英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第52話
~隠れ里エリン・ロゼのアトリエ~
「なぬ?ローゼングリン城――――――リアンヌの居城で”慈悲の女神”と出会ったじゃと?」
「そういえばリィン達A班のレグラムでの特別実習の時に、ローゼングリン城で出会った謎の女性の事については聞いてはいたけど…………」
ユーシスのベルフェゴールへの質問を聞いたローゼリアは眉を顰め、サラは考え込んでいた。
「ああ、アイドス?アイドスは自称もなにも”本物の女神”よ?」
「アイドスさんが”本物の女神”…………」
「そ、”空の女神”の件といい、最近の僕達って非常識過ぎる人達ばかりと出会っている気がするんだが…………」
ベルフェゴールの答えを聞いたアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ガイウスは呆けた表情で呟き、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「やはり彼女は”本物の女神”でしたか…………という事はカレル離宮で見せたリィン君の”あの力”は、リィン君の言葉通り”慈悲の女神”である彼女との”性魔術”によってリィン君の以前の瘴気を纏った力であった”鬼の力”が浄化された代わりに、”慈悲の女神”の力が上書きされていたという事でしょうか?」
「ええ。ちなみにご主人様の剣にアイドスが宿っている理由は、”女神”であるアイドスをその身に宿すのはご主人様にとって負担が大きすぎるから、代わりに剣に宿ったそうよ♪」
「そ、そんな理由でリィンがずっと悩んでいた”鬼の力”がなくなったって…………」
「色々な意味で台無しだね。」
トマスの推測に肯定したベルフェゴールの話を聞いたアリサとフィーはジト目で呟いた。
「あの…………何故リィンさんはオリンポスの星女神の一柱たるアイドスさんに”選ばれた”のでしょうか?」
「さあ?本人は”星の導き”とか訳のわかんない事を言っていたけど、アイドスがご主人様と契約したって事は、ご主人様を将来自分の”使徒”にするか”神格者”にするつもりだと思うわよ。」
「し、”神格者”って確か…………」
「神々から”神核”という力を授かる事によって、不老不死の身になる事か…………」
「それに”使徒”はエクリア殿達と同じ…………」
「ああ…………神々の下僕になる事によって、”神格者”同様不老不死の存在になる事だね。」
「…………ベルフェゴール殿の口ぶりではリィンがアイドス殿の”神格者”か”使徒”とやらにする事を確信していますが…………何故、そうお思いになられたのでしょうか?」
エマの質問に興味なさげな様子で答えたベルフェゴールの答えにトワは不安そうな表情で、ラウラは重々しい口調でそれぞれ呟き、ミュラー少佐とオリヴァルト皇子は真剣な表情で呟き、アルゼイド子爵はベルフェゴールに訊ねた。
「そりゃ、女神が一人の人を寵愛しているんだから、悠久の時を生き続ける自分と共に生き続けてもらう為にそうなるのが自然の流れのようなものじゃない。それにおとぎ話とかで、”神の花嫁”は特別な力を授かるとかあるじゃない。それと同じようなものよ。――――――あ、ご主人様は男でアイドスは女神だから、”女神の花婿”と言うべきかしら♪」
そしてベルフェゴールの答えにその場にいる全員がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「レン君、アイドスさんはもしかしてサティアさんと何か関係がある女神なのかい?彼女がサティアさんと同じ”オリンポス”の女神の一柱である事もそうだが、何よりも容姿がサティアさんと非常に似ているようだが…………」
我に返ったオリヴァルト皇子は表情を引き締めてレンに訊ねた。
「アイドスお姉さんはサティアお姉さんの”妹神”――――――つまり、アイドスお姉さんとサティアお姉さんは”姉妹”なんだから、似ていて当然よ。」
「アイドス殿がサティア殿の…………そういえば、サティア殿は三姉妹の次女だという話だったな…………」
「ほほう…………?その事を知ったセリカさんの反応も是非見てみたいものだね♪」
レンの答えを聞いたミュラー少佐が驚いた後考え込んでいる中、オリヴァルト皇子は興味ありげな表情を浮かべた。
「オリヴァルト殿下とミュラー少佐はアイドス殿の”姉”に当たる”女神”と出会った事があるのですか?」
「ああ、”サティア”という名前はサティアさんが”女神”である事を隠して地上で活動していた時の偽名だそうで、本当の名前は”アストライア”という名前の女神さ。ちなみに出会った場所は”影の国”さ。」
「”アストライア”…………!”裁き”を司る”正義の女神”じゃと!?」
「フフ、”影の国”の話は聞いてはいたけど、話以上のとんでもない人外魔境の世界になっていたようね。」
アルゼイド子爵の問いかけに答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたローゼリアは驚き、クロチルダは苦笑していた。
「それとカレル離宮での戦いを見ていたんだったら、オリビエお兄さん達も気づいていると思うけどアイドスお姉さんはエステルと同じく数少ない”飛燕剣”の使い手の一人――――――それも、エステルと違ってセリカお兄さんのように奥義や絶技も扱えるわ♪」
「ハハ………彼女が火焔魔人殿との戦いで扱った見覚えがある剣技で”飛燕剣”の使い手である事には気づいていたが、まさか習得している剣技はセリカさんクラスとはね…………道理で大使館でパント卿がリィン君達のことを”心配無用”という訳だよ。」
「”魔神”に加えて”女神”――――――それも”飛燕剣”の使い手まで仲間になったのだから、まさに今のリィンの元には最高戦力が揃っていると言っても過言ではないな…………」
レンの話を聞いたオリヴァルト皇子は苦笑し、ミュラー少佐は真剣な表情で呟いた。
「”飛燕剣”…………?もしや異世界の剣技なのですか?」
「ああ。――――――”飛燕剣”。”飛燕剣”は異世界の東方の剣技だそうなのだが、使い手は様々な理由により非常に少なく、”伝説にして最強の剣技”とも呼ばれている事があるとの事だ。」
「で、”伝説にして最強の剣技”………」
ラウラの質問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたマキアスは信じられない表情をし
「…………それと”飛燕剣”の特徴は”高速剣”であることなのだが…………高速で剣技を放つ代償なのか振るう技が凄まじければ凄まじい程、身体に大きな負担がかかるらしくてな。――――――少なくても”人”の身で振るう事ができるのはせいぜいが”奥伝”クラスの剣技までで、それ以上――――――”皆伝”クラスの剣技になるとあの”火焔魔人”のような”人の身を超えた存在”でなければ振るう事ができないそうだ。」
「ひ、”人の身を超えた存在でなければ振るう事ができない剣技”って…………!」
「そんなまさに言葉通り”化物”――――――いえ、”超越者”クラスとも知り合った事があるアンタの人脈は一体どうなっているのよ。」
「セ、セリーヌ。」
ミュラー少佐の補足説明にエリオットは信じられない表情をし、呆れた表情で呟いたセリーヌの言葉にエマは冷や汗をかいた。
「ミュラー少佐、”飛燕剣”の特徴は”高速剣”と言ったが具体的に言えばどういうものなのだ?」
「そうですね…………何度か話に出た事がある自分やオリビエが”影の国”で出会った人物――――――セリカ殿の飛燕剣の”皆伝”クラスの剣技の一つで、一振りで32の斬撃を放つ剣技がありますし、”戦場”全体に斬撃を叩き込む剣技もありましたね。」
「な――――――」
「一振りで32の斬撃を放ったり、”戦場”全体に斬撃を叩き込む剣技なんて、一体どういう凄まじい剣技なんだ…………?」
「そのような化物じみた技、恐らくあのリアンヌでもできんぞ…………」
アルゼイド子爵の質問に答えたミュラー少佐の答えを聞いたアリサ達がそれぞれ驚いている中ラウラは絶句し、ガイウスは呆けた表情で呟き、ローゼリアは表情を引き攣らせ
「アハハ~…………実はその槍の聖女――――――いえ、”鋼の聖女”がクロスベルの異変が起こる少し前にクロスベルで暗躍していた際に偶然今の話にあった”嵐の剣神”と出会って、戦いに発展したそうなんですが…………”神速”を含めた”鉄機隊”全員は”嵐の剣神”の一振りによって無力化され、”鋼の聖女”も一軍も退かざるをえないはずだったその絶技を易々と防がれた上”嵐の剣神”の絶技によって一瞬で無力化されたとの事です。…………それと今の話から嵐の剣神は人外じみた凄腕の剣士と思われがちですが、短い期間ではありますが彼と行動を共にしたワジの報告によりますとまさにその異名通り”嵐”に関係する気象――――――空より無数の雷を呼び寄せたり、竜巻を発生させる魔術も扱えるとの事です。」
「なんじゃと!?」
「”槍の聖女”は絶技で一瞬で無力化し、あの”神速”を含めた”鉄機隊”全員は剣の一振りで…………」
「しかも雷や竜巻を発生させる相当高度な魔術まで扱えるとか、一体何者なのよ、その剣士は。」
「あ、”嵐の剣神”の話はあたしも話には聞いてはいたけど、まさかそこまで化物じみた奴だったとはね…………」
「ハッハッハッ。さすがはセリカさん。早速ゼムリア大陸でも伝説を作っていたみたいだね。」
「つーか、どう考えてもマジモンの”チート存在”だろ、そのセリカって野郎は。」
「で、そんなチート剣技を扱える女神を仲間にしたって事だね、リィン君は。」
「しかも魔神化したあのマクバーンの”本気の焔”すらも受け止められる程の大結界をあんな短時間の詠唱で展開できるのだから、術者としても間違いなく婆様すらも軽く超えているでしょうね。…………まあ、”女神”なのだから、むしろそれが”当然”なのでしょうけど。」
苦笑しながら答えたトマスの情報にアリサ達がそれぞれ血相を変えている中ローゼリアは驚きの声を上げ、ラウラは驚きの表情で呟き、セリーヌは目を細め、サラは表情を引き攣らせ、オリヴァルト皇子は暢気に笑い、クロウとアンゼリカは疲れた表情で呟き、クロチルダは苦笑しながらアイドスの戦力を推測していた。
「うふふ、これで理解できたでしょう?リィンお兄さんがメンフィルは友好を結ぶのが非常に厳しい二柱もの相手――――――”魔神と女神”と契約したお陰で、”シュバルツァー家”が公爵家になることも。」
「確かにそんな”一人で戦況すらも変える事ができる戦略級の存在”をリィンが二人も仲間にしたんだから、エレボニアを圧倒しているメンフィルでも高評価されて当然だろうね。」
「…………それにしても幾らアンタにとっての”十八番”の勝負で負けたとはいえ、素直に自分よりも圧倒的に格下の存在であるリィンに従っていられるわよね?”七大罪の魔王の一柱”としての”プライド”とかなかった訳?」
「セ、セリーヌ。」
レンの問いかけにフィーは真剣な表情で呟き、目を細めてベルフェゴールに指摘するセリーヌの言葉にエマは冷や汗をかいた。
「うふふ、そういうのはその言葉通り”傲慢”の”特権”だから私には関係のない話よ。それにご主人様が”性魔術”で私を満足させた所か、屈伏させたことに驚くと共に直感で感じたのよ―――ご主人様は私にとって今後一生出会う事がほぼ不可能のはずだった”最高のセックスパートナー”だってね♪だから、そんな最高のセックスパートナーを逃がさない為にもご主人様と”契約”した理由の一つよ♪」
「セ、セセセセセセセ…………ッ!?」
「はわわわわわわわわわわ…………っ!?」
「…………聞くに堪えんな。」
「ふふっ、”サキュバス”の”頂点”の存在である彼女にそこまで思われるなんて、ある意味光栄かもしれないわね、リィン君は。」
ベルフェゴールの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサとトワはそれぞれ顔を真っ赤にして慌て、ユーシスは呆れた表情で呟き、クロチルダは苦笑していた。
「うふふ、ご主人様の名誉の為に言っておくけど、私達よりも前にいたハーレムメンバーであるエリゼ達は知らないけど最近新しいご主人様のハーレムメンバーになった女の子たちは私も含めて、みんな自分からご主人様を押し倒したから、ご主人様は今の状況になっても”そういう方面”に関しては超鈍感なのは相変わらずよ♪」
「ア、アハハ…………”そういう事”に関しては変わっていないみたいだね、リィン君…………」
「むしろそこに関しては変わって欲しかったわ…………」
ベルフェゴールの話にアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは苦笑し、サラは呆れた表情で溜息を吐いた。
「あ、あれ?ちょ、ちょっと待って!?ベルフェゴールさんの話だと、”最近リィンとそういう関係になった女性全員は自分からリィンを押し倒した”って事は…………」
「ま、まままままま、まさかアルフィン皇女殿下まで…………!?」
「さすがにそれはありえないと思うのだが…………皇女殿下は淑女としての教育を当然受けているのだから、そのようなはしたない事はされないと思うのだが…………」
一方ある事に気づいたエリオットは信じられない表情をし、マキアスは混乱し、ラウラは困惑の表情で呟いた。
「ハッハッハッ、ラウラ君、それは甘い考えだと思うよ?アルフィンは君達も知っての通り、私のように猫を被るのが上手いからね。ましてやアルフィンはメンフィルが要求したアルフィンへの処分の件で身分を捨てさせられたことでリィン君とアルフィンを阻んでいた一番の問題である身分差が逆転したんだから、これ幸いと思ってリィン君を押し倒したんだろうね♪それにメンフィル帝国の大使館でパント臨時大使閣下も仰っていたじゃないか、『今頃アルフィン殿は彼自身が遠慮していても自らの意志で彼の”使用人兼娼婦”を務めていると思いますよ?』と。
「……………………」
暢気に笑いながら指摘したオリヴァルト皇子の推測にアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ミュラー少佐は顔に無数の青筋を立てて黙っていた。
「うふふ、それでベルフェゴールお姉さん、実際の所はどうなのかしら?」
「ええ、アルフィンがご主人様の所に来たその日の夜にご主人様の所に来て『わたくしは”ご主人様”にお仕えする使用人であり、”ご主人様”の”性欲”を発散させる為の存在であるご主人様専用の”娼婦”。わたくしが本当の意味でご主人様専用の”娼婦”である”証”を作る為に、ご主人様の欲望のままにどうか存分にわたくしを犯してください。」って言って、下着姿になってご主人様に迫ったわよ♪」
「ええっ!?ア、アルフィン皇女殿下が本当にそのような思い切った事を…………!?」
「あ、あのー…………アルフィン皇女殿下の為もそうですが、リィン君の為にもその話についてはそこまでにしてあげたらどうですか?どう考えても今の話は当事者以外は知ってはいけない話だと思いますし…………」
「むしろ俺達にとっては知りたくもなかった話だろ…………」
「クッ…………”帝国の至宝”の片翼として称えられているあのアルフィン皇女殿下にそこまでしてもらえるなんて…………リィン君ばかりズルいじゃないか!一日だけでいいから、その位置を是非代わってくれ…………いや、代わってください!」
「アンちゃん…………」
「ふふっ、まさかそんな大胆な事までする皇女様とは私も思わなかったわ♪私もアルフィン皇女のようにもっと積極的になれば、レオンも振り向いてくれたかしら?」
「やめんか、この放蕩娘が。”怠惰”の魔王ほどではないとはいえ、ただでさえ男を誘うようなはしたない格好をしている癖に…………全く、これも結社の”盟主”とやらのせいか?」
「いや、さすがにそれは関係ないでしょ…………」
レンの質問に答えたベルフェゴールの答えにアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、エマは信じられない表情で声を上げ、トマスは冷や汗をかきながら指摘し、クロウは疲れた表情で呟き、悔しがっているアンゼリカを見たトワは呆れ、クロチルダの言葉を聞いて疲れた表情で呟いたローゼリアにセリーヌは呆れた表情で指摘した。
「フフ、それにしてもさすがは我が妹。まさか私を超える発言と行動をするとは。今後のシェラ君との関係を深める為にも、是非参考にさせてもらわないとね♪」
「やめんか、阿呆が…………!」
感心した後からかいの表情で呟いたオリヴァルト皇子にミュラー少佐は顔に青筋を立てて声を上げてオリヴァルト皇子に注意した。
「…………ねえ。リィンと新しく”そういう関係”になったメンバーで気になっていたけど、リィンが呼んだ天使とカレル離宮で団長達を圧倒していた人達の中にもいた天使は凄く似ていたけど、あの二人の天使は双子かなにかなの?」
「ああ、ユリーシャお姉さん”達”の事?ユリーシャお姉さん”達”は似ているもなにも、二人はこの世界と並行世界、それぞれの”同一人物”なんだから、似ていて当たり前よ。ちなみにリィンお兄さんに仕えているユリーシャお姉さんが並行世界のユリーシャお姉さんで、猟兵王達と戦っていたユリーシャお姉さんはこっちの世界のユリーシャお姉さんよ。」
「へ、並行世界!?」
「ま、また非常識な…………」
「”ユリーシャ”…………それがメサイアやベルフェゴールさんのように、新たにリィンの使い魔となった天使の名前か…………」
フィーの質問に答えたレンの答えを聞いたエリオットは驚き、マキアスは疲れた表情で、ガイウスは静かな表情でそれぞれ呟いた。
「正しくは”守護天使”よ。”使い魔”なんて言い方をしたら、”天使の誇り”が人一倍強いユリーシャの事だから問答無用で『天罰です!』とでも言って、大人げなく上位神聖魔術を叩き込んでくるかもしれないから、言葉には気を付けた方がいいわよ♪」
「…………ちなみに”守護天使”と”使い魔”はどういう違いがあるのでしょうか?」
ベルフェゴールの注意にアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アルゼイド子爵はレンに訊ねた。
「基本的に役割は一緒だけど、”守護天使”の役割は天使がたった一人の人について守り導く事よ。どんな方向に導くかはその守護天使と”主”次第でしょうけど…………守護天使がついた人は”英雄”や”王”への道に歩む運命にあるとも言われているわ。」
「…………七耀教会でも、”守護天使”は似たような内容が伝えられていますね。そもそも”天使”とは文字通り”天からの使者”――――――つまりは、神々が住まう世界からの使者なのですから、そのような存在に”選ばれた”人は何らかの特別な”運命”があるのでしょうね。」
「なるほどね…………その実例としてエステル君がいるね。」
「ああ…………ニル殿と契約しているエステル君はまさに”英雄”と言っても過言ではない存在だな。」
レンの説明とレンの説明を補足したトマスの説明を聞いたオリヴァルト皇子とミュラー少佐はエステルとニルを思い浮かべた。
「ちなみに異性同士のペアの場合、その”守護天使”にとっては”その人に一生寄り添って守り導く事”になるから、天使にとって異性の守護天使契約相手は”伴侶”も意味するのよ♪」
「は、”伴侶”って…………!」
「まあ、リィンを”セックスパートナー”扱いしているベルフェゴールやリィンを”神格者”や”使徒”とかいう訳のわかんない存在にしようとしている”女神”とやらと比べればまだまともなんじゃねぇか?」
「そだね。という事は団長達と戦っていたユリーシャの”伴侶”は団長を圧倒していた大剣使いの男――――――確か名前は”ジェダル”だっけ。そのジェダルとやらがリィンの”守護天使”じゃない方のユリーシャが”守護天使”契約している相手なんだろうね。」
ベルフェゴールの説明を聞いたアリサが信じられない表情をしている中、疲れた表情で呟いたクロウの言葉に頷いたフィーは推測を口にした。
「そういえば…………その件で気になっていたんだが、レン君。カレル離宮で猟兵王達と戦っていた彼らは一体何者なんだい?天使族のユリーシャさんがいる事から”ディル=リフィーナ”の関係者である事は予想されるのだが…………」
「ジェダルお兄さん達?ジェダルお兄さん達はエステル達がアルスターでアルスターを襲撃したニーズヘッグの猟兵達からアルスターの民達を守っていた最中に、転位の事故によってディル=リフィーナから迷い込んできた”グラセスタ”という国で活動している傭兵とその関係者達よ。で、状況を知る為に取り敢えず事情がわかっていそうな口ぶりをしていたエステル達を手伝って猟兵達や猟兵達が操縦していた機甲兵の撃破をしたそうよ。――――――ああ、ちなみにジェダルお兄さん達が現れた場所はアリエル・レンハイムの慰霊碑がある場所よ。」
「な――――――アリエル様の…………!?」
「…………………ハハ………まさかとは思うが、母上がアルスターの民達を守る為に彼らを呼び寄せたのかもしれないね…………」
「殿下…………」
オリヴァルト皇子の質問に答えたレンの答えにミュラー少佐は驚きの声を上げ、オリヴァルト皇子は呆けた後寂しげな笑みを浮かべ、オリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうに見守っていた。
「”傭兵”…………そういえばカレル離宮での戦いの時もヴァイスハイト皇帝に雇われてリィン達に加勢していたような口ぶりだったわね…………」
「正しくは”ルシティーネ卿に雇われている抜闘士”なんだけどね、ジェダルお兄さんの場合。」
真剣な表情で考え込みながら呟いたサラの言葉にレンが指摘し
「”抜闘士”とは何なのだ?」
「それに”ルシティーネ卿に雇われている”と仰っていましたが、まさかあのメンバーの中に貴族のような存在がいたのですか?」
レンの言葉が気になったガイウスとユーシスはそれぞれ質問した。
「ジェダルお兄さん達の中に小さな人形みたいな存在がいたでしょう?その人形がリリカ・ルシティーネ卿――――――”グラセスタ”という国の大貴族の一つである”ルシティーネ家”の当主にしてジェダルお兄さんの”真の雇い主”よ。」
「そういえばそのような存在も”西風の旅団”と戦っていましたね…………」
「うむ…………光と大地もそうじゃが、味方の支援や回復する魔術も扱っておったな…………」
レンの説明を聞いたエマとローゼリアはカレル離宮での戦いを思い返していた。
「ちなみに”抜闘士”は”グラセスタ”で言う”自由民”――――――つまり、こちらの世界では”傭兵兼平民”を意味する言葉だそうよ。」
「よ、”傭兵兼平民”って意味不明なんですけど…………」
更に説明したレンの話を聞いた仲間達がそれぞれ冷や汗をかいている中アリサがジト目で指摘し
「”グラセスタ”という国は他の国々と比べると少々…………いえ、かなり”変わった”国らしくてね。グラセスタは元々は地下王国であった魔族国を滅ぼして、その滅ぼした国の地上に作られた国だそうなのだけど、その滅んだ国の地下にあるその大迷宮――――――”黒の抗”という場所は未だ魔物や生き残った魔族の巣窟になっていて、グラセスタは自分達の国を奪還しようと襲い掛かる魔物や魔族の侵攻を防ぐ為に”抜闘士”や兵士達を派遣して魔物達の”間引き”を行っているそうなのよ。そしてグラセスタはそんな国だから、当然”王”には”抜闘士”達を率いる能力――――――要するに”誰よりも秀でた戦闘能力”が求められているから、”王”は”血筋”じゃなくて文字通り”力”で決まるそうよ?そしてグラセスタの王は”グラセスタ一の戦士”を意味する事から、”迎撃王”と呼ばれているそうよ。以上のことからグラセスタは”力”さえあれば、なろうと思えば”王”にもなれるし、”貴族”にもなれるとの事よ。」
「”迎撃王”…………」
「”血筋”ではなく”力”で”王”を決めるのですか…………」
「し、しかも”力”だけで”貴族”にもなれるとか、一体どういう国なんだ…………?」
「”実力主義”のメンフィルよりも”力”に固執している国等俺達の世界からすれば、常識を疑う国だな…………」
「常に魔物の襲撃に脅かされる国ならではの国柄と言った所なのだろうな。」
レンの説明を聞いたガイウスは呆けた表情で呟き、ラウラは驚きの表情で呟き、マキアスは表情を引き攣らせながら呟き、呆れた表情で呟いたユーシスにアルゼイド子爵が静かな表情で指摘した。
「ちなみに”抜闘士”よりも下の階級――――――”隷士”という身分があってね。”隷士”は犯罪を犯した人達や借金で破産した人達、敗戦国の兵士や傭兵達がその敗戦させられた国によって売られて”黒の抗”の魔物達と戦わせられる存在――――――要するにグラセスタでの”奴隷”を意味する身分だそうなんだけど…………何とジェダルお兄さんは以前はその”隷士”なんだったそうなんだけど、僅かな期間で自らの”力”で”抜闘士”に”成り上がった”のよ♪」
「ふええっ!?奴隷から平民に…………!?」
「その男が何をして、奴隷になったのかは知らないけど、言葉通りまさに”力”が求められていると言っても過言ではないその国で僅かな期間で奴隷階級から平民階級に成り上がれるなんて相当な実力者である証拠ね…………」
「ええ、それに大貴族の当主に雇われている上天使族の主になっているのだから、”運”も持っているのでしょうね。」
レンの話を聞いたトワは驚きの声を上げ、セリーヌとクロチルダは真剣な表情でジェダルの強さを推測した。
「他にも仲間がいたようだけど、その人達は何者なの?」
「さあ?ジェダルお兄さん達は基本クロスベル側が雇っている傭兵だし、クロスベル側もあくまで”協力者として雇う存在”であるジェダルお兄さん達にジェダルお兄さん達の事情をそんなに根掘り葉掘り聞いていないから、レン達メンフィルもジェダルお兄さん達の詳しい事情は知らないわ。――――――判明しているのは全身が白い肌の女性は”フルーレティ”という名前の”魔神”で、もう一人の弓使いの女性は”フィア”という名前の”女神”という事だけよ。」
フィーの質問に答えたレンの答えを聞いたアリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「また”魔神”と”女神”かよ…………」
「い、一体どういう人達なんだろう…………?」
我に返ったクロウは呆れた表情で呟き、エリオットは不安そうな表情で呟いた。
「それにしても女神もそうだが天使も”魔王”である貴様にとっては相反する存在なのに、よく争わずに連中の事をそんな暢気に話していられるな。」
「うふふ、私は基本面白ければ何でもいいという考えだから、一々種族どうこうを気にする細かい性格じゃないもの。――――――むしろ、無自覚で種族関係なく次々と色んな女の子達を落としていっている今の状況は見ていて面白いくらいよ♪色々と腹に一物を抱えているミュゼは当然としてすっかりご主人様になついたアルティナ、そしてご主人様の昔からの知り合いのステラも一体いつ落ちるのか見物よ~?」
ユーシスの質問に対して答えたベルフェゴールの答えにアリサ達はそれぞれ脱力し
「”そういう所”に関してだけは相変わらずなんだな、リィンは…………」
「しかもちゃっかり、黒兎まで落としていたとはね…………多分、黒兎に感情をさらけ出すようになった話にも関係しているのでしょうね…………」
「フフ、リィンだから間違いなく関わっているだろうな。」
「というかあの黒兎がリィン君になついているなんて、個人的にはあの黒兎がリィン君にどんな風に接しているのか興味があるわ。」
「やれやれ、話には聞いてはいたが相当罪深い男のようじゃの、現代の灰の起動者は。」
「アハハ~、それに関しては否定できない所が辛い所ですね~。」
我に返ったマキアスとサラは呆れた表情で呟き、ガイウスは苦笑し、クロチルダは興味ありげな表情をし、呆れた表情で溜息を吐いたローゼリアの言葉にトマスは苦笑していた。
「…………そのステラとやらはリィンの昔の知り合いらしいけど、もしかしてその人ってあの時ゼノと”閃撃”を狙撃した黒髪の銃使いの女騎士の事?」
「ええ。――――――ステラ・ディアメル。元々はエレボニア帝国貴族の令嬢だったんだけど、実家に嫌気がさしてメンフィルに亡命すると同時にメンフィル軍に入隊して、狙撃を含めた銃の腕前が評価されて訓練兵卒業後はリフィアお姉様の親衛隊に抜擢されたエリート軍人で、訓練兵時代はリィンお兄さんとペアを組んで学んでいたらしいから、リィンお兄さんにとっては訓練兵時代の相棒でもあったそうよ。」
「…………!?」
「な――――――あの銃使いの女性がエレボニア帝国貴族の出身だと…………!?」
「しかも実家に嫌気がさしたからといって、そこまでするなんて、そのお嬢さんは相当実家もそうだがエレボニアを捨てることにも未練がなかったんだろうねぇ。」
「訓練兵時代のリィンの相棒という事はそのステラさんがセシリア将軍の話にあった訓練兵時代にリィンと最も親しかった人なのでしょうね…………」
「それも元は帝国貴族の出身とはな…………”ディアメル伯爵家”といえば”四大名門”に次ぐ名門貴族の家の一つなのに、何故家どころか故郷を捨てて軍人になったのかまるで理解できんな。」
フィーの質問に答えたレンの答えを聞いたマキアスは目を見開き、ミュラー少佐は驚きの声を上げ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、アリサは複雑そうな表情で呟き、ユーシスは真剣な表情で呟いた。
「うふふ、ステラお姉さんに限らず様々な事情でメンフィル軍に入隊した元エレボニア帝国出身の人達もいるわよ?…………ああ、その件で思い出した事があってちょうどいい機会だから、Ⅶ組のみんなに紹介してあげるからちょっとだけ待っていてね。ベルフェゴールお姉さんはお疲れ様♪」
「ふふっ、ご主人様の元クラスメイトがどんな人達なのかの確認も終わった事だし、私はそろそろ失礼させてもらうわ。――――――次は”戦場”で会いましょうか♪」
レンはエニグマを取り出して部屋から出ていき、ベルフェゴールはアリサ達を見回した後転位魔術でその場から去っていった。
「結局何をしに来たのよ、あの痴女は…………」
「彼女の口ぶりからすると、リィンの同級生であった”Ⅶ組”について純粋に興味があったからなのであろうな…………」
「そ、それよりもレン皇女殿下が僕達に紹介したい人達がいるみたいな口ぶりで部屋から出て行ったけど、一体どんな人達なんだろう…………?」
「ま、今までの話の流れから恐らく君達にとっては衝撃を与えるような人達なんだろうねぇ。」
ベルフェゴールが去った後疲れた表情で溜息を吐いたサラの疑問にアルゼイド子爵が静かな表情で答え、不安そうな表情をしているエリオットの推測にアンゼリカは疲れた表で溜息を吐いて答えた。そして数分後レンが部屋に入ってきた。
「――――――待たせたわね。という訳でみんな、入ってきてちょうだい♪」
「――――――失礼します。」
部屋に入ってきたレンが開けっ放しにしている扉に視線を向けて声をかけるとアリサ達と同年代と思われるまだ幼さを残した軍人達とフォルデと同年代と思われる軍人達が部屋に入ってきた。
「それでレン皇女殿下、ご用向きは何なのでしょうか?」
「召集をかけたメンツから察するに”灰獅子隊”関連の話でしょうか?」
「いえ、その話をするにしてもそちらにいる”部外者”達に聞かせるような話ではないから、恐らくそちらの部外者の方達が関係しているのでしょうね。」
焦げ茶の髪の少年と金髪の少年はそれぞれレンに訊ね、金髪の少年の推測を否定した茶髪の少女はアリサ達を見回した。
「うふふ、エーデルガルトが正解よ♪――――――そちらの金髪の貴公子はエレボニア帝国皇子のオリヴァルト皇子。そしてオリヴァルト皇子の両面に座っているエーデルガルト達と同年代の人達が例の”Ⅶ組”とその”Ⅶ組”の関係者よ。」
「”Ⅶ組”…………?最近どこかで聞いたような…………?」
「あ――――――ッ!思い出しました!ほら、そのエレボニア帝国のオリヴァルト皇子の我儘のせいでリィンが留学させられた例のエレボニアの士官学院のリィンのクラスですよ!」
レンの答えに焦げ茶の髪の少年の隣にいる金髪の少女が考え込んでいる中茶髪の少女の隣にいたフィー並みに幼い白髪の少女が声を上げてアリサ達を見回して仲間達に情報を伝え
「ほう…………?」
「あー…………私、レン皇女殿下がこのメンツをわざわざ集めてここに呼んだ理由がわかっちゃったわ。」
「やれやれ…………レン皇女殿下もお人が悪い。わざわざ僕達と例の”Ⅶ組”とやらを顔合わせをさせるとはね。」
「”Ⅶ組”…………エレボニアの内戦ではリィンにばかり負担をかけていた例の”腰抜け”の連中か。」
赤みがある茶髪の軍人は興味ありげな表情でアリサ達を見回し、他の軍人達と違ってクロチルダのようなドレス姿で妖艶な雰囲気を纏っている黒みがある茶髪の女性は苦笑し、深い青色の髪の軍人は苦笑した後表情を引き締めてアリサ達を見回し、金髪の少年の隣にいる褐色の肌で少年でありながら、ガイウスよりも長身かつ大柄の少年は目を細めてアリサ達を見回した。
「なっ!?ぼ、Ⅶ組(僕達)が”腰抜け”だって!?」
「確かに内戦では騎神の起動者であるリィンの負担が大きかった事は否定しないが…………」
「初対面の貴様らに俺達がそのように侮辱される言われはないぞ。」
「そ、それよりも…………もしかして貴方達って、フォルデさんやステラさんと同じリィン君の…………」
褐色の肌の大柄の少年の言葉に驚いたマキアスは厳しい表情で反論し、ラウラとユーシスは厳しい表情で呟き、ある事に気づいたトワは不安そうな表情で初対面となる軍人達を見回した。
「うふふ、Ⅶ組のみんなにも紹介するわ。――――――黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)。”訓練兵時代のリィンお兄さんやステラ少佐が所属していた学級にしてセシリアお姉さんが担当していた当時の訓練兵の中でもエリート揃いの学級”の出身者達よ♪」
そしてレンはアリサ達”Ⅶ組”にとって驚愕する事実を伝えた――――――
後書き
今回の話の最後に出てきたオリジナルキャラ達の元ネタは今回の話で一人だけ名前が出た時点でお察しの方達もいると思いますがファイアーエムブレム風化雪月で、一人を除いて原作通りの容姿、声だと思ってください♪正直、これでも相当絞りました(汗)何せ風化雪月は魅力的なキャラが多すぎますので。メルセデス、マリアンヌ、シルヴァン、ヒルダ、フェリクス、ヒューベルト、ラファエルも出したかったし、学級名も黒鷲の学級(アドラー・クラッセ)にしたかったけど、Ⅶ組が関係する”獅子”関連のクラス名にした方がいいと思いましたので、リィンのメンフィル帝国軍の訓練兵時代の学級名は文字だけ違って、名前は原作と同じ学級名にしましたwwなお、次回はぶっちゃけⅦ組アンチの話になりますので、Ⅶ組がアンチされるのを見たくない!という人達は読まない方がいいかもしれません。次回のBGMは風化雪月の”鷲獅子たちの蒼穹”だと思ってください♪
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