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ある晴れた日に

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686部分:日の光は薄らぎその十六


日の光は薄らぎその十六

「阪神だってな。どんだけ弱かったか」
「永遠の暗黒時代って言われてな」
「最悪だったわ」
「ホークスもね」
「ファイターズだって結構最下位になるし」
「ヤクルトだって」
「広島も」
 皆それぞれ言っていく。どのチームもそれぞれ不安を抱えているのだ。過去もある。しかしそれでも引けないものは存在しているのであった。
「それでも巨人だけはね」
「だよな、あのチームだけはな」
「絶対応援なんかするものか」
「打倒巨人」
 安保粉砕といった何もわかっていない無知に基く代物ではなかった。これはまさに信念であった。彼等の絶対の信念であった。
「まずはそれだよな」
「何があってもね」
「巨人だけは」 
 口々に言っていくのであった。
「巨人だけは倒さないと」
「あのチームさえなかったら」
「どれだけいいか」
「全くよ」
 皆が皆巨人に対するあからさまな敵意を見せる。それはもう彼等が関西にいるというだけが理由ではなかった。最早それを超えた何かがそこにはあった。
「巨人滅んだらねえ」
「球界はずっといいものになるよな」
「特にあいつ」
 一人の人間の存在がクローズアップされてきた。
「あいつ何時まで生きてるんだろうな」
「早く何処かに消えないかしら」
「全くだ」
 これも皆で言う。
「もう充分生きたんだろうし」
「あいつと北の将軍様だけは」
「どうにかならないかな」
「独裁者だしね」
「本当にね」
 こう言っていって嫌悪感を露わにしているのであった。
「あいつがいるだけでもう」
「球界は滅茶苦茶だし」
「最悪、それしか言えないわ」
 野球の話をしながらカラオケと酒を楽しんだ彼等であった。そしテ次の日もである。未晴を外に出してまた正道のギターが奏でられる。皆それを見守っている。
 また公園にいた。しかし天気が急に変わった。曇ってきたのである。
 そのまま雪が降ってきた。医師がそれを見上げて言う。
「初雪だな」
「そうですね」
 女性の看護士がそれに応える。
「今年はじめての」
「もうそんな季節になったか」
 医師はしみじみと季節を感じた。それは周りも同じだった。
「そうか。雪か」
「もう冬なのね」
「早いよな」
「そうよね」
「十二月だからね」
 ここで言ったのは明日夢である。
「もうね。気付いたらね」
「一年も終わりか」
「もうそろそろ」
「入学したのこの前だと思ったのにな」
「もう十二月か」
 こう言い合ってである。今度は恵美が言ってきた。
「クリスマスね」
「クリスマス」
「そうか、十二月だから」
「やっぱりそれよね」
 周りも彼女の言葉で気付いた。
 
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