宇宙海賊は世界最強
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10話
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一つ目の巨人を倒したギンとハジメ。
扉を調べるとなにかを嵌める窪みがあった。
「窪みがあるな」
「あるな・・・此奴はもしかして・・・」
「大きさからして、此奴らの魔石だろうな」
二人の推測によって、ハジメは魔物の肉を裂いて、魔石を取り出し、扉の窪みにはめ込む。
魔石をはめ込んだ途端、扉が開いた。
「はてさて・・・」
「此奴らが守っていたものが見物だな」
「宝だったりして・・・」
「そこは海賊なんだな」
ハジメは呆れるように言い返されて、中に入る。
中は暗いが、ハジメは『夜眼』。ギンは『超視覚』で中の様子が見て取れる。
教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
「ちぇ、宝がねぇのかよ」
「何がなんでも宝があると思うなよ」
そんな中、二人は真ん中にある立方体を注視した。何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。
「なんだ、あれ?」
「見聞色の覇気からして、幼気な少女だな」
「とりあえず、扉を開けるか」
ハジメは近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。
だが、固定する前に少女は動き出した。
「・・・だれ?」
「「ッ!?」」
掠れて弱々しいが、確かに、ギンの言う通り、女の子の声がだった。ビクリッとして二人は慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の『生えている何か』がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。
「人・・・なのか?」
「だと思うけどよ・・・」
『生えていた何か』は人だった。
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。
「驚いた・・・どうする、ハジメ?」
「すみません、間違えました」
ギンはハジメに尋ねようとするけど、即決でハジメは来た道を戻り、扉を閉めようとする。
「やっぱりな・・・」
ギンも此にはどうしようか判断が迷う。これは明らかに罠だと思うからだ。
金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠れて呟きのようだったが・・・
ただ、必死さは伝わった。
「ま、待って! ・・・お願い! ・・・助けて・・・」
「いやです」
「即決だな」
ハジメのキッパリとした言い分にギンはアハハハッと苦笑する。
「ど、どうして・・・なんでもする・・・だから・・・」
女の子は必死だ。首から上しか動かないが、それでも必死に顔を上げ懇願する。
だが、ハジメはうっとしそうに
「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし・・・脱出には役立ちそうもない。という訳で・・・」
「全く以て、正論だな。情報を持ってるかどうかもわかんねぇし。ここは見捨てるしかねぇだろう」
ギンも同意見である。
而して、少女も少女で必死である。
もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。
「ちがう! ケホッ・・・私、悪くない! ・・・待って! 私・・・」
知らんとばかりに扉を閉めていき、もうわずかで完全に閉じるという時、ハジメは歯噛みした。もう少し早く閉めていれば聞かずに済んだのにと。
「《《裏切られた》》だけ!」
もう僅かしか開いていない扉。
しかし、女の子の叫びに、閉じられていく扉は止まった。ほんの僅かな光だけが細く暗い部屋に差し込む。
此について、ギンはハアと息を吐く。
(どうやら、心の中でまだ裏切られたことを忘れていないようだな)
ギンは知ってる。援護射撃の際、一つだけ、ギンとハジメに向けられていたことに放った人間もギンは知ってるし。ハジメもなんとなく想像がついてたが、裏切られたというのは彼の心の中に響いてるようだ。
ギンは仕方ないと思い、
「ハジメ・・・助けてやりな」
「良いのか?」
「いいさ。お前の中にも人間の心があるんだからな。それに責任は俺が全部とるよ。それが船長というものだろう?」
「いつから、俺はおめえの部下になったんだ?」
「知らねぇ~な」
「まあ、俺としてはおめえの部下だったら、悪くねぇと思ってる」
此には、流石のギンもカッと笑みを零した。
ハジメは頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。
「裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」
それには、ギンも同じである。
(確かにこんな所に一人でいること自体があり得ない。自分から来たって感じがしないから。第三者によって・・・閉じ込められたというのがあり得るな)
ギンの考えと少女が話す内容が一致した。
「私、先祖返りの吸血鬼・・・すごい力持ってる・・・だから国の皆のために頑張った。でも・・・ある日・・・家臣の皆・・・お前はもう必要ないって・・・おじ様・・・これからは自分が王だって・・・私・・・それでもよかった・・・でも、私、すごい力あるから危険だって・・・殺せないから・・・封印するって・・・それで、ここに・・・」
「吸血鬼って・・・俺んとこのヴァンプと同じかよ」
(まあ、彼奴はついでとして、『悪魔の実』で吸血能力を高めたそうだが・・・)
ギンは自分の仲間のヴァンプの種族を思い出す。
だが、気になるところが多いというのはハジメと同じだった。
「お前、どっかの国の王族だったのか?」
「・・・ん」
「殺せないってなんだ?」
「・・・勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
「・・・そ、そいつは凄まじいな・・・すごい力ってそれか?」
「これもだけど・・・魔力、直接操れる・・・陣もいらない」
それを聞いてたギンは
「すら恐ろしい能力だな・・・しかも、魔力が扱えるのか・・・」
(年齢はおそらく、巨人族並だな)
話を聞いてたギンは少女に関して思ったことは――、
「明らかにあのバカよりもチートじゃねぇか」
彼が言ってるバカというの勇者(笑)のことである。
「お願い・・・助けて・・・」
再び助けを求める少女。
「此ばっかりは助けてやろう。もしかしたら、色々と役に立つかもしれないぞ」
ギンの言葉を聞いてハジメはガリガリと頭を掻き溜息を吐きながら、女の子を捕える立方体に手を置いた。
「あっ」
女の子がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。
ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、いや濃い紅色の魔力が放電するように迸る。
しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるでハジメの魔力に抵抗するように錬成を弾いた。迷宮の上下の岩盤のようだ。だが、全く通じないわけではないらしい。少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っていく。
「結構、頑丈だな」
「ぐっ、確かに抵抗が強い! ・・・だが、今の俺なら!」
ギンはハジメが魔力を高めてるのを視て、推測する。
(おそらく、あの立方体自体を浸透させるのに、相当な魔力量を消費させてる。こんなの白崎たちでも無理だぞ)
推測してる中、ハジメは
「まだまだぁ!」
気合いを入れ直す。
しばらくして、錬成を成し遂げたハジメ。
そして、女の子の周りの立方体がドロッと融解したように流れ落ちていき、少しずつ彼女の枷を解いていく。
それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。
「立ち上がるだけの力もないか」
ハジメは『神水』で回復しようとする手を少女が震える手でハジメの手を掴む。
顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。
「・・・ありがとう」
その一言だけでギンとハジメはフッと笑みを零す。
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後書き
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