魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica52事件後の顛末~Ex post fact information~
†††Sideはやて†††
最後の大隊との戦いが終わって、そして意識不明に陥ったルシル君が医務局に搬送されてから3日目の今日。私にある知らせが入った。
(ルシル君が、目を覚ました!)
シャマルから連絡を貰った私は、アインスとリインを伴って医務局へと向かっていた。診察区画から入院病棟区画に入って、ルシル君の病室へと向かう。搬送初日は集中治療区画の病室へ入れられてたルシル君やったけど命に別状はないってゆうことで、一般の個人病室に移されたのは昨日のことや。
「はやてちゃん、ここです!」
「302号室です」
「うん」
ドアの側に設けられてるタッチパネルに触れて、「お邪魔しま~す」とドアを開ける。
(ルシル君に抱きつこうか? あーでもシャマルやアイリが居るやろうしな~)
アインスとリインも居るし、あんま過剰なスキンシップは控えよう。そう考えながら室内を見て、「え・・・?」私は呆けた声を漏らした。シャマルとアイリが床に伏せてるルシル君を抱き起こそうとしてた。
「ルシル君!?」「ルシル!」
私とアインスが真っ先に駆け寄って、遅れて「どうしたですか!?」リインが側に来た。
「ああ、はやて、それにアインスとリインも来てくれたのか? はは、3日ぶりらしいなじゃいか」
なんて笑うルシル君にシャマルが「笑ってる場合じゃないわよ!」涙を浮かべながら叱った。その様子にリインがビクッてなって、私とアインスも呆気にとられた。
「な、なに? ルシル君に何かあったん・・・?」
「それが・・・」
シャマルがルシル君を見つつ言いよどんだから、代わりにルシル君が「膝から下の感覚がね、無いんだ」なんて、そんな苦笑いをしながら言うような内容じゃないことを口にして、私は「はい?」聞き返した。
「そ、それって、足が動かないってことですか・・・!?」
リインのその確認の言葉で、ルシル君の言葉がようやく頭に浸透した。口が震え始めて、「うそ・・・」そんなことしか言えへんかった。そんな私とは違い、アインスが「掴まれ、ルシル」ルシル君を仰向けにしたうえでお姫様抱っこして、ベッドの上に戻した。
「すまないな、ありがとうアインス。アイリも、布団ありがとう」
「うん・・・」
「ああ、気にしないでくれ。しかし・・・本当なのか? その、足の感覚が無いというのは」
アイリが掛け直した布団の高さをお腹の方にまで調整したルシル君は「本当だ。その所為でベッドから落ちたからな」肩を竦めてやれやれって首を横に振ると、シャマルが「本当に驚いたわよ、もう」小さく溜息を吐いた。
「すまん。・・・あ、そうだ。俺が目を覚ましたこと、もうみんなにも伝わっているのか?」
「あ、ううん。真っ先にはやてちゃんに連絡を入れたから、シグナム達にもなのはちゃん達にもまだ伝わってないわ」
「じゃあ、アイリがシャル達に連絡してくる」
「リインはシグナム達に連絡するです」
「では私がなのは達に連絡しておきます」
元気のないアイリはぐすっと鼻を鳴らして、袖で目を拭いながらトボトボと病室から出ていった。アインスとリインもそんなアイリに付き添って病室を出た。アイリの様子が私を冷静にさせてくれた。アイリ達からルシル君へと視線を戻して、「原因は判るんか?」聞いてみた。
「あー・・・そうだな、フィヨルツェンとの闘いで少しばかり魔力を消費し過ぎたようだ。アイツ、想定外の魔術を使ってきたんだよ。こちらも相応の魔術を使ったんだが・・・。おそらくソレが原因だろう」
「そう・・・か。シャマル。ルシル君の足、治るんか?」
魔力の消費が原因ってゆうなら、魔力が回復すればきっと治るとは思うんやけど・・・。ルシル君がまた歩けるようになるんかをシャマルに聞いてみる。
「精密検査をしないことにはなんとも・・・。ルシル君。コード・エイルで治すとか出来ないの?」
「待て、シャマル。おそらくとは言え原因は魔力の過剰消費だぞ? エイルの魔力でさらに悪化しそうだ」
「アインスの言うとおりかもしれない。とりあえず俺の魔力の回復を待ちつつ様子見がいいだろう」
「ご、ごめんなさい! そうよね! ・・・精密検査を行うための手続きを済ませてくるわ。はやてちゃん、アインス、リイン。少しの間、ルシル君の見ていて上げてください」
シャマルが病室を後にするのと入れ替わるように「シャルに連絡して来た」アイリが戻ってきた。アイリの話やと、シャルちゃんやトリシュたち騎士組は今から本局へ向かうと明日の仕事に間に合わへんってことで、お見舞いは次の休みになるってこと。なのはちゃん達は勤務中ってゆうこともあって、メールだけを送ったみたいや。
「みんな、心配してたか?」
「当たり前だよ。シャル達、ルシルが歩けなくなったって知ってすごくうろたえてた。すぐにでも飛んできたいって言ってたよ。ルシルからみんなに連絡して、安心させてあげると良いと思う」
「シグナム達は仕事が終わり次第、お見舞いに来てくれるそうですよ、ルシル君」
「私の記憶が正しければ、なのは達は今日みな勤務日のはずだったからメールで連絡しておいた。返信がないところを見ると、やはり今は勤務中のようだ」
「判った。ありがとう、アイリ、リイン、アインス。じゃあ早速シャル達に連絡して見みるか・・・」
ルシル君がシャルちゃんに通信を繋げる間、私とアインスとリインは室内のソファに腰掛けて、シャマルとアイリはベッド側にあった4脚のパイプ椅子に座った。
「よう、シャル。今、大丈夫か?」
『ルシル! 良かった、元気そうで!』
『ルシルさん! アイリから、足が不自由になったと聞きました! 大丈夫なんですか!?』
シャルちゃんにトリシュ、そしてルミナ、セレス、クラリス、アンジェと順繰りにルシル君を心配する声を掛けていった。ルシル君もシャルちゃん達の気遣いにお礼を言い続けた。
『それで、実際のとこどうなの? まさか、車椅子生活になるわけじゃないよね?』
「とりあえずは魔力が回復してからだな。で、エイルで治療してみる。それでダメなら車椅子だ。ま、アイリやザフィーラが居てくれるから、そんなに不便はないと思うが・・・」
そこまで言うたルシル君が私を見たから、「??」小首を傾げてると、ルシル君が少し寂しそうに「一緒に食事を作れなくなるが」って苦笑い。うちのキッチンは広めやけど、確かに車椅子が入るといろいろと動きが制限されそうや。
「あ・・・うん、それは残念や、ホンマに・・・」
ルシル君がシャルちゃんのお家にご厄介になる前は、よくルシル君と一緒に料理してた。当番制でもあるから毎日とはいかへんかったけど、それでも楽しくて、幸せな時間やった。そんな時間がもう2度とないと想像すると鼻の奥がツンとなった。
『モニター越しとはいえライバル2人の居る前で惚気とかやめーい!』
『イリスの言うとおり! はやて、ルシルさん! 割と悔しいから中断を!』
「ははは。まぁそんなことより。俺が倒れた後、局と騎士団がどうなったのか教えてくれ」
『そんなことて。まぁいいや。確かに3日も寝てたんだから気になるでしょ』
そんなわけでシャルちゃん達は、騎士団が管理局法にもう1度加入したこと、強制休職を強いられてた騎士たちが各自自由に局の仕事に戻ることが出来たことを伝えた。局と騎士団が再び以前みたいに協力関係に戻ったことになるんやけど・・・。
『クーデターが原因でもやった事はベルカ人だからね。風当たりがちょっと厳しいかも。最後の大隊に付いた騎士には、最大で除隊や罰金に懲役。これが適用されるのは、プラダマンテを始めとしたパラディンや各隊長といった団内幹部級ね。そっから下の騎士や技術室メンバーは期限付きの減給、もしくは禁固刑とか、まぁ他にもいろいろと処罰を食らってる』
『そういうこともあり、かなりの団員を失った騎士団は今、活動を縮小しています。自治領内の平和維持、そしてロストロギアの捜査と管理。領外での任務は基本せず、局より要請があれば協力しますけど・・・』
「先ほどの風当たり問題か。なるほど、騎士団の現況は判った」
ベルカ関連の話が一段落したことで「じゃあ次は、管理曲関連の話やから私やね」って話に参加。
「とは言うても、騎士団ほどの変化はあらへんけど。そやから騎士団との共同で行った各施設での捜査結果を報告するわ」
まずは大隊本部での捜査結果からを伝えた。クローンと挿げ替えるために捕らえられてた人たちはみんな無事に保護。それぞれ職場に復帰したり、今なおリハビリのために入院中やったりや。
「首謀者やったグレゴールとキュンナはさすがに局の方でも聴取することになって、すでに本局に移送済みや」
「そうか。リナルド・トラバントは?」
ルシル君の問いに私はすぐに答えずモニターに映るシャルちゃんを見ると、頷いたシャルちゃんが『殺された。プラダマンテにね』代わりに答えてくれた。それを聞いたルシル君は「大丈夫か?」シャルちゃんに気遣いの言葉を掛けた。
『っ!』
シスター・プラダマンテは、シャルちゃんにとって師匠で友人で、かけがえのない人やった。それが敵やっただけではなく、殺人を行ったってことになるとそのショックは測りしれへん。シャルちゃんは少し俯いた後、『大丈夫。大丈夫だよ。ありがとう』顔を上げて笑顔を浮かべた。
「・・・そんで、えっと、大隊に下ってた魔導犯罪者、あとフリーランス魔導師派遣会社エモーションサービスカンパニーの代表取締役、エーアスト・ルター。本名、雷光の天精アインス、以下派遣魔導師の逮捕も終わってる」
『大隊の構成員はほぼ逮捕できて冬休みも終わったから、ヴィヴィオ達、それにルーテシアとリヴィアも家に帰したよ』
「フォルセティが帰ってきて、ヴィータがホンマに嬉しそうやったわ」
私としてもフォルセティになかなか逢えへんかったから、思わず抱きしめて迎えたくらいや。
「で、本部内で見つかった聖王のゆりかご2番艦の処遇やけど・・・」
「・・・ん?」
モニターに表示された逮捕者名簿の一覧を穴が開くほど見つめてたルシル君がページを何度も切り替えてるから、誰かの名前を探してるってゆうことは察することが出来たから「どうしたん?」って聞いてみた。
「待ってくれ。1つ聞いておきたい。ミミルと、その使い魔のフラメルとルルスは捕まえられたのか?」
ルシル君からの確認に、私たちは首を横に振って否定を示した。騎士団が技術室メンバーへの聴取で得た捜査情報は、“イリュリア・クーデター事件”と呼称されることになった今回の事件の捜査に関わった部署へと寄越され始めてる。それもマリアンネさんとリアンシェルト総部長の連携によるものや。本局の最高幹部と聖王教会のトップが協力してくれるから、下も協力しやすくなってる。その情報の中にはミミルさん達が捕まったってものはなかった。
「ううん、捕まってへん・・・」
リインの誕生に力を貸してくれたあの優しいミミルさん達が、まさかガンマにあんな酷い仕打ちをしたと思いたくなかった。それだけやない。クローンを生み出したのも、自爆用のアンドロイドを造ったのもミミルさん達・・・。
『うん。ミミルさんが大隊の技術主任として迎えられていたって話は、技術者たちの聴取で明らかになったけど・・・。でも大丈夫じゃない? 技術者として放置するのは確かに危ないけど、ミミルさんの家はすでに家宅捜査されてるし、騎士団が常駐してくれてる。それに新しく見つかった施設にも騎士や局員が居てくれてる。ミミルさんが行くところなんてもう・・・』
「いやダメだ。リアンシェルトの言葉ひとつで何を仕出かすのか判らない」
「リアンシェルト総部長?」
『アイツとミミルさんが何の繋がり?』
シャルちゃんと一緒に小首を傾げる中、胸の内では、まさか、って言葉が浮かんできてた。大隊には“エグリゴリ”のフィヨルツェンがおった。なら、リアンシェルト総部長も何かしらの協力をしてたかもしれへん。
「ミミル、それにフラメルとルルスは・・・エグリゴリだった」
「『はい?』」
「なん・・・だと・・・!」
「エグリゴリ、ですか・・・!?」
予想だにしない言葉がルシル君から発せられた。モニターの向こうに居るトリシュ達も驚きで息を呑んだのが判ったくらいや。若干フリーズしてる私たちにアイリが「間違いないよ」って言うた。
「エグリゴリの翼、エラトマ・エギエネスを発動してたし。何よりミミルが言ったんだ。本当の名前は、パイモン・エグリゴリ。イリュリア戦争時にはすでに誕生していて、戦後に起動。そしてイリュリアやベルカの技術を後世に残すために、戦場には出なかったって」
「使い魔のフラメルとルルスは、ミミルが造り出したエグリゴリだ。ベルカ崩壊時からリアンシェルトと共に行動し、管理局設立にも一役買い、技術部の最初の部長だそうだ」
次々とルシル君から発せられる情報に頭がくらくらしてきた。
「ミミルは強いのか? フラメルとルルスは・・・?」
「フラメルとルルスは、ゼフォンクラスらしい」
ルシル君の口から聞き慣れない名前が出て、心当たりのない私やリイン、シャルちゃん達が「誰?」って聞いた。答えてくれたのはルシル君(オーディンさんの記憶は受け継いでないからしょうがないけど)でもなくアイリでもない、「イリュリア製のエグリゴリです」アインスやった。
『イリュリアのエグリゴリ!?』
『あ、エリーゼ様の日記に載ってました。確か・・・ミュールとゼフォン』
「ああ。イリュリアの技術部とエグリゴリが協力して造ったものだが、ゼフォンはオリヴィエ殿下に斃され、ミュールはマイスター・オーディンと私とザフィーラで斃した。神秘カートリッジや、ルシルのドラウプニルが有れば、勝てるような相手だが・・・」
当時のことを思い返すためか目を伏せたアインスを見たリインが、同じ時代を生きた「アイリはゼフォンを知ってます?」って聞いた。
「知ってるよ。模擬戦したことだってある。当時は魔術師とか神秘とか知らなかったからね。当時のロード・ゲルトとのユニゾン中での模擬戦でボコボコにされちゃったよ」
対“エグリゴリ”の領分はやっぱり魔術師なんやって解かった。ただ、アインスの言うように魔術師が魔力を込めた神秘カートリッジ、それにオーディンさんが造ったってゆう“ドラウプニル”(以前、スマウグ戦のときに使わせてもらった)であれば、勝てるレベルなのは嬉しい情報や。
「ではミミルはどうなのだ、ルシル?」
「実際に闘ってはないから確実とは言えないが。ミミルの言葉を借りれば、ガーデンベルグ達は第1世代、自分やミュール、ゼフォンは第2世代、フラメルとルルスは第3世代だそうだ。で、ミミルの神秘は第1世代と同格と思っていいだろう」
そやからルシル君は、フィヨルツェンとの連戦を避けるためにミミルさん達を見逃したらしい。
「ミミルはお前を狙ってくるのか?」
「判らない。ただ、俺を殺害せよ、との命令を受けてはいないし、これからも発令されない、とは言っていた。だがリアンシェルトの心変わりでいくらでも覆る」
「ああなるほど。それでさっきの言葉か」
リアンシェルトの言葉ひとつで、ってゆう話。ルシル君が自分を倒しに来る前にミミルさんに命じて、ルシル君を殺害させることだって考えられる。やっと、リアンシェルト総部長との激突までルシル君も心休まるって思ってた。それやのにこれじゃあ・・・。
『とにかく、捕まってないのはミミルとフラメルとルルスの3人だけで、3人とも広域指名手配されたから、とりあえず情報待ちってことで我慢して?』
「ああ、ありがとうシャル。で、はやて。途中で切ってすまなかったが、さっきのゆりかご2番艦の話を頼む」
「うん。あ、でもこれはシャルちゃんの方がいいかな?」
『そう? 資料はほとんど共有してるから、はやてからでも問題ないと思うけど。でも、じゃあお言葉に甘えて。そっちに資料を送るね』
ルシル君の前に展開してるモニターに、今度は“ゆりかご2番艦”の調査結果が表示された。2番艦は、オリジナルの“聖王のゆりかご”より半分くらいの大きさやけど、その分小回りとか機動性が上がってるそうや。さらにはオリジナルには無かった、後方防衛のためのエネルギー砲台やレールガンが備え付けられていて、さらに無人戦闘機用の格納庫、レールガン用の砲弾やミサイルなどの生産施設も網羅。
「あと、オリジナルの駆動結晶と思しきものが発見されたんよ」
『プライソン戦役時にプラダマンテがキュンナを伴ってゆりかごに突入した際、彼女がスキルを使って強奪したってことが、技術部メンバーへの聴取で判明したの。んで、全兵装の解除、魔導駆動炉の封印を条件にあの諸島に置いておくことが、局と教会の合意の下に許可されたの。ま、完全な置物としてだけどね』
『大隊技術者の聴取や残された数多くのデータから、2番艦はオリジナルに比べてサイズが小さいとは言え造りは完全に模倣されているそうで、歴史家諸氏が大騒ぎです』
シャルちゃんとトリシュの話にルシル君は「兵器として終わっているなら、もうヴィヴィオの拉致の心配はないな」って安堵した。ヴィヴィオが狙われてた理由は、2番艦の核にするためやって聴取で判明したし、2番艦の再起動が出来へん以上はもう安全やろうね。
「ゆりかごを始めとした各兵器もようやく全てが無力化か・・・」
地上本部やミッドチルダを乗っ取った後の、正義と平和と秩序の象徴として“聖王のゆりかご”を配置しようとしてた。今回沈めたモルゲンデメリング艦隊も、戦役時に潰した航空空母や列車砲などの兵器群もすべて、ベルカを再誕させたあとの抑止力。兵器工場などで眠ってた投入前の兵器は順次解体される予定や。
『キュンナも、グレゴールがプライソンに依頼したことで生み出されたようだし。古代ベルカから続くイリュリアとの因縁も、これで終わりだと思うと嬉しい限りだよ』
それから、今のところ判明してる捜査資料や、融合騎や生き残ったクローンをどうするか教会と協議してることをルシル君に話し終えた後、ルシル君が「ベルカの地は、本当にテラフォーミングされているのか?」って聞いてきた。
聴取内容の中には、フィヨルツェンがルシル君をベルカの地で殺害し、戦域に溜まった魔力や、消失する前のリンカーコアから魔力を取り出して、それをテラフォーミング用に組んだ術式の発動に利用する、って記されてた。その逆も然りで、フィヨルツェンが負けたときは、彼女の魔力を使うことになってたようや。
『ベルカの調査は何が起きるか判らないから、まずは騎士団が行うことになったんだけど・・・。昨日行われた第1次調査で、確かに死んでいた大地に生が蘇ったって言う報告を貰ったよ。アウストラシアは王都ザンクト・ボニファティウスの土壌は完全に再生していて、再生範囲は少しずつ拡大していってるみたい』
『これは本当にベルカの再誕が叶うかも知れないと、教会では大騒ぎですよ』
『もしベルカが再生すれば、そちらに本部を移すしてもいいのでは?って話も出てきてるしね』
『でもあと何年掛かるか判らないけどね。試算だとベルカ全体が再生にするまでに200年は必要って話だし』
『私たちはもうお婆ちゃんを通り越して骨だよ、骨』
クラリスちゃんが肩を竦めると、『死ぬまでには1度行ってみたいよね』って言うたシャルちゃんに、『うん』トリシュ達が首肯した。私としても、アインス達の生まれ故郷には行ってみたいって思うてる。
『とまあ、今ルシルに伝えられる情報っていうのはこれくらいかな』
「うん。そやから今日はもうゆっくり休んでな」
「最後にもう1つだけ。これはアイリにだが・・・」
ルシル君に名指しされたアイリが「あ、うん、なに?」ベッドに寄り添った。
「俺の今後の所属はどうなるか、リアンシェルトから何か聞いているか?」
リアンシェルト総部長の独断によって局員を休職させられて、騎士団に派遣されてたルシル君とアイリ。大隊が壊滅した今、ルシル君とアイリが騎士団に留まる理由はもうあらへん。アイリがチラッとシャルちゃんの映るモニターを見やった。
(正直、私たちも知らへんから気にはなってた)
「リアンシェルトからは特に何も。強制休職させられてた騎士への休職指示は解除されてるけど、戻るかどうかは個人の意思を尊重するって話だから・・・」
「俺が局に戻るかどうかは俺次第か」
私とシャルちゃんとトリシュは、ごくっ、と唾を呑んで、ルシル君が選択する未来を待つ。座ってたルシル君は上半身をベッドに預けて、「とりあえず回復が先だな」って、局か騎士団かの選択をこの場で決めへんかった。
「ごめんな、はやて、シャル、トリシュ。アイリも、すまん。今は自分の状態を整えることを優先したいんだ」
「あ、ううん! 気にせんでルシル君!」
『うん、全然大丈夫!』
『はい! どうぞご自愛を!』
「アイリは、ルシルの選択した路を一緒に進むだけ。それが局員でも、騎士でも、ただの一般人でも変わらないよ」
ルシル君が騎士団どころか局を辞める可能性があるってことは、なんとなく気付いてた。それは寂しいけど、ルシル君の狙う“エグリゴリ”はあの2人や。1人は居場所の知れるリアンシェルト総部長。そしてもう1人は未だ行方知らずなガーデンベルク。となれば、ルシル君はもう休んでもいいとも思う。
(万全の状態で、戦って、そして勝って欲しいから・・・)
すべてが終わったら、私とシャルちゃんとトリシュで決着を付けるのもいいかもしれへんな。
この後、みんなで談笑してるところに、シャマルが検査室を確保したってゆうことで戻ってきた。車椅子に乗せられたルシル君と、付き添いとしてアイリが病室を離れたことで、私たちも解散ってことになった。
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