ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の弐 蛇を宿した女
第十五話 さよなら
元宮がシオンを連れ去っていった後、四番目はいつもの部屋へ戻ってきていた。
この部屋には様々な怪異の依代を保管した箱があるからだ。
ここで、シオンの依代を壊してしまえば———彼女は苦しまずに消滅する。
「———私だって……嫌なんだよ、少年」
箱の中から古くなった小銭入れを取り出す。
手作りなのか、少し釣り合いが取れていなくて、でもアネモネの花の刺繍がされていたりと、かなり凝った作りになっている。
沢山の時間をかけて、一針一針実験へ参加しにいってしまう姉への思いを込めて作ったのだろう。
だが、これから四番目はこれを壊さなければいけない。
愛刀“絶刃”に手をかけ、スルリと抜き放つ。
この刀で怪異を斬れば、此岸との縁は完全に絶たれる。
つまり、怪異は本当に死ぬ。もう一度怪異として生き返ることもなければ、もう一度肉体を持って生き返ることもない。
此岸での魂自体の消滅。この刀で斬られるということは、そういうことを意味する。
「早く、戻ってきておくれよ……私の罪は幾らでも増えていいから、早く救ってやろうよ」
……決断したように、四番目は立ち上がる。
そして、机の上に小銭入れを置くと———その真ん中に、刀を突き刺した。
そこで、ガラリと扉が開いた。入ってきた元宮が部屋の中を見て、その場に座り込む。
「さようなら、シオン」
パラパラと、光の粒になって小銭入れがなくなっていく。
それと同時に、どこかにいるシオンも、光の粒となって、徐々に徐々に消えていって———なくなった。
すると、とある記憶が流れ込んできたのだ。
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