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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第三十八話「ある日の一時」

「なぁ、五河。恋って…良いよな」

「何を言っているんだこいつは?」

まるで薬をキメている人の様に恍惚とした表情で話す殿町宏人に安田圭一は呆れた声で言う。

「…いきなり何だってんだよ」

呼ばれた士道は鬱陶しそうにしているが殿町は気づいていないのか興奮した様子で話す。

「俺…運命の出会いを果たしてしまったかもしれん」

「ん?なんだ、二次元でいい娘を見つけたのか?」

「いや、違うと思うぞ」

「実はな、一昨日の放課後なんだがな。すっげぇ俺好みの女の子に出会ってしまったわけだ」

「ほう」

「へぇ」

「男子トイレで」

「ぶふ…っ!?」

「はぁっ!?」

殿町のカミングアウトに士道は吹き出し安田は思わず聞き返す。本来なら男子トイレに女子がいる事に対する反応と思えるが約一名、士道だけは違っていたが幸いなのかその事に気付ける人物はこの中にはいなかった。

「その反応も良くわかる。だが本当なんだ。男子トイレの中で俺を待ち伏せしてたんだ」

「待ち伏せはしてねぇって!」

「え、そいつ物好きか?」

「うんにゃ、間違いない。だってあの子、俺の名前知ってたんだぜ?」

「いや、だからって…」

「そもそも何で男子トイレで待ち伏せするんだよ?痴女か何かか?」

あいつみたいに、と安田は士道の隣の席を親指で刺す。そこは鳶一折紙の座っている場所で当初はミステリアスな雰囲気を醸し出していた折紙も士道の事に関しては痴女とも言える行動をとるため安田にはそう思われていた。

「マジで運命を感じたね。俺と二人っきりになりたいからって、人気のない校舎奥のトイレで待ち伏せしているなんて。名前くらい聞いておけばよかったな…」

「…あ、ああ。そう…」

「で?そいつってどんな見た目してるんだ?」

「五河くらい背がスラッと高くて、五河ぐらいの体格で…でもって初対面だってのに長い事一緒にいたような気安さがいいんだよ。…そうそう、まるで五河みたいな感じだったな」

「「…」」

殿町の言葉に二人は黙り込む。片方は気づいていて態とやっているんじゃないか、と疑い片方は殿町は士道に気があるのか、と全く別々の事を考えていた。

そこへ、士道が立ち上がり教室のドアへ向かう。

「ん?なんだどこか行くのか?」

「お前が推薦してくださった実行委員だよこんちくしょう」

「ああ、そう言えば選ばれていたな。皆から推薦を受けるとか…。士道、お前って人気者だな」

「安田、お前分かってて言っているだろ」

あんな敵意が込められている人気者などなりたくねーよ、と言い実行委員へと向かって行った。

「ふ、期待しておけ、今年は皆本気だからな。表彰台に上げてやるぜ」

「去年竜胆寺のブースに行った奴が何言ってるんだよ」

殿町の言葉に安田は苦笑しながら突っ込む。士道が教室を出て行き暫く経った頃そう言えば、と思い出したように安田が呟く。

「知ってるか?竜胆寺にまた転入生が来たらしいぜ」

「本当か?またこんな中途半端な時期に来たな」

「実際に来たのは夏休み前らしいがな。そして、聞いて驚くなよ。そいつはなんと美九たんの従妹らしい!」

「何!それは本当か!?」

「ああ、しかも美九たんに負けず劣らずの美少女らしいぞ」

「くぅ~!一目でいいからみてみたい!」

「いや、結構簡単に会えるかもしれないぜ。休日は偶に目撃情報があるからな。これがその写真だ」

そう言って安田はスマホから一枚の写真を見せる。そこにはクールビューティーと言う言葉が似合いそうな美少女が映っており日本人離れしたその美少女はモデルをやっていても不思議ではなかった。

「こ、こんな美少女なのか…!」

「ああ、何でもハーフらしくてな親のどちらかがヨーロッパ系の人らしく最近ここに引っ越してきたらしい」

「これで竜胆寺の顔面偏差値が上がったな」

「幸いと言うべきか悲しむべき何かやると言う情報はないからな。恐らく来たばかりだから慣れる事を優先したんだろう」

「…この人に、接客されたい」

「おーい、さっきお前が言っていた娘はいいのかよ」

「はっ!そうだった!俺には名前も知らない娘がいるんだった!」

「お前の妄想じゃなければな」

「そんなわけあるか!俺はこの目でちゃんと確認して実際に話したんだぞ!」

「分かった分かった。そうがなるな。そうなにいうなら探して実在するって証明してくれよ」

安田の言葉に殿町はピタッと停止する。

「…そうだな。そうだよな!ここで話していても意味がない!安田、悪いが俺は早速あの子を探しに行ってくる!」

「おう、気を付けろよ~」

あっという間に駆け出していく殿町に安田は軽くエールを送るのであった。
 
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