デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第三十四話「決意」
「成程、【ベルセルク】も封印されたか」
南米ブラジル、その上空を飛行する空中戦闘艦ビスマルク。その艦橋内にてモンティナ・マックス名誉大佐はとある映像を見ていた。或美島の森林部にて映るのは裸の美女二人と青年の姿。霊力を封印された直後の【ベルセルク】八舞耶俱矢と八舞弓弦と五河士道である。
一件すればそういう場面にすら見えるこの映像をモンティナ・マックスは楽しそうに眺める。
「これで確認出来ているだけで【プリンセス】、【ハーミット】そして【ベルセルク】が彼によって封印されています。そして【ナイトメア】についてはいつも通り行方知れず、あの時現れた【イフリート】もあれ以来行方が分かっていません。【SS】もあの一件以来全く行動の形跡がありません」
モンティナ・マックスにそう報告するのは鉄十字の会にて准尉の地位を得ているルーク。ヴァレンシュタインである。弟であるヤン・ヴァレンシュタインと共にアジアを中心に暗躍している者である。
「ご苦労!これで11の精霊の内確認できているだけで3つ、封印された事になる。…いや、この際五年前以来姿が見えなかった【イフリート】も封印されていると考えるのが正しいか。そうなれば既に三分の一はラタトスクの手にあるわけか」
モンティナ・マックスは心底楽しそうに呟く。艦長の席に座りモニターに新たに映し出された鉄十字の会が確認できている6人の精霊。全員が見目麗しい少女たちの姿は一種の神秘すら感じるほどであった。
「さて、そろそろご帰還するとしようか。さっさと帰還しなければ我が家で首を長くして待っているご老人方の首が戻らなくなってしまう」
そのジョークに艦橋にいた者たちが笑う。一人が代表し「それは早く帰還しなければいけませんな、名誉大佐殿」と言う。
「目標ジャブロー『豹の巣』!」
「「「Jawohl!」」」
モンティナ・マックスの言葉に艦橋にいた者たちは一斉に動き出す。やがてブラジル上空を飛行していたビスマルクは針路を変え基地へと帰還していく。
「…それと、お耳に入れておきたい事が」
少ししてルークが再び発する。その表情は先ほどの報告時と比べいささか眉が寄っていた。
「まだ正確な情報と言えませんが天宮市AST駐屯地にDEM社の戦闘部隊が配属される様です」
「ほう、それが本当だとすればかの地は益々の混沌と化すだろう。…規模は?」
「一個分隊ないし二個分隊。表向きは駐屯地の補充要員としているようですからこれが精々かと」
「成程、しかしそれで精霊が倒せるのなら彼女たちも苦労していないだろうに。いや、意外と目的はそうじゃない可能性もあるな」
「と、申されますと?」
「前回は【プリンセス】の捕縛だったが我らに妨害され失敗。とは言えその時に彼の力を見ていたら?」
「…成程、それなら納得が行きます。精霊の力を使えるかもしれない。彼らが動くには十分な動機でしょう」
「それなら我らもうかうかしていられないな。至急帰還し老人方と会議だ」
「…なんだぁ?ようやく決めたのか?」
天宮市のとあるビルの一室。薄暗いその部屋では一人の男が客人を出迎えた。…とは言え男の態度は悪くソファにどっしりと座り足を組むと言う出迎えとは思えない態度であったが。
「…」
「ったく、兄ちゃんは今は留守にしてるぜ。何せブラジルまで態々大佐殿と一緒について行っちまったからな」
「…」
「あ?はいはいはい。分かってますよー。兄ちゃんの言う通り精霊を殺す力は手に入れられるぜ?折紙ちゃんよー」
男、ヤン・ヴァレンシュタインは客人である鳶一折紙にそう言った。折紙がここに来た理由はただ一つ。精霊を殺せる力を得るためだ。
ルークに誘われ内容を聞いた折紙は一度頭を冷やした状態で考えるために一月近くの時を用いた。その結果は今の状態が示している。
「生憎兄ちゃんが帰って来るのは九月になってからだ。兄ちゃんがいなきゃあれは出来ないからな。別に俺っちがやってもいいけど、失敗はしたくないだろ?」
「別にそう睨むこたぁねぇだろ。お前の意思が決定した以上兄ちゃんが帰ってき次第手術を行い、おめぇは力を得られる。それでいいだろ?」
「安心しろよ。例え俺たちが殺されたとしてもお前が願う限りいつでも遣いは来る。何一つ心配する事なんざねぇよ」
「分かったらいったん今日は帰れ。連絡はいつも通りに。その時は自らの価値観が一変するからな。楽しみにして置けよ」
ヤンはそう言うと折紙を扉に誘導する。折紙も特に抵抗する事なくそれを受け入れる。
精霊を殺せると言う期待と興奮を胸に抱きながら。
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