提督はBarにいる。
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冬の鍋パ!・その2
「あがったぞ~」
準備の出来た鍋をカウンターに置くと、各テーブルの手の空いてる連中が我先にと取りに来る。最初は各テーブル1種類ずつ違う鍋にしようと思ったが、確実に取り合いになるからと言われて止める事にした。
「提督よ、何を突っ立っている?」
「あぁん?」
鍋を受け取りに来た武蔵が、俺に声をかけてきた。
「折角の飲み会だぞ?」
「いや、俺はお前らの会のメンバーじゃないしーー」
「何を今更遠慮する事がある?ウチの会は飛び入りは大歓迎だし、何より……」
「何より?」
「ただ単に仲間内で美味い酒と飯を楽しみたいだけだからな!」
「ついにぶっちゃけやがったよこの駄眼鏡」
それも清々しいまでの笑顔で。
「だっ、駄眼鏡とはなんだ!あまりにも酷いじゃないか!」
「駄目人間の思考の眼鏡だから駄眼鏡、ピッタリだろうが」
「美味い物を食べたいと思う事の何処がいけないと言うのだ!?」
「それ自体はなんの問題もねぇよ。食べ歩きや飲み歩きが趣味、なんてのは沢山居るからな」
実際、俺の多様な趣味の1つにも食べ歩きや飲み歩きは含まれる。
「ふむ、それで?」
「それをするために事を大事にする辺りが既にもう……何つーか、思考が残念なんだよ」
「なんだとぅ!?」
「なんだとぅ!?じゃねぇよ。そもそも、複数人で飲むなら毎晩のようにやってるじゃねぇか」
ウチの連中は大概、一人で静かに飲むのを嫌う。なので、毎晩俺の店か鳳翔の店、もしくは間宮の店でどんちゃん騒ぎの宴会が行われている。大人数で飲んで騒ぎたいだけなら、そこに飛び入りで混ざればいいだけだ。
「違う、違うのだ提督よ。ちゃんとした理由があって私はこの会を立ち上げたのだ!」
「ほほぅ、聞かせてもらおうじゃねぇか」
俺が座敷に上がり込んでどかりと座ると、するすると氷の入ったグラスが出てくる。チラリとそちらを見れば、鹿島が焼酎のボトルを持って待機している。中々に気の利く奴だ。注がれたのは八代不知火蔵の『黒胡麻焼酎 黒胡宝』。胡麻焼酎という、その名の通りに胡麻を使った焼酎だ。ぐいっと煽れば鼻から黒胡麻の香ばしい薫りが抜けていく。決して酒精の弱い酒ではないのだが、胡麻の風味でまろやかに感じてスルスルと飲めてしまう。
「なんというかな……艦隊の仲間同士で飲むのも確かに楽しい。だが、それはあくまで『仕事仲間』としての付き合いだ」
「ふむ」
解らなくもない話だ。実際、そういう付き合いだと割り切って他の連中と付き合ってる奴も少ないが居るしな。
「しかし、私はもっとこう……そう、『同窓会』のような付き合いの出来る仲間と場が欲しかったのだ」
「成る程」
仕事仲間と地元の友人では、同じ飲みの席でも気の遣い方が変わってくる。気心の知れた地元の友人との飲み会ならば、殆ど気遣いもせず気楽に飲めるだろう。
「だからな、提督よ。私はーー」
更に言葉を紡ごうとする武蔵のグラスに、ドボドボと焼酎を注いだ。
「もういい、わかった。それならそういう面倒な事は考えずに、とことん楽しめ」
別に俺はこの集まりを否定したい訳ではない。寧ろ、円滑なコミュニケーションを取るには良い方法だと思う。飲みニケーションなんて言葉もあるくらいだしな、ウチの連中の様に呑兵衛の寄り合い所帯ならば最高の効果を発揮するだろう。だからこそ、俺は武蔵がこんな会を立ち上げた理由を聞いてみたかった。恐らくはこの豪快な見た目の癖に、人一倍心配性で他人に気遣いをし過ぎる嫁さん(仮だけど)の本音を。
「さて、そろそろ1つ目の鍋は空だろお前ら!」
〆まで食いきったぞ~!お代わり寄越せ~!という、おおよそ女性の集団からは上がりそうにない声が上がる。
「よ~しよし、待ってろお前ら。速攻でお代わり準備すっからよ!」
《出汁要らずでスピード調理!サバの味噌七味鍋》※分量4人前
・サバの水煮缶:2缶(約200g)
・木綿豆腐:2丁
・春菊:1把
・ニンジン:1本
〈鍋のスープ〉
・味噌:大さじ4
・醤油:大さじ2
・おろし生姜:小さじ2
・砂糖:小さじ4
・ごま油:小さじ2
・七味唐辛子:小さじ1
・水:800cc
ポイントはサバの水煮缶。既に火も通っているし缶の煮汁にはいい出汁が出てるからな。こいつを上手く使えばスピーディに鍋が出来上がるって寸法さ。まずは下拵えから。鍋に水、味噌、醤油、砂糖、おろし生姜、ごま油、七味を入れて混ぜ合わせて溶き延ばし、中火にかける。その間に具材を切っておく。豆腐は一口大に切り、春菊は4cm長さに切り揃えて茎と葉に分ける。ニンジンはピーラーでリボン状に細長く削る。
鍋が煮立ってきたら弱火にし、サバの水煮缶を中の汁ごと加えて3分程煮る。続けてニンジン、春菊の茎、豆腐、春菊の葉の順に加えて全体に火が通ったら完成だ。
※オススメの〆はうどん!具材をほとんど食べ終えたら水と醤油を適量加えて軽く煮立たせたら、ゆでうどん2玉を加えてうどんが温まるまで煮込んで食べよう!
《チーズフォンデュ風!白菜と豚肉のチーズ鍋》※分量4人前
・白菜1/2玉
・豚モモ肉(薄切り):200g
・ベーコン(薄切り):80g
・カマンベールチーズ:1パック(100g)
・塩、胡椒:少々
・粗挽き胡椒:適量
(スープ)
・水:800cc
・固形コンソメ:2個
・塩:小さじ2/3
お次は白菜メインの洋風鍋を。豚肉には塩、胡椒を振って下味を付けて馴染ませておく。白菜は根元の芯の部分を取り除き、鍋の深さに合わせて切り揃えておく。スープの材料を混ぜ合わせて、固形コンソメと塩を溶かしておく。
白菜を鍋の外側から内側に向けて縦に敷き詰めていく。豚肉とベーコンは白菜の間に挟み込んでいく。スープを注いで強火にかける。
スープが沸騰してきたら弱火にして蓋をし、20分程かけて白菜が柔らかくなるまで煮込む。
カマンベールチーズを8等分に切り分けて鍋の中央に置き、そのまま温める。チーズが蕩けてきたら全体に粗挽きの黒胡椒を振れば完成。
「さぁ、お次は『サバの味噌七味鍋』と『豚肉と白菜のチーズ鍋』だ」
先程同様、俺がカウンターに鍋を並べていくと置かれた端から持っていかれる。
「ほらほら、司令も混ざって下さいよぉ~♪」
既にほろ酔い加減の青葉が、グイグイと手を引いてくる。
「わかったわかった、しょうがねぇな……ったくよぉ」
俺も鍋を持ち、座敷へと向かう。青葉が確保していたテーブルには、木曾、天城、朝風が座っていた。
「よう親父、何飲む?」
「だから親父呼びはよせって、木曾ぉ。お前もカッコカリとはいえ俺の嫁なんだぞ?」
「ハハハ、悪い悪い。でもよ、いきなり俺がしおらしくなって『ア・ナ・タ♥』とか言い出したらそれもキモくねぇか?」
「あ~……否定できん」
「だろ?……んで、何飲む?」
「あ~、じゃあ蕎麦焼酎の梅湯割りで」
あいよ、と言って木曾が俺の酒を支度しに席を立つ。その瞬間に朝風がスルリと隣に滑り込んできた。
「ふっふっふ……ようやく会えたわね司令官!」
その顔はその特徴的なオデコを始め全体的に赤くなっている上に口からは酒臭い息が漏れ出している。コイツ相当酔っぱらってやがるな。
「私はず~っと聞きたいことがあったのよ!この鎮守府に着任してからずっとよ!?ず~っと!」
「はぁ。何だよその聞きたい事ってのは?」
「アナタねぇ!何であんなにお嫁さんがいるのに、ケンカもしないで皆仲が良いの!?もうこれは不思議を通り越してミステリーだわ!」
「あ、それは青葉もちょっと気になります!」
青葉と朝風が両サイドから詰め寄ってくる。
「あ~……俺の主観というか、推論的な話になるがいいか?」
後書き
アンケートまだまだ募集中!締め切りは3/14のホワイトデーを予定しておりますが、まだ3~4人しかアンケートにお答え頂いておりません。ここの所休みがちだった俺ですが、今回のホワイトデー企画をきっかけに、ペースを取り戻したいと思っております。皆様、ご協力お願いしますm(_ _)m
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