ある晴れた日に
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696部分:呪わしき美貌その八
呪わしき美貌その八
「酒池肉林だね」
「そういうことだ。それでハンバーグの上にはな」
「うん」
「目玉焼きを乗せるから」
「あっ、いいわね」
「そうだな」
皆ハンバーグと目玉焼きの組み合わせには笑顔になった。
「その二つの組み合わせってね」
「何か凄く美味いんだよな」
「あとチーズもいいし」
その組み合わせについても話される。
「それじゃあそれで」
「皆で食うか」
「そうね」
「ソースはオニオンだ」
佐々はさらに言ってみせた。
「楽しんで食ってくれ」
「じゃあそうするな」
「皆な」
そんな話をしてこの日は皆で食べに行く。しかしまたあの黒いポルシェが通っていた。そしてあの中にはまたあの男がいて邪な笑みを浮かべていた。
「クリスマスかな」
その笑みで呟くのだった。
「楽しい聖夜になりそうだね」
彼もまたクリスマスを楽しみにしているのであった。ただその意図しているものは正道達とは違っていた。むしろ完全に逆のものであった。
そうしてである。そのクリスマスの日だ。全員で病院に向かうのであった。
誰もがその手にそれぞれプレゼントを持っている。奇麗な紙で包装され可愛らしいリボンでくくられている。そのプレゼントを皆持っているのであった。
そうしてであった。皆それぞれ言うのであった。
「ねえ、それで」
「皆何買ったんだ?」
「何なんだ?」
それぞれのプレゼントを見合いながら話をする。そうしながら病院への道を進んでいた。
「それで買ったのは」
「作った奴もいるみたいだけれどな」
「何だ?それ」
「それで」
「まあそれはね」
その中にいる加山が言ってきた。
「内緒にしておこう」
「内緒!?」
「内緒にしろってか」
「僕達が言っても仕方ないじゃない」
だからだというのである。
「あれこれ言ってもね」
「あっ、そうか」
その言葉に最初に気付いたのは咲だった。
「そうよね。これは未晴へのプレゼントだから」
「だからね」
まさにであった。それこそが彼の言いたいことだった。
「僕達が見ても仕方ないよ」
「そうだよな、やっぱりな」
「俺達の為のものじゃないからな」
「未晴の為」
「だから」
皆そのことにあらためて気付いたのであった。
「だったら僕達が見ても」
「何の意味もない」
「そういうことね」
「だからね」
また言ってきた加山だった。
「その話は止めておこうよ」
「そうだな。じゃあ竹林にな」
「これを見せて」
「そうしよう」
「それでね」
皆加山の話に納得してからだ。そのうえで今度は正道に顔を向けた。彼も今は一同と一緒に病院に向かっているのである。背中にはギターケースが、そして手にはプレゼントが。
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