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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第三十二話「問答・前編」

「…はぁ、修学旅行は散々な目に遭ったな」

五河士道はぐったりした様子で両手にスーパーのレジ袋を持っている。DEM社と鉄十字の会による襲撃があった修学旅行後の初の休日、士道は足りなくなった食材の書いた詩の帰りであった。

あれから琴里に様々な事を教えられた。鉄十字の会やDEM社について。そして今後両陣営の介入がある可能性も示唆された。とは言えそれらの介入があろうと士道による精霊の霊力封印の役目は変わらないのだが。

「取り合えず必要な物は買ったしそろそろ帰るか…おっと」

「…きゃ」

両手にもったレジ袋いっぱいに食材を買い込んだ士道がスーパーから出て商店街を歩いていた時たまたま目の前から歩いてきた人とぶつかる。人混みがありかつ目の前の人が小柄だったため士道からは微妙に見えていなかった。

「す、すいません。よそ見しちゃって…て」

「い、いえ。こちらこそ…」

「「…」」

士道はぶつかった人を見て固まる。対する相手、士道と同じくらいの歳の銀髪碧眼の少女も士道の顔を見て固まる。

何故ならそこにいたのは服装こそ違うが屋上の一件以来行方が掴めていなかった【SS】の姿があったのだから。







「(…なんで、こんな事になったのだろう…)」

ファミリーレストランの一角、店の奥で且つ、周りからはあまり見えない場所に彼女は座り目の前にいる男、五河士道の姿を見て何度目とも知れない呟きを心の中で吐き出す。

未だに誘宵美亜として美九の家にいる彼女は数少ない一人に慣れる時間で街を歩いていた。しかし、その結果が今の状況であり彼女としては自分の不運を呪わずにはいられなかった。

「(前の一件(折紙の壁ドン)と言い何で貴重な時間にこんな目にあうのやら)…それで?私をここに連れてきて一体何の用?」

「え、えっと。それは…」

しどろもどろになる士道に彼女はいぶかしげな目を向けるとやがて思いついたのか蔑むような視線で士道を見る。

「…まさか、強姦?」

「違う!」

何でそうなる!?と言わんばかりで士道は大声を上げるがここはファミリーレストラン。それも休日で昼過ぎとは言え中にはそれなりに人がいる。よって…

「…あ、すいません」

何事、と言わんばかりの視線に気づいた士道が必死に頭を下げる事となった。

「…まあ、冗談は置いておいて」

「あ、冗談だったんだ。よかった」

「当たり前じゃない。強姦なら連れ込むのはファミレスじゃなくて車か裏路地でしょう?」

弄ばれたと気づいた士道は苦笑いを浮かべるが彼女は真剣な表情で再び問う。

「…で、結局何の様なの?私はこう見えてあなたに私の大切な時間を取られているのが凄く嫌なんだけど?」

「…そ、それは。…あの屋上以来全然姿が見えなかったから少し心配していたんだ。…傷の方は大丈夫か?」

「…心配?」

士道の思いがけない言葉に彼女はきょとんとする。やがて気を取り直した様で直ぐに何時もの表情に戻る。

「別に、あのくらいなら直ぐに治るわ。私、精霊だけど少し特殊だから」

「そ、そうなのか。よかった」

「は?何であなたが喜ぶの?意味が分からないんだけど?」

「いや、だって。あんなに怪我していたんだから心配するのは当然だろう?」

「…そう」

彼女はまだ納得しているとは言い難かったが追及する気はないらしく一言で片づける。…そこへ、料理を持った店員がやって来る。

「お待たせいたしました。スペシャルハンバーグランチです」

「あ、それ私のです」

店員が運んできたのは士道から見ても巨大なハンバーグ。恐らく普段士道が食べるハンバーグの倍以上の量を持っているだろう。それを目の前の彼女は注文したと言う。

「…本当にそれを食べるのか?」

「ええ。何せ貴方の(・・・)奢り(・・)なんだもの。好きなだけ食べさせてもらうわ」

「そうか、俺の奢り…奢り!?」

彼女の言葉に再び士道は声を上げる。彼はてっきり自分のお金で食べている物だとばか思っていたからだ。そんな士道に彼女は「何を驚いているの?」という顔をする。

「無理矢理ファミレスに連れ込んだくせに食事の一つも奢らないの?随分と傲慢な人ね」

「い、いや。そういう訳じゃないんだけど…」

士道はそう言いながら財布を確認する。先程買い物を済ませたばかりであり財布の中は少し心もとない状況だった。一応、二千以上するスペシャルハンバーグランチなら払う事は出来る位には持っていたが。

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…ダメ?」

「…ワカリマシタ」

無言の攻防の末士道の財布からお札は消えるのであった。

余談ではあるがスペシャルハンバーグランチを余裕で完食した彼女は追加のお代わりを頼もうとして全力で士道に止められていた。

その大食い精神から士道は十香を思い出したとか。
 
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