恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十九話 呂蒙、陣を組むのことその七
その顔を赤くさせてだ。それで姉に言い返した。
「そんな。私は」
「だってそうじゃない。素直で真面目で」
孫権のいいところである。
「一途だし」
「何かそれを言うと」
呂蒙と同じであった。そうした性格がだ。
「ですが私はあの娘みたいに」
「そこでそう言うところが同じなのよ」
「そうですか」
「まあ君主の私がこんなのだから」
孫策は今度は己のことを話した。
「真面目な娘が多いのはいいことね」
「姉上の場合はです」
孫権はその真面目さを見せるのだった。意識せずにだ。
「それでよいと思いますが」
「いいのかしら。これだけいい加減なのに?」
「いい加減というよりはです」
「というよりは?」
「おおらかさがいいのです」
孫策の気質はそれだというのだ。
「器の大きいのがです」
「器ねえ。それを言うとね」
「はい?」
「劉備の方がずっと大きいかもね」
話が変わった。劉備についての話になった。
今先陣の彼女はだ。どうかというのだ。
「あの娘の器は相当なものよ」
「姉上以上にですか」
「それはすぐにわかると思うわ。蓮華にもね」
「確かに何か。あらゆるものが入りそうな感じですが」
孫権は劉備の器をこう評した。
「それはですか」
「ええ、私よりも遥かに凄いわね」
「では。まさに」
「天下の大器ね」
劉備はそこまでだというのだ。
「さて、この戦いでは何を見せてくれるかしら」
「それもまた楽しみなのですね」
「まあ袁紹が前線に立とうとするけれどね」
このことは誰もが容易に読めることだった。
「先陣を務めて。凄いことをしてくれるでしょうね」
「そうですか。見せてくれますか」
「きっとね」
こんな話をしてであった。彼女達は進軍を続けるのだった。呂蒙の陣を組警戒しながらだ。揚州の兵達も都に向かって進む。
そしてその劉備の先陣では。雪がだった。
守矢、そして楓と共にいた。そのうえでだった。
彼等にだ。こう言うのだった。
「楓もいるのはね」
「聞いていたんだね」
「ええ。聞いていたわ」
その通りだとだ。雪は楓に答えた。
「何時かは会うと思っていたけれど」
「そうだったんだね」
「それでね。やっぱり貴方も」
「感じているよ」
楓は少し暗い面持ちで姉に返した。
「刹那はこの世界にも来ているね」
「間違いなくね」
「そして常世をもたらそうとしている」
「だから私達はこの世界に来たのよ」
こうだ。雪は言った。
「常世を封じる為に」
「しかしだ」
守矢がここで口を開いてきた。
「雪、御前は」
「それが私の務めだから」
雪は楓のそれ以上に暗い面持ちで言葉を返した。
「だから」
「駄目だ」
守矢の言葉の調子は厳しい。
「それは駄目だ」
「駄目だというのね」
「御前は命を捨ててはならない」
彼が妹に言うのはこのことだった。
「何があってもだ」
「けれどそれでも」
「姉さん」
楓も姉に言ってきた。
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