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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ

作者:かびちゃ
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第八話 脱出とウサミミ

二ヶ月後‥‥‥。

「ひええ‥‥‥凄い錬成だ」

俺はオスカーの錬成を見ていた。この二ヶ月間で感覚を取り戻したオスカーは、ビックリ発明をたくさんしてくれた。

例えば、バイクや車だ。彼は魔力で動く乗り物と霊力で動くものを作ってくれた。ちなみに俺の要望で急降下戦闘爆撃機も作ってくれた。

その名も、『Ju-00』。名前はかの有名な戦車爆撃王ルーデルの愛機『Ju-87』と、日本の超有名戦闘機『零戦』の0から取った。特徴的な逆ガル翼。一番分かりやすく言えば、カモメの翼をひっくり返したものだ。元が急降下爆撃機なので爆装はもちろん、機銃‥‥‥というか機関砲も充実している。武装は30mm機関砲四門に、ガンポッド‥‥まあ取り外し可能な機関砲だ。20mmガンポッド二つ。7.7mm旋回機銃が側面に二つと後部に一つ。あとは爆弾かロケットミサイルだ。

爆弾はハジメお手製のものだ。だいたい100kg爆弾十個か、250kg爆弾四つ、それか500kg爆弾二つか800kg爆弾一つだ。もしくはロケット10発である。このロケットは、以前ハジメが作ったロケットランチャーこものだったりする。

ちなみに急降下するからと防弾と急降下耐性が凄まじく良い。旋回性能?鬼だ。最高速度は750km/hだ。オスカー曰く、とりあえず速くしたらこうなったとか。また、二人乗りなので移動にもそこそこ便利だ。なお、これだけの高性能ながらレシプロ機である。この機体をオスカーは二機作ってくれた。

なお、余った三人はエアライドマシンという宙に浮くダッシュボードみたいなものに乗るらしい。こちらは一人乗りで、それぞれに特徴があるらしい。馬力が強くよく昇る「ジェット」。旋回能力の良い「ウイング」。速度の良い「ターボ」があるらしい。武装は前面についている13.2mm機銃四丁と100kg爆弾二つだ。ターボに限り20mm機関砲四門らしいが‥‥。

俺は超がつくほどのミリオタだ。それにハジメも男の子。超重武装の戦闘機たちに発狂したのは言うまでもない。

その後、聖とユエに落ち着けられたのは内緒である。

俺たちも以前と比べ物にならないぐらい強くなった。例えば蜂起。彼はマジックを使った戦闘術を極めた。武器をどこからともなく取り出すのは序の口、敵の立ち位置すらもいつの間にか変えてたりする。敵からしたらいつの間にか目の前にナイフがたくさんある、みたいな状況が常だとか。

ハジメもオスカーに作ってもらった義手を手に入れた。この義手はアーティファクトであり、魔力の直接操作で本物の腕と同じように動かすことができる。擬似的な神経機構が備わっており、魔力を通すことで触った感触もきちんと脳に伝わる様に出来ている。また、銀色の光沢を放ち黒い線が幾本も走っており、所々に魔法陣や何らかの文様が刻まれている。多数のギミックが仕込まれており、ドリルに変形したりガトリングガンが現れたり‥‥‥。ロマンあるアーティファクトだ。

他にもハジメは、ドンナーの対となるリボルバー式電磁加速銃:シュラークを開発した。ハジメは両手を使えるようになったので、ドンナー・シュラークの二丁の電磁加速銃によるガン=カタをするようになったのだ。さらに口径三十ミリ、回転式六砲身で毎分一万二千発という化物の電磁加速式機関砲であるメツェライを開発したり、面制圧とハジメの純粋な趣味からロケット&ミサイルランチャーのオルカンも開発した。長方形の砲身を持ち、後方に十二連式回転弾倉が付いており連射可能。ロケット弾にも様々な種類がある。これは以前のロケットランチャーの改良型らしい。

これだけの物を作れたのにも理由がある。オスカーは指輪型アーティファクトを保持しているのだが、指輪に取り付けられている一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるというものだ。要は、勇者の道具袋みたいなものである。空間の大きさは、正確には分からないが相当なものだと推測している。あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだからだ。そして、この指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで物の出し入れが可能だ。半径一メートル以内なら任意の場所に出すことができる。
これをオスカーは六人分追加で作ってくれた。それぞれが勇者袋を持ってることになるので、恐ろしく便利だ。

他の四人も恐ろしいぐらいに強くなった。聖とユエはいい勝負だ。それぞれ得意分野の魔法があるらしく、ユエは攻撃系、聖はサポート系が得意らしい。

最後に現在の俺のステータスだ。

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緋鷹幸 15歳 男 レベル:???

天職:時の番人

筋力:15400

体力:16900

耐性:12260

敏捷:10000→アクセルフォー厶80000000

魔力:13330

魔耐:11000

技能:時止[∞][+瞬間停止]・巻き戻し[∞][+未来具現化∞]・霊力変換・全属性適正・暴走[+覚醒]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠距離操作]・魔力自動回復・護身術・徒手空拳適正・マイナスG耐性・空間制圧能力・身体能力強化・射撃・威圧・言語理解・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・金剛・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒無効化・麻痺耐性・石化耐性・念話・復活・生成魔法・風力変換[魔力][エネルギー]・錬成[+精密錬成]

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俺は錬成ができるようになった。俺はハジメとオスカーが錬成してるのが羨ましく、二人に頼み込んで錬成のやり方を教えてもらったのだ。結果、並の錬成師より出来の良いものが作れるようになり、極限まで集中していたからか、知覚能力を限界まで引き上げる『瞬光』も手に入れた。

また、ハジメを救った神結晶から神水が取れなくなったので、ハジメとオスカーが神結晶の膨大な魔力を内包するという特性を利用して一部を錬成。ネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーに加工した。聖やユエの最上級魔法等は魔力消費が激しく、一発で魔力枯渇に追い込まれる。しかし、電池のように外部に魔力をストックしておけば、最上級魔法でも連発出来るし、魔力枯渇で動けなくなるということもなくなる。欠片でもとんでもない量の魔力を貯蓄可能だ。

俺はこのネックレスや指輪を聖とユエに渡した。すると‥‥。

「「プロポーズ?」」

見事なシンクロ率で聞かれた。

「違うそうじゃない」

(いいぞぉもっとやれえ)

念話で拓人が茶々を入れてきた。覚えとけよ。

「それで魔力枯渇を防げるだろうと思ってな。今度はきっと聖とユエを守ってくれるだろうとも思ったし」

「……やっぱりプロポーズ」

「コウ、照れ隠しかな?」

「ええ‥‥‥」

少しタジタジだ。

「ま、まあ‥‥これからの旅はかなり危険だ。お前たちに死なれたら‥‥‥」

「‥‥プロポーズ」

「だね〜」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

だんまりを決め込む。何を言っても墓穴を掘りそうだ。

「ま、いいや。明日出発でしょ?」

「おう、そうだな」

「なら今日は早く寝ようかな。ユエ、寝よ?」

「ん‥‥‥おやすみなさい」

なんというか、マイペースだ。俺は苦笑しながら二人を見送るのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

「さあて‥‥行きますか」

俺は一言だけ呟く。そして、オスカーに目配せをした。

「よーし‥‥。『転移』」

聖の詠唱(願い事)を合図に、地面に大掛かりな魔法陣が現れる。そして‥‥‥‥。

光が爆ぜる。白く染まる視界。俺は目を閉じる。再び目を開けた時、視界にあるものは‥‥‥。


大渓谷だった。清涼で新鮮な風が吹く。俺はこれほどまで〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。それぐらいに心地良かったのだ。

ここは地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

【ライセン大峡谷】と。

しかし、長い間洞窟にいた俺らにとっては地獄なんかではない。たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。俺はユエを見る。彼女にとっては、三百年間、求めてやまなかった光だ。オスカーも、感慨深い目をしている。

俺もなんとなく、込み上げてくるものがあり、それを声に出した。

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

「空気が旨い!!!」

「土とキスしたい!!!」

「コントするんじゃねえよ‥‥‥。でも、旨いな‥‥」

「久しぶりだからなあ。感慨深い」

「ユエ、嬉しそうだね」

「久しぶりの光‥‥自然の光‥‥‥嬉しい。嬉しくて仕方がない‥‥!」

「うふふ‥‥可愛いね」

俺たちは誰それ構わず抱き合い、クルクルとみんなで踊った。途中躓いてみんなで転んでしまうも、それすら楽しい。しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた‥‥‥。

ようやく全員の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。

「さて‥‥殺りますか。魔法は使えない場所だったはずだから聖とユエは下がってて」

「はーい」

「んっ」

「っしゃあ!行くぜオラァ!記憶消し飛べやこの野郎があ!!」

「ヒャッハーーーー!戦車撃てえ!!!」

「オラオラァ!後退ってんじゃねえぞゴラァ!!」

「あ‥‥俺の出番ないな」

「僕の出番もないよ‥‥凄いなあ」


数分のうちに周りにいた魔物はもれなく肉塊へと化していた。気分がHiなのは恐ろしいものだ。

「うし、それじゃあ探索するか。Ju-00とエアライドマシンっと‥‥」

俺は宝物庫‥‥指輪のことだ。宝物庫からJu-00とエアライドマシンを取り出した。

「とりあえず俺は00に乗るけど‥‥」

「あ、なら私がコウの後ろね」

「ん‥‥次は私」

「もう一機は‥‥」

「あ、それじゃあ僕が。ユエも来てくれ。聞きたいことがあるから」

「ん‥‥分かった」

「そしたら俺らはエアライドマシンな」

「拓人」

「おうよ蜂起」

俺はJu-00に乗り込んだ。後部座席には聖が乗り込む。俺は霊力を流し込んだ。

キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル‥‥‥‥

プロペラが回りだす。そして静かに動き始めた。

「うし‥‥そろそろいいかな」

俺はググーと操縦桿を引く。すると浮かび上がった感覚が身体を包む。

「うわあー‥‥凄いなあ」

後ろで聖が感嘆の声をあげた。俺もこの感覚は好きになりそうだ。俺はスロットルを全開にして速度を出す。速度もある程度出てきたら脚も収納する。そして、片手で操縦桿を握り、もう片方の手で錬成を始めた。俺はここ最近作り始めた物があるので、それの制作をしているのである。

俺はツェリスカしか遠距離攻撃の手段がない。ロケットランチャーは扱いにくいし、ツェリスカだけだとどうも連射性がないので困ることもあるのだ。リロードも面倒だし。
そこで思いついたのがガトリング砲だ。ハジメのような設置型ではなく、持ち運び可能のガトリング砲なら‥‥と思い、長い間錬成に勤しむことにした。今のところ、砲身以外は完成している。全長は予定だが6.40m、銃身だけでも2,299mmはあるつもりだ。口径は30mm、砲身は七つである。重量は300kg近くになる。装弾数は10000発で、こちらはハジメが作ってくれた。射程距離もまあまあ長いので、完成したらトンデモ兵器だ。ちなみに砲身以外のパーツは宝物庫に収納してある。


しばらく錬成しながらJu-00を飛ばしていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

突き出した崖を見つけたので、俺はそこに着陸する。見ればエアライドマシンに乗ったハジメ、拓人、蜂起はすでに着陸したらしい。俺は戦闘機を着陸させた。少し遅れてオスカーたちが乗った戦闘機も着陸する。

全員が揃ったところで、大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした二人の少女だろう。片方は青みがかった
白髪碧眼で、もう片方は黒髪蒼眼だ。どちらもロングヘアである。
全国のケモナーが見たら即一発で鼻血ものかもしれない。よく見れば整った顔をしている。

「うは、黒髪の方めっちゃ好みだわ」

「え?蜂起の好み?なら助けるか?」

「うーん‥‥でも厄介者かもなあ」

呑気に会話をする。助けるか否かはどこかにいった。

「って‥‥そうじゃねえよ。助けるかどうかだよな」

「みんなの意見は?」

「蜂起の彼女作るためにも助けるに一票」

と拓人。

「助けてもいいんじゃない?」

と聖。

「‥‥コウを取らないなら」

ユエ‥‥意味深だ。

「この調子だと助ける以外なさそうだな‥‥‥俺も構わない」

面倒くさそうなハジメ。

「僕もいいよ」

最後にオスカーだ。全員助けるとのことなので、蜂起に任せる。

「マジック使えばいけるんじゃね?」

「せやな。はーいワーンツースリー!!」

サラサラ‥‥

「「え?」」

蜂起の掛け声で突如俺たちの前に二人のウサミミが現れた!

「What's!?」

思わず英語で突っ込む。

「ん?いや、アーティファクトのノートに書いただけだよ」

「それでも可笑しい!てかいつの間に書いたんだよ!!」

突っ込まざるを得ない状況だ。どうやら蜂起は、マジックの腕もこの世界に来てから相当上げたらしい。元々世界的なマジシャンだったのもあるだろうが‥‥‥。

(努力家だもんな)


俺はこっそり心の中で呟くのだった‥‥。 
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