デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第三十話「来禅高校修学旅行・Ⅹ」
激しく揺れるグラーフ・ツェッペリンⅡ。それと同時に何かがねじ込む音とそれにつづく様に爆発音が聞こえてくる。
椅子から落ちそうになるのを必死に耐えながら艦長は焦ったように叫ぶ。
「な、何事だ!」
「右舷後部に損傷!外部からの攻撃と思われます!」
部下の報告に艦長は驚く。目の前のフラクシナスはミストルティンを準備中であり未だ発射する気配はない。その為敵からの攻撃はないと思っていた。
「ば、馬鹿な!敵はまだ攻撃していないぞ!それとも新手か!?」
「いえ、今も何かが艦内に入り込もうとしています!」
「まさか敵のポッドか!なら急いで周辺に兵を…!」
「違います!これは…!」
部下はそう言うとメインモニターに映像を出す。そこには右舷の様子が映っており煙と時折見せる爆発と火災が被害の大きさを伝えていた。
そして、それらに隠れるように緑の膜、随意領域を纏った何かが艦に突き刺さ去っているのが見えた。
「な、なんだこれは…!」
「恐らく、敵の遠隔操作型の兵器と思われます」
「くそっ!そんなものまで持っていたとは…!」
「艦長!敵の攻撃が来ます!」
「何だと!?回避!回避せよ!」
部下の報告に回避をするように指示を出すがその指示を出した瞬間、二回目の揺れがグラーフ・ツェッペリンⅡを襲った。しかし、今度の爆発は大きくその揺れにより艦長は椅子から転げ落ち地面に這いつくばる様に倒れてしまう。
「被害は!?」
「主砲及び副砲部分に直撃!前面にある砲塔全て破壊されました!」
「何だと!?」
グラーフ・ツェッペリンⅡは普通の艦の様に主砲がそれぞれ前方と後方についていた。グラーフ・ツェッペリンⅡの主砲41cm三連レーザー砲は四つあり二つずつ後方と前方についていた。そして副砲もろとも前方の主砲は破壊された。これはグラーフ・ツェッペリンⅡの火力の半分を喪失した事を意味し同時に継戦能力を大きく削がれた事を意味していた。
更に凶報は続く。
「艦長!右舷側のエンジン停止!敵の遠距離操作の攻撃によるものです!このままでは航行は困難になります…!」
「おのれぇ!」
その報告をきっかけに徐々に艦体は右側がさがり始める。同時に高度を落とし始めグラーフ・ツェッペリンⅡは雲の中へと吸い込まれるように落ちて行った。
この事にフラクシナスでは歓声が沸き神無月はホッと息をついていたがグラーフ・ツェッペリンⅡの艦長たちにそんなことが分かる筈もなくフラクシナスをただ睨みつけるだけだった。
「…こうなったら残った火力で島を攻撃する!せめてもの捕縛対象をこの手で抹殺する!」
「し、しかし!」
躊躇する部下に艦長は血走った眼を向ける。
「何をしている!さっさと指示に従え!私はこの艦の艦長だぞ!?」
そう言うと艦長は懐から拳銃を取り出し発砲する。幸い銃弾は当たる事は無かったがいきなりの発砲に部下はヒッ、と小さな悲鳴を上げ艦長の指示に従っていく。他の者も同様であり攻撃の準備をしていく。
「雲から抜け次第島の中央部から攻撃を行う!目標を見つけたのならそこを重点的に!最終的には島を無くす勢いでやれ!」
「「「Jawohl!」」」
艦長の怒鳴り声に部下は委縮し指示通りに行動する。
そして雲から出た時、そこには和解した八舞姉妹の姿があった。
「…何よ、あれは」
「同意。空気を読んで欲しいです」
八舞姉妹は突如現れた空中艦、グラーフ・ツェッペリンⅡを眉をひそめながら呟く。それと同時に後部の主砲からレーザー砲が放たれ二人の近くに着弾する。
「うわっ!」
「…!」
二人は思わず目を瞑りその場から少し離れる。当初は彼女たちを狙った攻撃かと思ったがそうではないらしく空中艦は島へと攻撃を始めた。
「…あのさ弓弦」
「提案。耶俱矢」
二人は同時に口を開いた。その事にふたりは一瞬きょとんとするが直ぐにお互いの言いたいことが分かり「ふふ」と笑みを零す。
「やっちゃう?」
「同意。やっちゃいます」
二人はそう言うと耶俱矢が左手を、弓弦が右手を差し出し、ピタリと重ねた。
すると二人の霊装が合わさりやがて弓矢の様になる。二人はそれを一緒に構え矢の先を空中艦へと向けた。
そして、
『〈颶風騎士!【天を駆ける者】!!〉』
二人は同時に矢を離した。
瞬間、二人の周囲を今までとは比べ物にならない風が吹き矢は寸分たがわず空中艦に辺り内部機関を矢とそれが発する風圧で破壊しながら貫通し空へと突き抜けた。
そして、止めとも言える一撃を受け空中艦は貫通部分から巨大な爆発を起こし夜空を赤く染め或美島近海へと墜落していった。
ここに、或美島で起きていた全ての戦いは終わりをつげ三つ巴の戦いに今決着が付いたのであった。
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