デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第三十七話「準備」
「…で?何か申し開きはあるの、士道」
「…面目次第もございません」
フラクシナスにあるブリーフィングルーム。その中央で士道は士織ちゃんモードで正座し妹の琴里の圧力を受けていた。周りにはクルー達がおりその様子はさながら法廷で裁かれる罪人のようであった。
「私、言ったわよね?短気を起こすなって。精霊の好感度を上げようって時に、よりにもよって『お前が嫌い』?『お前を否定する』?随分と思い切ってくれたものね」
琴里のド正論が士道の心に辺り大きなダメージを与えていく。そんな士道を庇ってくれる人物は、誰もいなかった。
「で、でも…可笑しいだろ!あいつ、人の命を何とも思ってないんだぞ!?いや…ていうより、あの声でみんな美九のことが好きになるから、美九の周りには、悪い事を悪いって言ってくれるような人がいなかったんだ。なら、俺が」
「言う必要はなかったわよね。少なくともあのタイミングでは」
「うぐっ…」
士道の弁明の言葉を琴里呆気なく切り捨てる。その事で再び士道の胸にダメージが入る。
「確かに誘宵美九の倫理観はかなり破綻しているけどだからと言ってあんなに煽るなんて、頭大丈夫?」
「あう…」
「好感度が下がらなかったのが不幸中の幸いね。だけどそのせいで余計なことまで背負いこんじゃ意味ないわね」
「…」
五河士道、妹琴里の言葉に撃沈された。そしてそんな士道を助けてくれる者はおらず士道はただただ痛む胸を抑える事しか出来なかった。
そんな士道を憐れんだのか琴里は話題を変える。
「それにしても…。まさか【SS】、いやこの場合誘宵美亜と言った方がいいのかしら?まあ、彼女が美九と同棲していなんてね」
琴里の次の話題は行方が掴めていなかった彼女について。修学旅行明けの土曜日に一度偶然出会った一件以来再び行方が分かっていなかった。家に帰った後士道は琴里の命令で休日全てを使い再会した場所の周辺を探したが見つける事は出来なかった。
「美九と一緒の場所に住んでいる。…それも従妹と言う関係ならやっぱり誘宵美九の血縁者で間違いなさそうね。出来れば二人纏めて封印したいところだけど…」
琴里は無理と言う気持ちを込めたため息をつく。ただでさえ士道のせいでややこしくなっている美九に加え極度の選民思想を持ち美九以上に倫理観が破綻している彼女を同時に攻略など出来るはずがなかった。本来ならこの二人はじっくり時をかけ攻略していく相手。それを同時に相手など愚かでしかなった。
「幸い彼女の居場所はこれではっきりしたわ。美九さえ攻略できればそれを足掛かりに彼女も攻略できるかもしれないわ。その為にも…士道、天央祭は必ず勝ちなさいよ」
「お、おう。勿論だ」
「とは言え相手は人気アイドル誘宵美九。そう簡単に勝てる相手じゃないわ。士道の学校は、一日目のステージで何をやるの?」
「え、えっと。確かバンド演奏だったと思う」
「へぇ、良かったじゃない。得意分野で」
「へ?一体どういう…」
瞬間、士道の目の前には最も見られたくない映像が映る。中学二年生、その時にハマっていたギターの演奏である。
「あ、ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
こうして士道は自らの黒歴史をばらされつつもラタトスクのバックアップを受け天央祭に向けて特訓を開始するのであった。
「ヤン、名誉大佐殿より命令が来たぞ」
天宮市のとあるビル。鉄十字の会が日本における活動の拠点としているその場所でルーク・ヴァレンシュタインが封筒を持ちながらやっていた。
「おーおー、遂に俺たちに直々に命令が来るようになったのか。これって出世したってことでいいよなー?」
「違う。単純にここがそれだけ重要な場所と言う事だ。…ただ、そんな重要な場所を任されているのだ。そう捕えてもいいかもしれないな」
ルークはそう言いながら封筒の中身をヤンに見せる。封筒の中身は数枚の紙であり表面には『確認次第焼却するように』と書かれている。
「…へぇ、これは」
ヤンは内容を確認すると笑みを深める。その表情はまるで新しいおもちゃを手に入れた子供の様な表情をしていた。
「中身の通りだ。何時でも動けるように準備を怠るな。それとここも廃棄し拠点を別の場所に移す」
「はいよー。…所で兄ちゃん。あれの調子はどうだ?」
「きわめて好調、と言ったところだ。まさかあれほど適合するとは私も思わなかったよ。あれならいずれ大尉殿にも勝るとも劣らない駒になってくれるだろう」
「そうなりゃ真っ先にあの餓鬼にぶつけようぜ。あの餓鬼の絶望する顔を想像するだけでたまんねーぜ!」
「…それもこの作戦で彼が逃げ切れたらだ。私たちが動く以上或美島の様な失敗は許されない。良いな?」
「勿論だぜ、兄ちゃん」
ルークの言葉にヤンは笑みを浮かべて答えるのであった。
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