雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
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第七話 解放者と神代魔法
注意!!
今回はR15です。15歳未満の読者はすみませんが、退出願います。
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俺は、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。前の拠点とは比べ物にならないぐらい、心地の良いものだ。枕も毛布も、心地良い。ひとまず目を覚ます。
(とりあえず起き‥‥れないや)
俺の両腕には何かが乗っかっており、このままではとてもじゃないが起きることはできない。
とりあえず引っこ抜こうとする‥‥‥がしかし、その時である。
「‥‥ぁん」
「んぅ‥‥‥」
「?!!」
妙に艶めかしい声が両隣からあがった。俺は今までまどろんでいた意識を覚醒させた。そういえば両手は妙に柔らかいところに当たってる気がする‥‥‥。
さらに俺はその柔らかいモノを軽く握ってニギニギ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ゃん‥‥ぁっ‥‥」
「‥‥‥(ピクンッ)」
「うそやろ‥‥‥」
こいつは色々とヤバい。俺の隣には聖とユエが「裸」で寝ていた。さらに俺自身も素っ裸である。
「ちょ‥‥こいつはヤバいて。おーい?二人共起きてくれー」
「ふにゃぁ〜‥‥‥」
「んぅ~……」
愚図るようにイヤイヤをしながら丸くなる聖とユエ。さらに二人の両太ももに腕を挟まれ、色々と危険な位置に手が当たる。片方はツルッツルで、もう片方は‥‥‥。
「ってそうじゃねえ!起きろよおい!」
再度手を引っこ抜こうと試みる。
「‥‥ゃん‥‥ぁっ‥‥」
「……んぅ~……んっ……」
アウトだ。色々とアウトだ!!
「いい加減起きやがれぇ!!」
俺は流石にヤバいので纏雷を使用した。
「「アババババババアバババ」」
ビクビクと痙攣する聖とユエ。俺は強引に引き離し、軽く頬をペチペチ。
「おら起きろ」
「「ん‥‥んぅ〜‥‥コウ?」」
同じような声をあげて目を開ける聖とユエ。その間に俺はひとまず服を着る。幸い近くに服があったので助かった。
「おう、コウさんだ。お前らなあ‥‥」
「「コウ!!」」
ガバッ ギュー
俺のことを視認した直後、抱きついてきた。
「良かった‥‥死んじゃったのかと‥‥」
「心配した‥‥‥」
「お、おう‥‥あの後どうなったんだ?」
「あの後ね‥‥」
聖が説明を始めた。俺がヒュドラと相打ちになり、ぶっ倒れた時に奥にあった扉が開いたという。聖たちは迷わずその扉の奥へ行ったらしい。そこには、豪華な家みたいなものがあったという。ベッドルームを確認した聖とユエは、俺をベッドに寝かせ、失われた左目の再建に勤しんだらしい。
「『願い事』を使ったんだけど、物凄い魔力使ったんだ。ユエにも手伝ってもらったよ。それでも魔力枯渇したけどね」
「ん‥‥大変だった」
そう言われて、俺は初めて左目がついてることに気がついた。
「そうか‥‥二人共ありがとう。じゃあ一緒に寝てたのは魔力枯渇で倒れたからか」
「そうだよ(襲ったけど)」
「ん‥‥‥(ごちそうさま)」
「そうか‥‥とりあえず服を着ろよ」
「はーい」
「んー‥‥」
二人が服を着る。俺はその間に、ハジメたちを探した。
「お、いたいた」
「おう、目が覚めたか。左目もあるな」
と、ハジメ。
「お前なあ‥‥ありゃただの特攻だぞ」
と、拓人。
「お前技能に神風特攻追加したら?」
辛辣な蜂起。
「お、おう‥‥まあ、いつも通りだな」
ガチャリ
聖とユエも来た。
「お、似合ってるじゃん」
と、ハジメ。
「ん?これってハジメが作った服?」
「基礎的なとこはな。細かいところは全部聖とユエのオリジナルだ」
「ああ、なるほどな。確かに二人共手先が器用だから‥‥」
俺は小学生の時の記憶を思い起こす。聖は昔から裁縫が得意で、よく手提げ袋や解れた服直しをしてもらってた。今ではさらに腕が上がっている。
現在の二人の見た目は。聖は白のポロシャツにベージュのスカートだ。スカートの丈は膝の真ん中辺りなのは優等生らしい。上から薄いピンク色のカーディガンを羽織っている。足元はショートブーツにニーソである。
ユエは前面にフリルのあしらわれた純白のドレスシャツに、これまたフリル付きの黒色ミニスカート、その上から純白に青のラインが入ったロングコートを羽織っている。足元は同じショートブーツにニーソだ。
「なんつーか、人形を見てるみたいだ」
「「「確かに」」」
俺の呟きに同意する三人。それぐらいに整った服を着た二人は綺麗だったのだ。
「そういや、ここを探索してみたけど入れない部屋が結構あったな」
「三階に魔法陣があったぞ?」
どうやらこの家は三階建らしい。三階にはデカイ魔法陣があったとか。
「とりあえずそこへ連れてってくれ」
そう言って案内してもらう。
三階には聞いた通り、デカイ魔法陣があった。その奥には椅子があり、骸骨が座っている。骸骨は黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。
「怪しいな‥‥でもこれを調べた方が良さそうだ」
「俺の錬成でも開かない扉しかなかったからな。ここが鍵だろ」
何が起きてもいいように、それぞれが武器を構え、俺たちは魔法陣の中心まで歩いた。
中心に立った瞬間。
カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。
まぶしさに目を閉じる。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。
やがて光が収まる。目を開けた俺の目の前に、人影が一つ。
俺は注視する。ソレは、男だった。黒衣を着ている。よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」
「なに‥‥‥?」
「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
そうして始まったオスカーの話は、「反逆者」という名には似つかない内容だった。
話をとても簡単にまとめると、この世界の神々は実は狂っており、下界にいる人々を都合の良いように操り、戦争を遊戯のつもりでけしかけるド畜生らしい。それに反抗したのが、反逆者‥‥‥ではなく「解放者」だ。主に神代魔法を所持した七人を中心とする反抗勢力だったらしい。
‥‥が、神にはことごとく企みを見破られ、結局敗走。中心の七人だけが生き残り、それぞれ大迷宮を作ったという。
長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。それと同時に、頭の中に何かが入り込んできた。おそらく、オスカーの言ってた力のことだろう。
やがて魔法陣の光が収まる。魔法習得も終わったらしい。
「やれやれ‥‥これで新しく目的ができたかな?」
「そうだなあ。あんなクソ野郎さっさとぶち殺さね?」
「その前に全部の迷宮をクリアしたほうが良さそうだがなあ‥‥」
「そしたら当分は迷宮攻略だな。クラスメイトは‥‥どうでもいいか」
当分の予定が決まったので、俺はオスカーであろう骸骨に静かな声で話しかける。
「‥‥事情はすべて把握した。俺たちが、貴方たちの意志を引き継ぐ。そこで、貴方の持ち物をいくつか使いたいのだが‥‥」
(ああ、構わないよ)
「そうか、ありが‥‥‥ってはあ?!」
先程まで聞いていた声が聴こえた。俺は辺りを探す。見れば聖にも聴こえたらしい。
そして‥‥見つけた。
「い、いた!?」
黒ローブの男を見つけた。透けてはいるが‥‥。
「幽霊か‥‥うし」
(ん?何をするつもりかな?)
俺は巻き戻しを使おうと思った。聖を元に戻すために使ってからというもの、必要な魔力が減ったので使い勝手が良くなったのだ。巻き戻せる時間は四年だったと思うが‥‥。一応確認してみる。死にかけたから上がってるかもだし。
ステータスはというと‥‥。
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緋鷹幸 15歳 男 レベル:??
天職:時の番人
筋力:6000
体力:8500
耐性:5550
敏捷:6000→アクセルフォーム3000000
魔力:5640
魔耐:4250
技能:時止[∞][+瞬間停止]・巻き戻し[∞][+未来具現化∞]・霊力変換・全属性適正・暴走[+覚醒]・魔力操作・魔力自動回復・護身術・徒手空拳適正・マイナスG耐性・空間制圧能力・身体能力強化・射撃・威圧・言語理解・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・金剛・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・念話・復活・生成魔法
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「‥‥‥うひゃあ」
凄いことになっていた。止められる時間も巻き戻せる時間も未来具現化も∞になってた。その分魔力が必要だとは思うが‥‥。
「それにしても‥‥復活?」
俺は新技能の復活を調べる。
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・復活‥‥一定以上の魔力を使った場合か死亡した場合に発動。魔力を全回復しステータスが上昇、生命も復活する。
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「‥‥‥チートだなうん」
これでもかというぐらいチートだった。実質不死身だということだ。とりあえず巻き戻しを行使する。
すると‥‥‥。
「「「「「ファッ!?」」」」」
オスカーが復活した。黒ローブを羽織っている。
「え、えっと‥‥僕は確かに死んだはずだけど‥‥‥」
「生き返ったんだよ。とりあえず協力頼むわ」
「け、結構唐突‥‥。ミレディみたいだな」
「ミレディ‥‥?」
「ミレディ・ライセン。解放者のリーダーさ」
「リーダーか‥‥まだ生きてるんかな」
「どうだろう‥‥‥大迷宮に行かないと分からないかな。でもここから一番近い大迷宮は樹海の大迷宮だね」
「そうか‥‥‥よし、それじゃあ樹海の大迷宮をこれからは目指そう。だがその前に、少し実戦トレをしてからだな。オスカーの感覚を戻すためにも」
「そうだね‥‥‥そうしようか」
と、いうわけで俺たちはオスカーのリハビリ兼トレーニングを開始するのだった‥‥‥。
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オマケ
「ふぅ〜‥‥‥ほんわかぁ‥‥」
俺はオスカーの住処にある風呂にのんびりと入っていた。本格的な風呂は久しぶりなので、とても気持ちが良い。
例にもれず、日本人の俺は風呂が大好きなのだ。
ぽけ〜‥‥と天井を見つめる。その時だった。
ヒタヒタと足音が聞こえ始めたのだ。気配感知で確認したところ、一人のようだ。
タプンと音を立てて湯船に入ってきたのは‥‥‥。
「‥‥聖、お前なあ」
聖さんである。一応一人で入ると伝えたのだが‥‥。
「いいじゃん。久しぶりに二人で入ろ?」
‥‥俺たちは幼少期からの知り合いだ。小さい頃からよく一緒に風呂に入っていた。多分、聖が死ぬまで続いてた‥‥。
「まあ‥‥‥いいか。ユエは?」
「後で甘えるって。千秋さんの立場を頑張って奪おうとしてるよ?」
「‥‥それはない」
「強固な意志だねぇ。カッコいいよ」
「一応聖の位置も変わらんがな」
「あ、『特別』の位置?」
「おう。彼女ではないけど‥‥‥失ったら俺が暴走する。まあストッパーなのかな」
「‥‥あの時は凄かったもんね」
俺たち二人は、聖が死んだときのことを思い返した。
『もしかしたら生きてるかも‥‥‥』
受け止められなくて‥‥‥‥
『ウワアアアアアアアアアアアアア!!」
壊れて‥‥‥
『復讐してやる‥‥』
憎しみを持って‥‥‥
『あと、一人‥‥‥‥』
また壊れて‥‥‥
「ま、色々あったよなあ‥‥」
しみじみそう思う。
「もう、離れないからね‥‥‥」
聖が、俺の左肩に頭を乗っけてきた。どかす理由もないので、右手で髪を撫でる。
千秋が最愛ならば、聖は一心同体のパートナーと言ったところだ。きっと、お互いに依存し続けて離れられない。そんな存在。
(やれやれ‥‥ホントにハーレムかもな)
俺は思わず苦笑いをしながら、聖の雪のような白髪を撫でるのだった‥‥‥。
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