ある晴れた日に
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692部分:呪わしき美貌その四
呪わしき美貌その四
「それじゃあそれでね」
「ツリーを飾っておくればいいんだな」
「いや、それは駄目だから」
奈々瀬はここでまた呆れることになった。その顔で彼に告げる。
「それはね」
「駄目なのか」
「それは部屋の中で飾るものよ」
それだというのである。
「だからよ。それはね」
「そうか、駄目か」
「当たり前でしょ。っていうかあんたね」
奈々瀬も呆れた声を彼女にかけることになった。結局のところだ。
「何でそんなに常識ないの?」
「常識か」
「春華も言ったけれどツリーを持ってお家まででしょ」
「そうだ」
「それが常識がないっていうのよ。ツリーってかなり大きいのよね」
「三メートルのを買った」
それをだというのだ。
「それでいいな」
「三メートル」
「やっぱりこいつ馬鹿だ」
「だよな」
今度は五人だけでなく全員呆れてしまった。流石にそれを聞いてはである。
「そんなの持って家か」
「普通はねえだろ」
「かなりね」
「あいつが喜ぶものを自分の手で持って帰りたかった」
しかしここで彼は言うのだった。
「だからだ」
「気持ちはわかるけれど」
「それは幾ら何でもな」
「そうよね」
皆こう言ってこのことにはどうしても難色を見せるのであった。
「無理があるっていうか」
「やっぱり滅茶」
「確かにな」
こう言って首を傾げさせるばかりだ。しかしここでこうも思ったりもするのだった。
「そこまで竹林が大事なんだな」
「想ってるのね」
「忘れない」
絶対といった口調で返した。
「何があってもだ」
「その心は認めるよ」
「確かにね」
「それはな」
こう言って微笑みもしてきた。
「じゃあそのツリーを病院に送って」
「未晴の病室に飾って」
「そうしてね」
「ちょっと待って」
ここでふと茜が言ってきたのだった。
「一つ気になることがあるけれど」
「気になることって?」
「それって?」
「あれよ。ツリーの大きさよ」
彼女が言うことはそれだった。
「音橋、あんたのツリーの大きさって」
「三メートルだ」
また大きさについて語った。
「それだけある」
「大きさ大丈夫?」
こう言って怪訝な顔を見せる。
「そこまで大きかったら」
「多分いける」
彼は静かに述べた。
「あいつの病室の天井もわりかし高いな」
「言われてみればな」
「そうよね」
「あの病院の病室ってね」
皆そのことに言われて気付いた。それで部屋が広く感じるのも事実である。天井の広さも部屋全体の広さに影響するのである。それは当然である。
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