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ある晴れた日に

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691部分:呪わしき美貌その三


呪わしき美貌その三

「ツリーもね」
「それなら」
「もうちょっとしたら未晴の病室の中に入れる?」
 奈々瀬が首を少し捻って述べた。
「もうね」
「そうだな。いいよな」
「それじゃあもうちょっとしたらな」
 皆も奈々瀬のその意見に頷いた。
「皆で運んでな」
「そうするか」
「けれどよ」
 ここで言ってきたのは千佳だった。
「ねえ音橋君」
「何だ」
「そのツリー今は何処にあるの?」
「俺の家にある」 
 そこだというのだ。彼の家だという。
「玄関に置いてある」
「おい、音無よ」
 春華がそれを聞いて呆れた顔で述べる。
「あんた何考えてるんだよ」
「考えてるって何をだ」
「だから何であんたの家にあるんだよ」
 彼女が今言うのはこのことだった。顔を顰めさせて言うのである。
「あんたの家から未晴の病室に行くのかよ」
「駄目か」
「ツリー持って行くのかよ。それは幾ら何でもねえだろ」
「そうか?」
「そうだよ、あのな」
 それをあらためて話すのである。
「ツリー抱えて家から歩いて電車に乗ってそっからまた病院まで歩くのかよ」
「そのつもりだ」
「できるかよ、そんなこと」
 春華は今度は口を尖らせて述べてきた。
「どんだけ迷惑なんだよ。馬鹿でかいツリー持って電車の中ってよ」
「駄目なのか」
「・・・・・・あんたある意味凄いな」
 ここまで話して流石に言葉を失う春華だった。
「それをやるつもりだったのか」
「実際に家までそうして持って来た」
 既にやっていたというのである。
「それが何か問題があったのか」
「いや、あるから」
「家まで郵送してもらうでしょ、普通」
 静華と凛が呆れながら告げる。
「それをしないって」
「本当にある意味において凄いわね」
「だからな。今度は止めろ」
 春華も呆れていたがそれでも言うのであった。
「それはな。いいよな」
「じゃあどうして持って行けというんだ?」
「送ってもらったらいいじゃない」
 咲もそんな彼に呆れながら告げた。
「それで済むじゃない」
「わかった」
 それであらためて頷く正道だった。そのうえでまた言う。
「それではだ」
「それでは?」
「送ってもらう」
 ここでそのことを決定するのだった。
「今はだ」
「送ってもらうのはそれでいいとして」
 奈々瀬は話が一段落したと見て述べてきた。
「音橋、聞きたいことあるけれど」
「何だ?」
「飾りもちゃんとあるわよね」
 そのことも問うのである。ツリーといえば飾りである。その話もするのである。
「それも」
「勿論だ」
「わかったわ」
 それを聞いてまずは安心した奈々瀬だった。そのうえでまた言うのである。
 
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