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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第二十九話「来禅高校修学旅行・Ⅸ」

「おのれ!何故当たらない!」

グラーフ・ツェッペリンⅡ艦長は怒り狂っていた。目の前のモニターにはいまだ健在で浮かぶ敵空中艦(フラクシナス)の姿があった。戦闘から一時間以上経過しているが目の前の空中艦はグラーフ・ツェッペリンⅡの猛攻を全て無傷で耐えていた。

「主砲やV3の攻撃を受け何故無事なのだ!?」

「恐らく敵の随意領域(テリトリー)が強力なのかと…」

「ふざけるな!いくら随意領域(テリトリー)と言えどもこれほどの猛攻を防げるはずが無かろう!」

部下の言葉に艦長は怒鳴り声を持って返す。部下は震えあがるが言った本人も目の前の状況を現実とは認め辛かった。

彼ら鉄十字の会が保有する空中艦の中でもあの艦(・・・)に次いで強力なこの艦が武装も大して持っていない目の前の艦にいいようにしてやられているのは我慢ならなかった。

「主砲に全てのエネルギーを込めろ!敵の随意領域(テリトリー)ごと粉砕する!」

「し、しかし!それでは防御に回す分が…!」

「構わん!敵の攻撃手段は正面からの砲撃のみ!なら敵の正面に立たないようにすればいい!」

「J、Jawohl(はっ)!主砲にエネルギー充填開始します…!」

「V3も全て撃ちだせ!帰還時にはエネルギー以外全て空になるようにしろ!」

艦長の過激な指示に部下たちは戦々恐々しながら指示に従い行動していく。やがてグラーフ・ツェッペリンⅡはフラクシナスの横を取るように動き始める。その動きにフラクシナスは特に反応を見せずそれでいて警戒するような動きが見えた。

「主砲、エネルギーチャージ完了!」

「V3、発射完了!」

「よし、主砲一番から四番発射!V3も全弾撃ちだせ!」

艦長の指示に従いグラーフ・ツェッペリンⅡの全ての火力がフラクシナスへと牙を向いた。









「敵艦から発砲!更にミサイル接近!先ほどまでとは比べ物にならない数です!」

防性随意領域(プロテクト・テリトリー)展開!今から指示する通りに迅速にお願いします!」

クルーの報告に神無月は指示を出す。しかし、先ほどまでと比べ表情は硬く矢継ぎ早の支持となっていた。いくら敵の攻撃がミサイルやレーザー砲とは言え防性随意領域(プロテクト・テリトリー)で防ぐには限度があった。その為神無月はミサイルが着弾する順に防性随意領域(プロテクト・テリトリー)を展開し防ぎ次第次へと移っていく方法を取った。一歩間違えればフラクシナスはミサイルの雨によって地へと堕ちる事になるだろう。

幾つもの爆発音に振動が艦橋に響き渡る。それでいて損害があったと言うような報告はない。神無月の尋常ではない演算処理とそれから生み出される指示を的確に、迅速にこなしたクルー達の努力の賜物だろう。

「敵ミサイル沈黙!敵主砲の攻撃は未だ続いていますがミサイルは来なくなりました…。弾切れでしょうか?」

「可能性は高いですが警戒は怠らないように」

クルーの言葉に神無月はそう返す。

「…さて、そろそろ彼らにはお帰りになってもらいますか。ミストルティン発射用意!」

神無月はそういうとミストルティン発射の準備の指示を出す。その裏で必殺の一撃を貯めながら。















「…今、なんと言った?」

グラーフ・ツェッペリンⅡの艦橋は静まり返っていた。被弾によるアラームと外からの衝撃音以外は全く無音のこの中で艦長はあり得ないと言った顔でモニターに映る少年、シュレディンガー准尉の報告に聞き返した。

事の発端はつい数分前の事である。V3を打ち尽くしながらも主砲や副砲を使い攻撃を続ける艦長の元に士道を捕まえにいっていたシュレディンガー准尉から通信が入ったのである。艦長は士道を捕まえた報告で迎えを寄越せと言うものかと予想したが彼の第一声で時が泊まった。

『作戦失敗しちゃった。大尉も右腕落とされたから継戦できないや♡あ、お迎えよろしく』

そしてそれを聞いた艦長が言った言葉が上記の事である。

『聞こえなかった?五河士道の捕縛に失敗したの。それに大尉が右腕落とされたからこれ以上の戦闘は無理。だから早く迎えを頂戴』

「馬鹿な!?たかが(・・・)餓鬼一人を捕まえ損ない右腕を持っていかれたと言うのか!?」

たかが(・・・)?艦長、たかが(・・・)少年一人に態々空中艦に大尉を載せてはるばる日本(ヤーパン)まで連れ去りに来ると思っているの?』

「そ、それは言葉のあy「もし」!」

「本当にそう思っていたのなら艦長の頭は随分と緩いんだね。この位誰でも考えられると思うよ?」

「っ!?」

シュレディンガー准尉の馬鹿にした言葉に艦長は歯を食いしばる。そんな艦長をシュレディンガー准尉は気付かないのか「それじゃ、作戦も失敗したし早く帰ろ~」と間延びした口調で言い通信を切った。

「…か、艦長…」

「…くそがぁっ!」

艦長は耐え切れず拳を叩き落とす。怒りに任せてモニターに拳を叩きつけたため画面は割れノイズが走る。画面が割れた事で艦長の手は出血するがそれを気に留めない程怒り狂っていた。

「たかが准尉(・・)の分際でこの儂に逆らうなどあってはならん!」

「か、艦長、二人の迎えですが」

「そんなものはいらん!目の前の空中艦を迅速に落とし帰還する!」

「そ、それでは名誉大佐(・・・・)が黙っていないかと」

「…連中には精霊(・・)DEM社(・・・・)によって二人は名誉の戦死を遂げたとでも言えばいい。それよりも目の前の空中艦を…っ!?」

艦長が戦闘の続行をしようとした時グラーフ・ツェッペリンⅡは激しい揺れに襲われた。
 
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