ある晴れた日に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
693部分:呪わしき美貌その五
呪わしき美貌その五
「じゃあ大丈夫かな」
「そうだよな、それだったらね」
「それで」
皆とりあえずは大丈夫だろうと思った。これで、である。そのうえでまた話す。
「ツリーを入れたらそれからは」
「どうする?」
「やっぱりすぐに飾る?」
「そうするか?」
「そうする」
答えたのは正道だった。
「俺がだ」
「あんたがって」
「すぐに?」
「そうするの?」
「そうだ、そうする」
一同の問いにもそのまま答える。
「俺一人でだ」
「あのな、それってよ」
「幾ら何でもスタンドプレーよ」
「一人でやるってのはね」
皆彼の今の言葉を聞いて優しい笑顔で返してみせた。そのうえでさらに言うのだった。
「ちゃんと僕達にもやらせてよ」
「そうだよ、皆でな」
「そうしましょう」
「それでね」
「皆でか」
正道はそれを聞いてその顔を皆に向けた。その皆にである。
「そうしろというのだな」
「どうよ、それでな」
「どうかしら」
皆はあらためて彼に問う。
「御前一人でなんて水臭いぜ」
「ツリーを買って運んだだけで充分よ」
「だからそれからはな」
「皆でね」
「そうか」
それを聞いてまずは頷く正道だった。
そのうえでまた言ってきた。その言葉は。
「それなら頼む」
「そうこなくっちゃな」
「いつもの無愛想でもいいけれどね」
「こうしたツリーとかはな」
「それでもね」
こう話していく。彼等にしてもそうせずにいられないのである。それは心の問題だった。
それで言ってである。さらに続けてきたのであった。
「それじゃあな」
「わかったわね」
「それで」
こうして皆頷き合う。これで話は決まった。
ツリーは未晴の部屋に運んで皆で飾る、これは一刻も早くであった。
そうしてだ。後はプレゼントだった。
皆はクリスマスにそれを贈るつもりだった。贈る日はその日しかなかった。
その日のことを今から考えていく。そのことの話も続けられた。
「とにかく凄いもの買わないと」
「心を込めて」
「未晴が見るような」
そういうものを手に入れようと皆必死に考えていた。
ある者はマフラーを編みある者はとにかく奇麗なブローチを探して。一人一人が必死になっていた。その中でツリーも病院に届いた。
それが届くとすぐだった。皆すぐにツリーを飾りにかかった。
置いた場所は部屋の扉の入り口だった。それを飾りながら皆未晴に声をかける。
「ねえ未晴」
「もうすぐクリスマスだよな」
「ツリーここに飾るからね」
「よく見てくれよ」
相変わらず反応のない彼女への言葉である。
ページ上へ戻る