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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ

作者:かびちゃ
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第六話 ラスト・ガーディアン


俺は早速試すべく、近くにいた魔物の大群相手に実験を開始する。

「えっと‥‥赤だよな。ポチッとな」

『START UP』

腕時計から声が響く。俺は動き出した。魔物は大体100だ。それを殲滅しようと思った。




‥‥五秒前までは。


「速すぎだろ‥‥もう全滅か」

『‥‥3‥‥2‥‥1‥‥TIME OUT』

「そういえば黒いボタンがついてるが‥‥これは?」

ポチッ

『REFORMAITION』

装備が元に戻った。俺はこのモードを起動させてから約五秒で敵を全滅させたのだ。思った以上に速く動け、攻撃力も上昇している。防御力が下がると聞いてたが、ぶっちゃけ攻撃が当たらないので下がっても意味はなさそうである。

「思ってた倍強力だな‥‥‥アクセルフォー厶と呼ぶことにするとして‥‥」

俺はひとまず、ハジメに結果報告するために拠点へ戻るのだった‥‥‥。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

‥‥その後俺たちは、トントン拍子に階層を下げていった。流石に五人もチートがいれば苦戦はしない。新しく手に入ったアクセルフォームのおかげもあり、一階層一時間のペースで制覇しているのである。

そしてとうとう、最後の階層にやってきた。その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。奥には、家に繋がる扉みたいなのがある。

「これは‥‥」

「反逆者の住処‥‥‥?」

ユエが呟く。

「反逆者?」

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

「ふーん‥‥まあ、あの扉の向こう側に何かあるはずだよな‥‥」

蜂起が呟く。やはり何か見返りが欲しいのかもしれない。

「それもこれもこの階層のボスを倒してからだな。まだ何も出てくる気配はないが、おそらく最後の柱を越えたら出てくるんだろう」

その言葉に全員が気持ちを引き締める。

ちなみに俺の現在のステータスを見るとこんな感じだ。

===============================
緋鷹幸 15歳 男 レベル:76

天職:時の番人

筋力:5200

体力:6000

耐性:2450

敏捷:4500→アクセルフォーム1000000

魔力:2140

魔耐:3000

技能:時止[10000秒][+瞬間停止]・巻き戻し[4年][+未来具現化4年]・霊力変換・全属性適正・暴走[+覚醒]・魔力操作・魔力自動回復・護身術・徒手空拳適正・マイナスG耐性・空間制圧能力・身体能力強化・射撃・威圧・言語理解・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・金剛・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・念話

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アクセルフォームが完成したおかげで殲滅力も上がり、レベル上げも更に捗るようになった。今は迷宮だからそこまで大きくは動けないが、広いところなら無敵だと思われる。能力値そのものもめちゃくちゃに上昇している。

「まあ‥‥負ける気がしねえからいいが、次でおそらく最後だ。油断はなしだぞ」

そう言って俺は最後の柱を越えた。

すると‥‥


「ッ‥‥‥魔法陣か」

そう、扉と俺たちの間に巨大な魔法陣が展開を始めたのだ。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

俺は変身し、ツェリスカとハジメに新しく作ってもらったロケットランチャーを構える。ロケットランチャーの装弾数は五発。参考にしたのは榴弾らしいが、威力も炸薬量も桁違いだ。

ハジメはドンナーとこれまた新しく制作したらしいシュラーゲンという対物ライフルを取り出した。装弾数は一発と少なく、持ち運びが大変だが、理屈上の威力は絶大だ。何せ、ドンナーで、最大出力なら通常の対物ライフルの十倍近い破壊力を持っているらしい。普通の人間なら撃った瞬間、撃ち手の方が半身を粉砕されるだろう反動を持つ化け物銃なのである。

‥‥と、ハジメに自慢気に説明された。

拓人は指揮棒を構え、ハジメが制作した戦車隊の指揮を取る。大きさは子供の玩具レベルだが、砲塔の威力はドンナーの1/2。理論上は普通の対物ライフルの五倍の威力を出せるらしい。しかも戦車は十機。ぶっちゃけ対物ライフルなんか目でもない。しかも装甲も硬いので‥‥‥もういいや。

蜂起は如意棒を背中に担ぎ、新しく作ってもらったトンファーを構える。特に細工はしてないらしい。強いて言うなら頑丈、というところだ。しかし、彼は中国拳法を極めた者。その威力は鋼鉄をぶち抜くレベルである。
‥‥最近記憶操作を使ってないのは秘密である。

聖とユエは、内包する魔力を高めつつある。いつでも発動できる状態だ。

全員が戦闘準備を完了したのを見たかのように、魔法陣がより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。眩しいので顔を覆う。

光が収まった時、そこに現れたのは……


体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。


「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が俺たちを射抜く。

‥‥‥まあ、すぐに終わらせるつもりだが。


「撃て!」

ドガンドガンドガンドガンドガンドガンドガンドガンドガンドガン!!!

拓人が戦車砲を斉射した。それに合わせて俺とハジメも引き金を引く。

ドガアン!!

ドパンッ!!

紅、蒼、黄、緑、黒、白の頭のうち、黄を残して消し飛んだ。黄色の頭は盾役らしく、耐久力がずば抜けて高い。

「クルルルッ!」

残った黄色頭が突貫する。も、蜂起が受け止めた。

「セイヤ!」

ガンッ!

トンファーを振るう。黄色頭が仰け反った。

「“煉獄”」

「〝緋槍〟」

地獄の炎と物凄い量の槍が黄色頭に集中した。

「記憶操作‥‥消去!」

蜂起が何かを消去した。すると‥‥

「クルル?」

黄色頭が無防備になった。どうやら防御することを忘れさせたらしい。

「発射!」

ドシュルルルルルルル‥‥‥

俺はミサイルランチャーを発射した。未だ攻撃を受けても死なない黄色頭に、トドメの一撃だ。

ドガァァァァァァァァン‥‥‥

跡形も無く消し飛んだ。

「まだ来るぞ‥‥油断するな!」

俺はまだ消えない気配を警戒しながら叫ぶ。予想通り新しい頭が生えてきた。

「銀色と‥‥金色か」

そう、新しく生えてきたのは、銀色と金色の頭だ。

「ハジメ、シュラーゲンを」

「いつでもいいぞ」

ハジメが正眼にシュラーゲンを構える。と、同時に二つの頭が魔力を最大限貯め始めた。

「こいつは‥‥!聖!ユエ!準備を!」

そう叫んで自分も魔法を準備する。拓人と蜂起も準備完了した。


一瞬の静寂‥‥‥。


ゴォォォォォォォォォォォォォォ‥‥‥

二つの頭が極光を放った!

「ッ!発射!!」

ハジメが引き金を引いた。

ドガァァァァァァァァン‥‥‥‥

「“乱れ五月雨”!」

「“運命”!」

「“閃光の嵐”!」

「〝蒼天〟!」

「“双爆”!」

チート級の魔法が発射された。中央でぶつかり合う二つの極光。

「天使の加護!」

聖がバフをかけた。それと同時に魔法が少しずつ極光を押し戻し始める。


そのまま‥‥




そのまま行け!


俺たちが生み出した極光はやがて、ヒュドラの極光を押し返した。

煙に辺りが包まれる‥‥

「!?なんだと‥‥‥」

俺は気配感知で有り得ないモノを確認した。更に‥‥‥


ドォォォォォォォォォォォォ‥‥‥!

ノータイムでヒュドラから極光が飛んできた。咄嗟に俺は後ろにいた四人を魔法で吹き飛ばした‥‥‥が、ハジメのことを吹き飛ばすことはできなかった。

「ッ!?」

ハジメが咄嗟にシュラーゲンでガードする。

「死なせるか!時止!!」

俺は時を止めてハジメを突き飛ばした。

「さて‥‥こいつを吸収できるかな?」

俺はタイフーンを回した。そして‥‥

「来い‥‥解除!!」

ゴォォォォォォォォォォォォォ‥‥‥


「ッ!?コウ!!」

「おい馬鹿!逃げろ!」

「駄目だありゃ‥‥逃げる気ゼロ」

「‥‥!?」

「コウ!」

キュイン!

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥‥

極光が俺を包み込んだ。


煙が再び巻き起こる。



十秒‥‥



三十秒‥‥



一分‥‥‥‥


俺は立ちっぱなしだ。仮面は左目部分が壊れ、タイフーンは回転を止めた。左目は蒸発し、顔のあちこちから血が出ている。幸いなことに首から下には被害がない。


「‥‥へへっ‥‥無茶、しすぎたな‥‥だが‥‥‥‥」

「コウ‥‥ダメ‥止めて‥‥!」

聖が悲痛な声で叫ぶ。俺は一度だけ聖のことを見る。そして‥‥‥

「まあ‥‥勝手に発動するのは分かってたぜ?‥‥派生技能、『覚醒』」


その言葉と同時に、俺が神々しい蒼色のオーラに包まれた。


さらに、吸収した極光が少し溢れ出し、蒼色のオーラに上書きされて白いオーラも発生する。

「幸いなことに、仮面ならいつの間にか付いていた自動修復機能があるから、勝手に治る‥‥便利だな」


一人呟く。そして、片目だけでヒュドラを睨みつけた。おそらく、銀は適当でもなんとかなるが、金は恐ろしく硬いはずだ。だったら‥‥‥。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

宙に浮かび上がる。そして、魔力を腕時計‥‥アクセルウォッチに流した。


ガシャン‥‥カチャッカチャッ‥‥


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥殺す」


ポチッ


『START UP』


そして、空力を使い動き出した。一瞬でヒュドラとの距離を詰める‥‥‥。

ドガアン!ドガンドガンドガry


物凄い勢いで金色の頭と銀色の頭を殴る蹴る。俺は一度地面に降り、銀色の頭の根本を‥‥‥


ズバッ‥‥

目にも止まらぬチョップで刈り取ってしまった。あとは‥‥‥金のみ。


「‥‥‥‥‥‥‥‥」

ヒュンッ

俺は跳び上がった。反転宙返りをして壁を蹴る。


‥‥‥残り、五秒。


壁を蹴って金頭を蹴り飛ばす。更に金頭を踏み、再度跳び上がる。空中で高速スピンを加えて行く。


‥‥‥残り、四秒。


高さが頂点に達した。俺は一度スピンを止め、極光を開放する。そして、極光にあえて飛び込み流れに乗って蹴りを試みた。


「あ、あの馬鹿‥‥!時間切れになったら爆発するのに‥‥!」

ハジメが焦った声を出す。アクセルフォームは魔力で強制的に速さを引き出しているに等しい状態だ。アクセルウォッチに蓄えられた膨大な魔力を俺の魔力と合成することで起動する。その状態を10秒以上行使すると、魔力が暴発して爆発するのだ。


『3』


ヒュドラに近づく‥‥。


『2』


「止めろ!」


「死ぬ気か?!」


「馬鹿野郎!」


ヒュドラに到達まで、あと少し‥‥‥。


『1』


「コウ‥‥!?」


「コウ、止めてえ!!!」


ドガア!!!


『TIME OUT‥‥‥‥‥ERROR』


カッ‥‥‥‥


光が爆ぜた。視界が白く、白く染まる。俺を中心として爆発が広がった。その余波で吹き飛ばされる。


ドサッ‥‥


地面に叩きつけられた。五人が駆け寄ってくる。


俺は力を振り絞って気配感知を使い、ヒュドラが今度こそ全滅したのを確認した。


(ははは‥‥‥ナンセンス‥‥)


俺は片目しか見えないので、視界が狭い。
‥‥いや、どんどん狭くなっている。流石に無茶が過ぎたようだ。俺は意識を保つことを手放した。自然に任せる。


ブツッ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


そして間もなく、俺の意識はどこかに飛んで行くのだった‥‥‥。 
 

 
後書き
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