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提督はBarにいる。

作者:ごません
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艦娘とスイーツと提督と・49

      ~リットリオ:ティラミス~

「どうだ?美味いか」

「えぇ、こんな本格的なティラミス久しぶりに食べました」

「そうかそうか、いや~やっぱ本場の奴にその国のお菓子食わせるってなると緊張してな」

「そうですか?提督程の腕前があれば、緊張する必要は無いと思うんですが」

「それでも、だよ。特にイタリア連中は戦艦から駆逐艦・潜水艦に至るまで皆料理が上手いからな」

 今回のスイーツチケットを持ってきたのはリットリオ……今は改装して戦艦イタリアか。リクエストはイタリアンのデザートの中でも抜群の知名度を誇るティラミスだった。

「生地の土台になっているフィンガービスケット……ビスコッティ・サヴォイアルディまで手作りするとは思いませんでした」

「俺は凝り性でね。どうせ作るなら本格的にと思ってな」

 日本のティラミスの土台はカカオパウダーやコーヒーパウダーを練り込んだスポンジの所が多いが、本家本元のティラミスは作り方が違う。

 まず、ケーキ型にフィンガービスケット(指の様な形のビスケット)にエスプレッソを染み込ませて土台として敷き詰める。そこに卵黄と砂糖、マルサラワインを加えて温めながら混ぜ合わせて作るカスタードとマスカルポーネチーズを合わせたクリームを敷く。この工程を2~3回繰り返して層を作ったら冷やし固め、仕上げにココアパウダーやコーヒーパウダーを上から振り掛ければ完成。俺はマルサラワインの代わりに色んなリキュールを使って味の変化を楽しんでいるがね。




「それにしても、日本でティラミスがこんなに知られてるなんて……知りませんでした」

「あ~、俺がガキの頃に流行ったからな」

 1980年代後半から90年代前半にかけてのバブル景気の頃にイタリアンブームがあって、その時に流行ったらしい。当時はイタリアンじゃなくて『イタ飯』って呼んでたんだっけか?まぁ俺はその頃年齢1桁のガキだったし、住んでたのもバブル景気なんぞ欠片も影響の無い東北の片田舎だったからな。後々知ったんだが。

「当時はイタリアンレストランなんぞ名ばかりで、パスタとティラミスしか出さない店が多かったらしいがな」

「それだとリストランテというよりスパゲッテリアですね」

 リストランテが所謂レストラン、スパゲッテリアがスパゲッティ専門店を表す言葉らしい。





「それにしても……最近妙に海外組の奴等のアプローチがキツい、というか積極的過ぎんだよなぁ。イタリア、お前何か知らん?」

「あ、えぇっと……そのぉ………」

 ん?このはぐらかそうとしてる空気、なにか知ってると見た。

「何かお前知ってるくせぇな……ほれ、サッサとゲロっちまえ!」

 そう言って、脇腹を擽る。生憎とケッコンした奴の身体は下手すると本人よりも弱い部分を知ってるからな、俺は。

「やんっ!ちょ、ちょっと、提督……っ!」

 ちなみにウチのイタリアは、脇腹と耳の後ろが弱い。なので脇腹をこちょこちょと刺激しつつ耳の後ろに息をふーっと吹きかける。

「~~~~~~~~っ!」

 イタリアがその豊満なバストを揺らしながら、顔を真っ赤にしてビクンビクンしている。なんというか、物凄く……エロい。当然スケベな俺は楽しくなってきて、更に攻撃を続行。結局20分近く、イタリアの身体を弄くり回していた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ。もう、提督ったら容赦が無さすぎますよ?」

「すまんな、予想以上にお前の反応が良かったもんで。つい止め時がな」

 顔を真っ赤にして頬を膨らませたイタリアに、めっと怒られた。まぁ可愛いから良しとするか。

「それで?最近海外組の奴等の積極的アプローチの原因はなんだ?」

「あ、やっぱり聞くんですか……」

「そりゃな。さっきの悪戯だってお前の口を割らせる為の攻撃だし」

「はぁ……わかりました。実はその、母国の方から『提督を篭落せよ』と連絡が入りまして」

「……ほう?」

 ウチにいる海外製の艦娘の大半は、ウチに出向扱いになっている為、定期的に母国への報告を兼ねて連絡を取らせている。その際に母国からの要請等を受け取って、俺に打診をしてくる事も何度かあった。

「恐らくですが、私達以外の国の娘達も皆……」

「あ~、原因は何となく解るから」

 まず間違いなく、アメリカとの一件絡みだろうな。俺が大国相手でも怯む事無く、寧ろ逆に叩き潰す位の事は平気でやると認知されてしまったからな。有能ではあるがいつ牙を剥くか解らない危険人物……とでも思われたかな?こりゃ。

「要するに、アレだろ?俺と仲良くしといて万が一の時にはお目溢しを……的な奴だろ?」

「はい、恐らくは……ですけど」

「かぁ~っ、バカだねぇ。俺ぁ自分の囲い込んだオンナなら護るがそれ以外なんぞ知ったこっちゃねぇぞ」

 ぶっちゃけた話、俺は我が儘で傲慢だ。自分のオンナは大事だから護るし愛するが、そいつの知り合いだから守ってくれなんて言われてもお断りだ。寧ろ、そんな奴を助けて俺にメリットがあるのか?と問い詰めてやりたい。人助けだって慈善事業じゃねぇんだ。無償で助けてくれるなんざ、そんなのは漫画やアニメのヒーローだけだっての。多大な寄付をするとか、そういう連中の大半は金で社会的信用や名声を買っていると思えばそう変な話じゃねぇ。まぁ、中には善意100%でやっている奴も居るかもしれんが。




「そもそもの話、俺はお前達に強制した事は無いんだがなぁ」

「そこは理解していますよ?私も含めて、ケッコンしている娘達は全員、提督の事をちゃんと愛してますから」

「こりゃまた、照れもせずにサラッと言うねぇ……」

 この辺がやっぱり海外組の奴等の特徴でもあるよな。照れもせずにサラッとこういう愛情をストレートに伝えてくる。がっついている様に見えるウチの国産艦娘組じゃあ、こうはいかねぇ。外国かぶれっぽいキャラをしてるウチのカミさんなんぞ、あのキャラで押してくるから言えてる様な物で、面と向かってだと照れてしまって黙り込んじまうからな。

「わ、私もはずかしいですよ?でも……これを食べてるお陰かも知れませんね」

 そう言ってイタリアはティラミスを口に運んだ。ティラミスを日本語に直訳すると『私を持ち上げて』になるんだが、転じて『(私の気分を)ハイにして』とか『私を元気付けて』なんて意味らしい。確かにティラミスに使われてるコーヒーとか酒には多少の興奮作用とかもあるからな、お陰で気分が高揚して恥ずかしい台詞でも言えたと言いたいんだろう。

「それもあるかもな。だが、それだけじゃあねぇだろ?」

「そうですね……やっぱり提督への愛が溢れ出すから、でしょうか?」

「どれ、その愛とやらを味見させてもらうかな?」

「ふふっ……良いですよ?はい、どうぞ♪」

 イタリアの愛とやらは、チーズとエスプレッソの香りがした。 
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