デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第三十一話「戦後」
「あちゃー、グラーフ・ツェッペリンⅡ落ちちゃったよ…」
「…」
迎えを待っていたシュレディンガー准尉と大尉は爆発や火災をあげながら海に落下するグラーフ・ツェッペリンⅡを見ていた。シュレディンガー准尉は勿体ないと言う表情で、大尉は相変わらずの無表情で見ていたがやがてシュレディンガー准尉が「しょうがない」と懐から通信機を取り出す。
「えーと、確かこれをこうして、これをこうすれば…よし、つながった!」
シュレディンガー准尉はつながった事に喜びながら向こう側の言葉を待つ。
『…准尉かね?』
「そうだよ~」
やがて一人の男の声が聞こえてきてシュレディンガー准尉はそれに同意した。
『どうやらグラーフ・ツェッペリンⅡは落ちたみたいだね』
「あれ?もしかして気付いてた?」
『勿論だとも。あの老害が艦長を務める艦だ。今じゃないいつかあの艦は落ちていた。たまたま今日だっただけだ』
「なら迎えを早く寄越してよ~。このままだとこの島でサバイバルになるかもしれないよ?」
「…その心配はない」
瞬間先ほどまでの通信相手の声がシュレディンガー准尉の後方から聞こえてくる。シュレディンガー准尉が後ろを見れば通信相手、モンティナ・マックス名誉大佐の姿があった。
「あ!少佐~!ごめんね。作戦、失敗しちゃった♪」
「構わないとも。彼の周りには精霊がたくさんいる。今日も一人は近くにいた。それでは捕縛は難しいだろう」
「いや~、それなんだけど実は…」
シュレディンガー准尉は士道の起こした出来事を包み隠さず話す。その報告を聞いた少佐は笑みを浮かべた。
「成程、ここで彼が覚醒するとは。意外とまではいかないにしても想定外だな」
「まあ、直ぐに大尉にボコられていたけどね」
「それはそうだろう。彼はつい最近まで精霊の存在を知らなった一般人だ。むしろ大尉の腕の落とすことが出来たのを褒めるべきだろう。…それはそうと、大尉。腕は大丈夫かね?」
「…」
少佐の言葉に大尉は切られたはずの右腕を見せる。それを見た少佐は満足そうに頷く。
「さて、詳しい事は戻ってから聞かせてもらおうか」
「りょうかーい!」
「…」
少佐の言葉にシュレディンガー准尉は元気よく返事をして大尉は頷くのであった。
「…鉄十字の会が本格的に動き始めたか」
「はい、その様です」
四方を本棚で囲まれた部屋の中でラタトスクの司令、五河琴里は目の前の男の言葉に返事をした。
男はラタトスク機関の創始者であり最高幹部連である円卓会議議長を務めるエリオット・ウッドマンである。
「所属人数、拠点一切不明。目的はナチスドイツの復活と千年王国の建国。それ以外はほとんど何も分かっていない謎の組織。吸血鬼の制作を行い人工精霊の研究もしているとの噂もある。…彼らが君の兄上を狙ったのは間違いないんだね?」
「はい。目的までは不明ですが恐らく霊力の封印をしているのを知っているものと思われます」
「もしそうなら彼らの狙いは君の兄上に眠る莫大な霊力か」
ウッドマンは大変な事態になって来たと頭を抱える。彼らの目的が不透明な今今何か起きても不思議ではなかった。
「…そう言えば墜落した空中艦から何か分かった事はあるか?」
「ええ。先ず、空中艦事態の性能は先に墜落したDEM社の空中艦やフラクシナスより上です。そのうえで大量の武装を持っている事から戦闘艦であると思われます」
「…これが一隻二隻ならいいが十隻、ニ十隻となるとかなりの規模の組織になるな」
「…そして、乗組員ですが全員死亡していました」
「…やはり【ベルセルク】やフラクシナスとの攻防が原因かね?」
ウッドマンの言葉に琴里は辛そうに報告を続ける。
「いえ、そうとは言い切れません。何故なら全員焼死体だったので」
「…何だと?」
「付け加えるなら爆発などの外部からではなく内部から焼かれています」
その報告にウッドマンは戦慄した。情報の漏洩防止。その為だとしても全ての人間を救助することなく見捨てた事になる。
「…負けは、失敗は許されないと言う事か。五河司令、君の兄上の事もそうだがこれから様々な困難が押し寄せるだろうが決して無茶をしないでくれ」
「…分かっています」
そう返事をした琴里にウッドマンは心配げな表情で見るのだった。
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