| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十九話 呂蒙、陣を組むのことその六

 話を聞いた孫策は馬上でだ。こんなことを言った。
「それねえ」
「すぐに陣を組み替えるべきかと」
 呂蒙がまた言う。
「そうして敵が何時来ても対処できるようにです」
「それならね」
「それなら?」
「どういう陣がいいかしら」
 孫策は楽しげに笑って呂蒙に話してきた。
「それならね」
「陣ですか」
「そうよ。進軍速度は落とさないでね」
「そのうえで敵の急襲に何時でも対処できる」
「そうした陣を。組めるかしら」
 孫策はその笑みで呂蒙に問うのである。
「どうかしら、それは」
「さて、どうしたものか」
 黄蓋は孫策が呂蒙に話すのを聞いてだ。考える顔になって述べた。
「警戒に気を取られれば進軍速度が落ちかねぬな」
「兵は神速を尊ぶよ」
 また言う孫策だった。
「ましてや私達の軍は馬が少ないから」
「進軍速度に問題があるわよね」
 孫尚香もここで気付いた。
「今でもちょっと」
「そう、袁紹や曹操の軍に何とか追いついてるって感じよ」
 彼女達の軍は馬が多い。それならばだった。
「さて、どうするのかしら」
「それならです」
 暫し考えてからだ。それからだった。
 呂蒙は答えた。どういった陣にすればいいかをだ。
「まずは軍の左右にです」
「左右に?」
「弓兵を置きます」
 彼等をだというのだ。
「そうしてその周辺に騎兵を配します」
「何故騎兵かしら」
「彼等は物見です」 
 つまりだ。偵察だというのだ。
「周辺の哨戒に当たらせます」
「そうして敵が来れば発見できるようにするのね」
「はい、そうします」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「そして中央には普通の歩兵を置きます」
「警戒を騎兵に任せて何かあれば弓で撃つのね」
「これでどうでしょうか」
「そうね。今はただの進軍の為の陣でね」
 特にだ。戦の準備はしていないというのだ。
「そこまではしていないから」
「それならすぐに」
「そうするわ。それじゃあね」
 こうしてだった。孫策軍の陣はその様に組まれた。元々騎兵の少ない彼等の郡の進軍速度は落ちなかった。まさに呂蒙の読み通りだった。
 そしてだ。その陣で進軍しながらだ。孫権が姉に声をかけた。姉の馬の隣に己の馬を持って来てだ。二人並んでから話をするのだった。
「あの娘の考えを容れたのですね」
「そうよ」
「試されたのですか」
「簡単だけれどね。試験よ」
 それだとだ。孫策は笑って妹に話す。
「あの娘が軍師として努力してるかどうかね」
「試験だったのですか」
「そろそろ陣を組みなおそうと思ってたし」
 実はそうした事情もあったのだった。
「好都合だったわ」
「確かに。間も無く敵の関に近付いています」
「何時敵が来てもおかしくないからね」
「だからですね」
「ええ。陣を組みなおそうと思っていた時にね」
 その呂蒙達が来たというのだ。そうした話をするのだった。
「正直有り難かったわ」
「試験もできてですね」
「貴女の軍師に相応しいわね」
 微笑んでだ。こんなことも言う孫策だった。
「大切にしなさいよ」
「はい、そうさせてもらいます」
 孫権も姉の言葉に微笑んで返す。
「その性格もいいですし」
「そうね。真面目で一途でね」
「純粋で」
「正直軍師としては素直過ぎるかも知れないけれど」
 しかしだ。それが呂蒙なのだった。
「それでもね。あれがかえっていいからね」
「とてもいい娘です」
「何かうちってああいう娘多いわね」
 孫策は馬を操りながら笑顔で話す。
「貴女といいね」
「わ、私もですか」
 孫権はそう言われてだった。そうしてだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧