曇天に哭く修羅
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第一部
変異する魂
前書き
ちょっと強化。
【夏期龍帝祭】の決勝を翌日に控えた《立華紫闇/たちばなしあん》は《永遠レイア》に招かれて黒鋼の道場へと来ていた。
「何ですかレイアさん?」
「うん。とても大事な話が有ってね」
聞けば次の対戦相手である《橘花 翔》とは力の差が開き過ぎていて、現時点の紫闇がどう頑張っても勝てる見込みは無いという。
「そこでだ。私が反則しようと思い付いた。とは言っても滅多なことではしない。あくまでもそれをして大丈夫そうな人間にしかしないぞ。私自身は好んでやりたくないしな」
紫闇も翔の試合を見て薄々は気付いていたが、あまり認めたくなかったのでレイアに言われるまでは気付かないふりをしていた。
(気持ちで負けていたら、ただでさえ低い勝率が更に低くなってしまう。かと言って強さの格が違うという事実を受け入れないと前には進めない)
紫闇はレイアの話に耳を傾ける。
別に【天覧武踊】や龍帝祭のルールに抵触するようなことをしようというわけではないらしいので一安心だ。
「私が紫闇に施すのは【魔術師】の武器である【魔晄外装】、またの名を[ファーストブレイク]とも言われるそれを改造すること」
外装を作り替える。
そんなことが可能なのだろうか。
とんでもない技術だ。
「知らなくても当然の力さ。魔術師が生まれた紀元前を含めても、私と同じように出来るのは100人に満たないだろうからね。宿す【異能】を好きなように決められるわけじゃないし」
何と《黒鋼焔》もレイアから外装の改造処置を受けており、そのお陰も有って歴代黒鋼の誰もが辿り着けなかった領域に入ったという。
「但しリスクも有る。何だか解るかい?」
普段殆どの魔術師は忘れている。
または気にも留めないこと。
外装は『何から』出来ているのか。
「ああー……。成る程そういうことですか……。確かに大きなリスクですね。もしも外装の改造に失敗すれば俺の『魂』は……」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
意図的に魂を弄る。
恐ろしく不安だ。
どうなるか解ったものではない。
しかし紫闇はリスクを受け入れた。
勝率を上げる為に。
「《江神春斗》と戦う為にも橘花翔を相手に手段は選んでいられないです。俺の魂をレイアさんに預けますから強くしてください」
レイアは紫闇が顕現させた外装に触れると意識を集中させて精神と霊魂を繋げていく。
独特の感覚だ。
それは紫闇にも伝わった。
(うおっ……スゲェなこれ……!)
感覚的に自分が少しずつ変わっていくだけでなく外装にも少しずつ変化が起き始める。
形状こそ変わらないものの、色の基調は黒から紫になったことで雰囲気は一新。
ぼんやりと光を放つ。
みるみる内に作り替えられた紫闇の魔晄外装は最初からそうだったかのように馴染む。
「残念だけど【異能】は目覚めなかったね。後から使えるようになる可能性も無くはないけど。それよりも調子はどうだい?」
紫闇は体と外装に魔晄を流して動く。
「体が軽い。まさに別人ですよ」
レイアによれば、魔晄操作の効率化と恩恵の増幅、そして身体強化が魔術師の異能とは別で、外装の[機能]として使えるそうだ。
「何か勝てそうな気がしてきました」
「いや、最高の条件が揃ってそれでも全然厳しいからね橘花君は。【魔神】じゃないのが不思議なくらいだから」
やれることは全てやった。
「外装に名前でも付けてみたら良いよ。ただの外装じゃあ味気ないし」
後は挑むのみ。
後書き
_〆(。。)
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