宇宙海賊は世界最強
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11話
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ギンサイド
変な部屋いや封印部屋で金髪の少女を助けた後、俺はハジメたちのもとに歩み寄る。
ハジメの方を視る。
大量の脂汗から視るに、どうやら、魔力はすっからかんのようだな。
少女はスッカラカンのハジメの手を握り締め、歩み寄ってきた俺を視て尋ねてきた。
「・・・名前、なに?」
そういや、まだ名前言っていなかったな。
「俺はギン・ライラック・アトランタ。ギンでいい・・・それで、キミにとっての王子様は・・・」
「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は・・・それと、ギン!! 誰が王子様だ!?」
あのなぁ~。俺は頭をかきながら
「女の子にとってみれば、自分を助けてくれた男を白馬の王子様に思えるんだよ」
現に、彼女はハジメの名前は忘れねぇように連呼してるぞ。
しかも、ハジメに向かって、あり得ねぇことを言いやがった。
「・・・名前、つけて」
此奴には俺も驚いたわ。
「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」
違ぇだろう。昔のことを捨てたいんだろうな。
「もう、前の名前はいらない・・・ハジメの付けた名前がいい」
やっぱり、そうか。
「・・・はぁ、そうは言ってもなぁ」
此奴は重大責任だが、此に関してはハジメに任せるとしよう。
そろそろか・・・。
俺は上の方を警戒する。
それは此方に向かってる気配を感じとれたからだ。
その間にハジメは思いついた名前を口にした。
「『ユエ』なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが・・・」
「ユエ? ・・・ユエ・・・ユエ・・・」
「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で『月』を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな・・・どうだ?」
ユエか。いい名前じゃねぇか。
確かに彼女はハジメを照らしてくれる月みたいなものだな。
それに彼女も嬉しそうな顔をしてるな。
「いい表情だ」
「?」
いきなりの俺の言葉にユエは疑問を生じてる。
「やっぱり、女の子は嬉しそうに笑ってる顔が似合う」
此は、地球にいた頃、雫にぬいぐるみをプレゼントしたときと同じ顔だった。
「・・・ッ」
おっ、ユエさんの顔が紅くなってる。
彼女は顔を紅くしながら、
「・・・んっ。今日からユエ。ありがとう」
「おう、取り敢えずだ・・・」
「?」
言いたいことが分かる。
とりあえず、ユエの見た目をなんとかしてほしい・・・。
もちろん、俺はブラコンの妹の裸を視てるせいか見慣れた。
俺からみるとユエは妹としか思えないな。
「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」
「・・・・・・」
毛皮で出来た外套を渡すハジメとユエも今の自分の状況を理解して、顔を真っ赤にして外套で隠す。
「ハジメのエッチ」
「・・・・・・」
俺は何とも思わない。
もう一度、言うぞ。何とも思わない。
全てはブラコンのバカ妹のせいだ。
俺も俺でシスコンかもしれないな。
内心、息を吐露してると、ユエが
「・・・ギンは私を視て、何とも思わないの?」
聞いてくるか・・・それもそうだな。しかも、ハジメまで視ていやがる。
しゃあねぇな。
「俺からしたら、ユエは妹かな」
妹という言葉にユエは――、
「・・・妹・・・」
チーンと四つん這いになる。
「何故、妹だ?」
「俺には兄と妹がいるんだ。餓鬼の頃から妹とは風呂に入ってるからユエの裸を視てもさほど困らん。それに俺の恋愛範囲じゃねぇし」
「な・・・なるほど・・・」
おぉ~、ハジメも響めいてるぜ。まあ、それよりも・・・
「さてと、お二人さん。和むのはその後として・・・邪魔者が来るぞ」
呟いた。
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ギンの呟きで、既に『神水』で回復したハジメはユエを抱えて、ギンと一緒に後方へ跳躍する。
ついさっきまでいた場所に体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。
「まるで、カニとサソリの融合体だな」
「ついさっき、気配を感じとれたということはユエを逃がさないための番人のようだな」
ギンは右手で『秋水』の柄を掴むも刀からの感じからして、彼は理解した。
(『秋水』が俺よりも別の主を求めてる。どうやら、ここまでのようだな・・・仕方ない・・・)
ギンは『秋水』を鞘ごと抜いて、自身の能力で隠しておいといた黒刀へと昇華した名刀『閻魔』を取り出し、腰に納める。
『秋水』は新たな主が見つけるまで預けておこうとギンは考えた。
ギンは右手に鞘ごと『閻魔』を手に構える。
ギンは『超嗅覚』で融合体の情報を探る。
匂いを嗅ぐ要領で情報を仕入れる。
情報を仕入れたギンは少し口角を上げて、
「なるほど・・・」
言葉を漏らしてから、
「ハジメ・・・此奴は俺がやる。お前はユエを守ってろ」
「良いのか、ギン」
「ああ、任せとけ・・・お前に船長・・・いや俺の力の一部を見せてやろう」
ギンは居合の態勢に入る。
ユエはギンの構えから何をするのか分からなかったが、ハジメは視ただけで
「居合の構えだな」
ギンの構えから居合というのが分かったハジメ。
『ベヒモス』の時とは違う構えをしてることに気づくも、その太刀筋は既に鋼鉄を斬れるほどの腕前。
「一刀流・居合――」
ギンは走り出し駆け向け、鞘から漏れ出す刀身が閃く。
「――『死・獅子歌歌』」
刀である『閻魔』を鞘に納めた瞬間、融合体が縦に真っ二つ両断された。
綺麗にスパッと滑らかに斬ったことにハジメはともかく、ユエは
「・・・・・・」
茫然としてた。切れ目から夥しく溢れ出てる血の海。
ハジメは血の海になった床で歩いていく。
もちろん、融合体の亡骸のもとへだ。
ユエはというと――、
「・・・・・・」(☆。☆)
眼をキラキラさせて、ギンを視ていた。
どうやら、先の一撃を視て、尊敬してしまったようだ。
「・・・・・・ギン兄」
いつの間にやら、ギンのことを兄として見始めていたと記載しておこう。
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融合体を倒して、ギンたちは素材やら肉を回収して、拠点に持ち帰る。
素材に関してはギンが持っていってくれてる。
ハジメもギンの筋力はどこから来るのかと不気味に思っていた。
ユエはハジメにおんぶされ、吸血行為をしてる。
何でも疲労状態なため、血を吸うことで栄養を補給してるようだ。
あと、好きな人の血だったら、いくらでも吸いたいようだ。
そして、拠点に戻ってきたギンたちは補充品を補充しながら、話し合ってた。
「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」
「・・・マナー違反」
ユエが非難を込めたジト目でハジメを見る。女性に年齢の話はどの世界でもタブーらしい。
「アホだろう。レディーに言ってはいけない言葉だぞ」
「・・・ギン兄の言う通り・・・」
「あと、何故、俺が兄になった!?」
ギンはユエがギンのことを兄と呼んでしまってることに驚いてる。
ハジメは笑いを堪えてた。
「・・・お兄ちゃんはお兄ちゃん?」
「意味になってない!!」
「良いんじゃねぇか。もうユエはお前のことを兄と定義してるぜ」
ハジメにまで言われてしまっては、状況が不利と理解し、ギンは
「分かったよ。俺を兄と呼んでいいよ」
了承することで、ユエはやったとガッツポーズする。
話を戻して、本で読んだ記憶だと、三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていたはずだ。実際、ユエも長年、物音一つしない暗闇に居たため時間の感覚はほとんどないそうだが、それくらい経っていてもおかしくないと思える程には長い間封印されていたという。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょいということだ。
「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」
「・・・私が特別。『再生』で歳もとらない・・・」
「まるで、人類の最高傑作だこと・・・」
ギンの言葉は言い得て妙に思えた。
さらに、聞けば十二歳の時、魔力の直接操作や『自動再生』の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるらしいが、それでも二百年くらいが限度なのだそうだ。
ちなみに、人間族の平均寿命は七十歳、魔人族は百二十歳、亜人族は種族によるらしい。エルフの中には何百年も生きている者がいるとか。
ユエは先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。
それを聞いて、ギンは
「最強ね・・・いくら辺境いえど最強とは・・・」
ハッと微苦笑だった。
ハジメはどういう意味だと聞き返す。
「前に俺が宇宙から来たと言ったな」
「ああ・・・」
「そこの話に皇帝という話をしたが、皇帝の中には化物なんてめっさいたわ。銃弾も大砲も剣すら効かない化物なんて者もいたな」
「ハッ? 銃弾が効かないって・・・どんな身体をしてるんだよ・・・」
ハジメの呟きにユエもコクッと同意する。
「ある奴のことだけど、其奴は規格外の耐久力と生命力があって、1000も超える拷問、40回に及ぶ死刑宣告されても死ぬことがなかったんだ」
「死刑宣告されて何で死なねぇんだよ」
「首吊り、ギロチン、串刺しすらも失敗する。しかも、趣味が自殺らしい」
「・・・・・・頭大丈夫?」
ユエすらも其奴の頭の中の異常さに動揺する。
「何をされてもほぼ無傷で生還する怪物・・・其奴の名をカイドウ。生きとし生ける者の中で『この世における最強生物』」
「其奴って人間か?」
「人間だよ。だけど、さっき言った通り、規格外の耐久力と生命力を有してるから最強生物と呼ばれてるだけ・・・」
「・・・・・・ギン兄はその怪物について何で知ってるの?」
ユエの素朴な疑問にハジメも同様の視線を向ける。
すると、ギンは
「ああ、ほんの少し前に俺がカイドウを倒したからだ」
「・・・OK。分かった・・・要するにギンは既に人間を止めていたというわけだな」3(-_^;)
「・・・ギン兄・・・凄い」(☆。☆)
ハジメは溜息をつかれ、ユエは尊敬の眼差しをギンに向ける。
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後書き
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