してくれたのは炎属性のエレメントチップであった。
「これを使えば炎属性の攻撃が出来るようになるんだよな?」
「ええ、でもちゃんと使えるかどうかはチェックしておいてね」
「分かってるさ、フルーブを信じてないわけじゃないけど」
ミッション…特に戦闘中に動作不良を起こしてしまうなんてことはヴァンとて遠慮したい。
「それから、ヴァン…あなた達が戦った敵のことなんだけど…」
「何か分かったのか?」
「お姉ちゃんが残してくれた資料によると、ペガソルタ・エクレール、ブレイジン・フリザードは今よりずっと昔の時代に存在したレプリロイドなの」
「それは知ってる。モデルH達が教えてくれたからな…ん?でも、何でガーディアンベースにそんな大昔のデータがあるんだ?ライブメタルの研究のためか?」
ヴァンの問いにプレリーは首を横に振る。
「今からずっとずっと昔…人間と機械が戦争していた時代があるのは知ってる?」
「ああ、正直モデルH達に聞くまではただの昔話だと思ってたけどな」
「どうしてガーディアンベースに彼らのデータがあるのかと言うと、当時存在した組織が前身だからなの…私もお姉ちゃんも当時、その組織にいた…」
それを聞いたヴァンの目が見開かれる。
プレリーの言葉が真実ならば、プレリーは今から数百年前の存在ということになる。
「じゃあ、プレリーも…」
「ええ、私もその時代に作られたレプリロイドよ。でも初代司令官のお姉ちゃんは人間よ。数百年前の戦争で、モデルZのオリジナルと一緒に私達を守ってくれた人間の科学者なの…お姉ちゃんがモデルZのオリジナル……私にとってお兄ちゃんみたいだったレプリロイドを目覚めさせた。目覚めたお兄ちゃんはお姉ちゃんや私達のために戦って…人間と機械の戦争を終わらせてくれた……最後の戦いで、お兄ちゃんはいなくなってしまったけれど…」
あの時は“お兄ちゃん”を知る誰もが悲しんだ。
“お姉ちゃん”は最後まで信じていたが、本当は誰よりも辛くて苦しかったはずなのに。
「そうか…」
「それとね、モデルOのオリジナルについて少しだけ分かったの」
「モデルOのオリジナル?」
正直こんな厄介なライブメタルのオリジナルなのだから、ろくな存在ではないことは何と無く分かる。
「と言っても、ガーディアンベースに僅かだけ残っていたデータと昔、モデルXのオリジナルが教えてくれたことくらいしか分からないんだけど…」
「それでもいいさ、教えてくれ」
モデルOのことを少しでも知りたいヴァンはプレリーに頼む。
「私が作られるよりもずっとずっと昔にあった戦争の出来事の話なんだけど、モデルOのオリジナルらしき破壊神と恐れられたレプリロイドによって、世界は滅びかけ…人間とレプリロイドの大半の命が失われたの…そして、お兄ちゃんとモデルXのオリジナルが一緒に戦って鎮めて宇宙に飛ばした…そして私が作られた時代でそのレプリロイドが再び現れて…お兄ちゃんやライブメタルのオリジナル達によってたくさんの犠牲を出しつつも倒された…私がモデルOのオリジナルのことで知っているのはこれくらい…後はお兄ちゃんの本来のボディを使っていて…今のヴァンのような姿ということくらいよ」
「そう、か…」
プレリーの話からして、自分に取り憑いたライブメタルは自分の想像以上に恐ろしい存在なことくらいしか分からない。
「ごめんなさい、役に立てなくて…私、当時は幼いこともあって戦いから遠ざけられていたの…私もお姉ちゃんやお兄ちゃんに甘えてばかりだった…私にも、何かお姉ちゃん達のために何か出来たかもしれないのに」
二人がいなくなってから、プレリーはいつも後悔していた。
自分にイレギュラーと戦う力や何かを作り出すような技術があるわけではないが、出来ないなりに何か二人の力になれたのではないかと。
「なあ、プレリー」
「……?」
後悔で俯いていた顔を上げると、ヴァンが優しく微笑んでいた。
「俺がいた運び屋に、俺やエールを含めて先輩が引き取った奴がたくさんいるのは知ってるだろ?」
「ええ、ジルウェさんから聞いているわ」
「その中には当然、俺達よりも年下の奴らもいるんだ。まあ、俺やエールにとっては弟や妹みたいな感じだな。あいつらも引き取られたばっかりの時は塞ぎ込んでた。そんなあいつらを知ってるから、俺達のことを本当の兄さん姉さんのように懐いて笑ってくれるのが嬉しいんだ…あいつらが元気に笑ってくれるなら嬉しくて安心する…多分、プレリーのお姉さんとモデルZのオリジナルのお兄さんも俺達と同じだと思うぞ?」
「お姉ちゃんとお兄ちゃんがヴァン達と同じ?」
「きっとプレリーのお兄さんもお姉さんも、小さかったプレリーが戦いのことで傷付いて悩んでる姿を見るくらいなら、元気でいて笑って自分の傍にいてくれる方がずっと嬉しいに決まってる」
自分はプレリーの“お兄ちゃん”と“お姉ちゃん”のことは知らないが、二人が優しい人物なことくらいは分かる。
プレリーが慕い、モデルX達を作った人とモデルZのオリジナルになったレプリロイドならばきっと優しかったことくらいは理解出来る。
「そう…かしら…」
「ああ、プレリーはお兄さんとお姉さんの力になれていたと思う。大事な人が傍にいてくれるのって結構ありがたいんだぞ?こんな体になったから余計にそう思う」
自分の胸を擦るヴァン。
もう自分はこのライブメタルが離れない限りは以前の生活は出来ない。
だからこそ、大事な人が傍にいてくれることのありがたさを理解しているのだ。
「破壊神だとか言われたり、とんでもないことをやらかした奴がオリジナルとかとんでもないライブメタルだけど、力はあるんだ…この力を使って、絶対にセルパンを倒す。母さんや運び屋のみんな…そしてプレリー達のためにもさ」
「ヴァン……ありがとう…」
瞳を潤ませたプレリーが笑顔を浮かべながら礼を言う。
その笑顔は今まで司令官としてのプレリーが浮かべていたものと違ってどこか幼さを感じさせる笑顔だった。
後書き
辛い時や寂しい時に傍にいてくれる存在って本当にありがたいですよね
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