デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第三十六話「突然の再会」
前書き
10月最初の投稿で~す
美九の家のとある一室では何とも言えない空気が漂っていた。
「美亜さん、紹介しますね。彼女は五河士織さんです。士織さん、こちらは私の従妹の誘宵美亜さんです」
「は、初めまして。五河士織です…はい」
「…誘宵美亜です。よろしく」
満面の笑みを浮かべる美九とは対照的に紹介されあった二人には何とも言えない空気が流れている。士織と呼ばれた少女は緊張と同時に何でと言う疑問が見て取れ彼女はその正体を知り軽蔑とも取れる視線をしていた。
「それじゃ私はちょっと準備してくるので美亜さんと士織さんは先にお喋りしててください」
「あ、ありがとう」
「…」
そう言って部屋を出て行く美九。それと同時に部屋は静寂が支配し二人、特に士織の方の空気が重くなる。士織はこの状況を何とか打開したいと考えをめぐらすが緊張と混乱から何も思い浮かばないどころか余計な混乱を引き起こしていた。
だが、そんな空気も彼女の言葉で一気に変わる。
「…で、何故そんな恰好をしている。五河士道」
「うっ…」
士織、女装した五河士道は彼女の問いかけに喉が詰まる。彼女の瞳にはほんの少しの敵意と共に変態を見る目で見ておりその視線に士道は呆気なく撃沈した。
「じ、実は…」
「大方、誘宵美九を精霊と分かったから封印する為に来たのだろう?女装をしている事から美九の男嫌いは理解しているようだな」
「…そうです」
「だが恐れ知らずだな。もし男だとバレたらどうするつもりだ?様子から察するにかなり気に入られているようだな。それが男だったと知ったらきっと大激怒するだろうな」
「…」
「最悪の場合消される可能性もある。実際、程度も状況も違うとはいえ前に一度男を半殺しにしていたからな」
「…」
「幸い美九は小隊に気付いていないようだ。…まあ、そもそも気付いていたら喋らないし家には入れないだろうからな」
「…」
彼女の言葉に士道は顔を真っ青にして聞いていた。自分がいかに危険な橋を渡っているのか理解したのであろう。
「…ああ、そう言えば私用事があったのを思い出したわ」
そう言って彼女は席を立つ。瞬間士道の顔は行かないでと言う表情が浮かぶもそれを彼女は無視して部屋を出る。瞬間、お茶や菓子を持ってきた美九と遭遇する。
「あれ?美亜さんお出かけですか?」
「ええ、少し用事を思い出して。ごめんなさい、本当なら一緒にお茶会をするはずだったのに…」
「全然かまいませんよー。士織さんがいますし美亜さんはゆっくり用事を済ませてきてください」
「…ありがとう。美九」
そう言って彼女は美九の頭を撫でる。「えへへ」と口からこぼれつつ美九はそれを嬉しそうに受ける。美九の髪を優しく解くように暫く撫でた彼女は手を離す。一瞬名残惜しそうな表情を美九はするが士織を待たせることを思い出した様で外に出て行く彼女を笑顔で見送るのであった。
「(精々美九に正体がバレないように気を付ける事ね。まあ、封印した後も隠し通せるとは思えないけど…。士道って案外抜けているわね)」
そんな事を思いながら彼女は天宮市の中心街へと向かって行くのであった。
「…で、何でそうなったの?」
家に帰ってきた彼女を出迎えたのは若干の不機嫌な様子の美九であった。その様子から士道の女装はバレなかったのだろうと予想できると同時に何かあったのだろうと推測した。
そして結果が以下の美九の言葉の通りである。
「実は―、士織さんと天央祭一日目の最優秀賞を取った方が相手の言う事を聞くと言う内容で勝負する事になりましてー」
「?それはつまり美九がステージに立つと言う事?」
「ピンポーン!正解ですぅ。本当はゴミ虫共に私の歌を聞かせたくはないですがぁ、士織さんを手に入れ…コホン。士織さんに言う事を聞かせたくて仕方なくですぅ」
「ほとんど本心が出てたよ。…それにしてもそんな勝負、美九が圧倒的に有利じゃない。よく士織?は受ける気になったね」
「…まあ、あちらには譲れない何かがあったみたいですから」
「何か、ねぇ」
士道としても美九の霊力を封印できる機会はこれを逃せば当分ない可能性があり圧倒的に不利とは言え受ける事は必然と言えた。
「その他明日から早速皆にお願いをしてきますね。寂しいですが美亜さんは先に帰ってよろしいですよ」
「そう?なら私も当日は美九の歌を聞きに会場に足を運ぼうかしら」
「あーん。美亜さんになら何時でも私が歌ってあげますよぉ!」
「ふふ、それはまた今度ね。今日はもう遅いし、ご飯にしなきゃいけないから」
「むぅ、そうですかぁ。残念ですぅ」
美九は今すぐにでも歌いだしそうな勢いだが時間は六時を回っておりそろそろ夕食の時間であったため不承不承ながら頷く。
「(天央祭一日目は音楽がメイン。…美九に圧倒的に有利な展開で士道は何処まで食いついて来れるかな?)」
彼女は心の中でそう呟く。しかし、その声の中に士道に対する確かな興味があった事は彼女は気づくことはなかった。
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