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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica50野望潰える時・・・?~Ende der Illyrien ?~

†††Sideアイリ†††

初めてキュンナを見たとき、アイリはすぐにテウタ女王を思い出した。パーシヴァルやトリシュみたいな例もあるし、マイスターそっくりな子孫がいてもおかしな話じゃないって。でもまさか、テウタ女王の記憶やら何やらを受け継いだクローンだったなんて。

(総長・・・)

アイリやアギトお姉ちゃん、あの当時生み出された他5騎の融合騎開発を推し進めたグレゴール総長。マイスターの魔術の影響で不死性を失ったとしても、長年イリュリア騎士団の長を務めてた実力は衰えてないはず。

「リアンシェルト。ヴィヴィオ達に攻撃が届かないように結界を」

イリュリアの最期を見届けたいっていうアインハルト。そんなあの子に同行してきたヴィヴィオとイクスと、ヴィクターとジークは、護衛にとはやてが頼んでたはずのリアンシェルトが連れてきた。マイスターもそれでブチ切れしたし。

「ええ」

――天地に架かり靡く氷幕(アヴレァ・ピュッロン)――

リアンシェルトとヴィヴィオ達、そしてマイスター達を隔てるように発生するのは無数の氷の花びらで出来たオーロラだった。マイスターの心のうちに安心感が広がったのが判った。まぁ魔術だし? キュンナと総長の魔法なんて通らないだろうけど。

「ミヤビ。さくっと済ませたい。キュンナを任せてもいいか?」

「もちろんです!」

――鬼神形態顕現・土鬼降臨――

ミヤビの額から茶色い宝石のような角が2本生えた。あの色だと地を操る、攻撃と防御に全振りした形態、土鬼。ズシン、ズシン、って鋼の床に足跡を付けながらキュンナの元に歩いてく。

「ここが最期の地となるかどうか、か」

総長が頭部を護る兜を被って、完全な臨戦態勢に入った。

『マイスター。アイリは何をすればいい?』

『グレゴールはあくまで魔導師だろ? こちらも魔法で闘う。さすがにフィヨルツェンとの闘いの後で魔術師化はきつい』

フィヨルツェンはレーゼフェアより弱い。そう聞かされてたけど、マイスターも想定外だった創世結界を使われたことで、魔力の消費や記憶の消失をレーゼフェアの時以上に被った。あの戦闘から2時間も経ってない今、マイスターも結構ぎりぎりだ。

『ヤー。魔力炉(システム)への負荷が掛かり過ぎないように注意しておくね』

『ああ、それで頼む。・・・いくぞ!』

マイスターは総長と、ミヤビはキュンナと闘うため、相手の元へと突っ込む。

「魔神への恨みを、セインテストの直系である貴様にぶつけさせてもらおう!」

グレゴールの武器はソードブレイカーの大剣・“シュチェルビェツ”。マイスターはそれを警戒して、“エヴェストルム”を起動させないみたいだね。

「それは八つ当たりというものだろう?」

――知らしめよ汝の忠誠(コード・アブディエル)――

マイスターは両手に片刃剣を創り出して、振るわれる“シュチェルビェツ”を右の魔力剣で受け止めて、すかさず左の魔力剣で総長を狙いにいく。

「ふんぬ!」

――我が鎧は城塞の如し――

魔力剣の一撃をバチン!と弾く総長の光を帯びた甲冑。あぁ、そうだった。総長の甲冑ウェズンは、魔力を通せば対物・対魔力効果を高めることの出来るものだった。マイスターも今の攻防で理解したみたいだね。

「不死性などにかまけて己自身を鍛えてないとでも思ったか!」

柄を握ってない左手を伸ばしてきた総長は、マイスターの首を狙ってた。あんな大きくて太い指に掴まれたら、マイスターの首もへし折られちゃう。それを察知したマイスターは後ろに下がりながら右の魔力剣で、総長の左腕を上に向かって弾いた。

「ふんっ!」「せいっ!」

振るわれた魔力剣と“シュチェルビェツ”のジグザグな刃がガギィンと噛み合って、マイスターは即座に総長の左腕を弾いた右の魔力剣を、総長の顔の前に差し出した。

「ジャッジメント」

「むぐぅ・・・!?」

剣の形にしてた魔力の固定を解除して、一気に爆発させた。ダメージは甲冑や兜の軽減してくれるだろうけど、閃光だけはどうにもならないはずだ。案の定、「目が・・・!」ってふらついた。

『マイスター! シーリングバインドをスタンバイ!』

『おお! ナイスだ、アイリ! 発動を!』

『ヤヴォール! シーリングバインド!』

拘束した相手の魔力の生成を阻害させる、対魔導師用の反則級の捕縛魔法。総長の腰と四肢にバインドが掛けられて、甲冑が発してた光が弱まってく。このまま完全に落とせるって、マイスターもアイリも考えてた。

「我が肉体は巨神の身躯の如しぃぃぃーーーー!」

甲冑が解除されると同時、総長の体が一回りほど大きくなった。その際にバインドが弾け飛んで、自由になった総長が一足飛びで数mと後退。そしてまた甲冑を装着した。

「ふんぬ!」

振り上げてた“シュチェルビェツ”を思いっきり振り下ろした総長。剣身から放たれた剣圧はホールの床を断ち斬り、マイスターに襲い掛った。マイスターは横に飛ぶことで躱そうとしたんだけど・・・。

「ルシル副隊長!」

ミヤビに呼ばれたマイスターは、視界の端にミヤビと、ミヤビと戦っていたキュンナの姿を収めた。キュンナは分身体を4人と創り出して、ミヤビと5対1の戦闘を行ってるんだけど、その内1人がマイスターに飛び掛ってきて、腰にしがみ付いてきた。それでマイスターの回避行動がキャンセルされちゃったわけで。

「下らない真似を・・・!」

マイスターは腰にしがみ付いてる偽キュンナを、全身から魔力を放出することで引き剥がす。そして宙に浮いた偽キュンナの首根っこを引っ掴んで、迫る剣圧へと投げ飛ばすと同時に改めて回避行動に入った。

「分身体とはいえ、防御魔法ですら斬り裂く純粋物理攻撃に陛下を投げ飛ばすとは。礼節を弁えておらんようだな」

「人のことは言えないが、過去の亡霊がいつまでも現代に関わるな、という話だよグレゴール・ベッケンバウワー」

――舞い降るは汝の煌閃(コード・マカティエル)――

剣圧を回避したマイスターは光槍を200本と天井付近に展開して、「ミヤビ!」に注意するように言った後、「ジャッジメント!」号令を下した。そして一斉に降り注ぐ光槍。総長は自慢の防御力で槍の雨の中を駆け、マイスターに接近を試みた。だけど足元ばかりに光槍が連続で突き刺さるから、「むお!」すっ転んだ。

「おおおおおお!」

――鎧地拳殴――

ミヤビも土鬼の防御力を以って回避を行いながら、岩石みたくゴツゴツになった両腕による打撃で、キュンナを追い詰めてく。一時とは言え鎌騎士の頂点、ゼンゼパラディンだったキュンナを倒しそう。

「ミヤビ・キジョウ! プライソンが余計な真似をしなければ、お前も我が親衛隊の1人として迎え入れていたものを!」

――夢影――

「それはまた最悪な冗談ですね!」

キュンナは分身体を盾にして槍の雨をやり過ごしながら、ミヤビからの一撃必倒級の攻撃を躱しては反撃。ミヤビの体に分身体は何十発と拳や蹴りを打ち込んで、キュンナもデバイスの大鎌の魔力刃で斬撃を繰り出してるけど、ミヤビは斬撃に対しては多少の出血はしてるけど、打撃に関してはほぼノーダメージっぽい。

「何もかもプライソンによって滅茶苦茶だわい! しかし元はと言えば、セインテスト! 貴様らがベルカの地を訪れなければ! このような事態には陥らなかった!」

魔力を纏わせて剣身を巨大化させた“シュツェルビェツ”のぶん回し攻撃。魔力が僅かに含まれた剣圧が放たれる。床に突き立ったまま残ってる光槍を両手に2本と手に取ったマイスターは、剣圧を両手の光槍で弾きながら総長に突っ込む。

『ミヤビ。光槍(マカティエル)を爆破する。リアンシェルト。その結界にミヤビを入れてやってくれ。あと、ついでに俺も』

『ええ、判りました。キジョウ陸曹、こちらへ』

『了解です!』

ミヤビがキュンナの振るった大鎌の刃を右手で白刃取りして、左拳で「せいや!」殴りかかったけど、キュンナに届く前に分身体2人が拳を受け止めたり手首を掴んだりして、ミヤビの拳を防御。でも踏ん張りきれず、「きゃああ!」キュンナと分身体2人が吹っ飛んだ。

「ルシル副隊長! 避難完了です!」

リアンシェルトの結界にミヤビが飛び込んだのを確認して、マイスターも一足飛びで結界内に入った。そして「ジャッジメント!」パチンと指を鳴らして、床に突き立つ光槍を一斉に爆破させた。

「すごいですわ・・・!」

「あの、ルシルさん。この魔法は上級なん・・・ですか?」

「いや。中級の基本魔法の1つだ。が・・・少しばかり威力が足りなかったようだな」

ジークの質問に答えたマイスターの視線の先、白煙の中に大きな影が浮かび上がった。仁王立ちする総長と、あと・・・山?みたいなシルエットだ。

「ルシル副隊長」

「ああ。グレゴールの防御力が厄介だ。中級でチマチマ削り合っていては埒が明かない。上級で決める。ミヤビはこのまま待機。グレゴールが倒れ、キュンナが無事だった場合は、すまないが交代してくれ」

「了解しました。ミヤビ・キジョウ、待機しています」

マイスターだけがリアンシェルトの結界から歩き出て、『行くぞ、アイリ』そう言ってくれたから、『ヤヴォール!』全力で応えた。

『総長は甲冑の防御力で防ぎきって、キュンナも分身体で自分を囲って乗り切ってんだね・・・』

山のようなシルエットの正体は、分身体の山だった。分身体が消滅して無傷なキュンナが姿を見せた。総長も1度甲冑を解除して、改めて無傷な甲冑を装着。確かにこれは一撃で仕留めないと持久戦になっちゃいそう。

「其の燃ゆる眼は、罪人捕らえて裁く灼熱の牢。罪より逃れること叶わず、咎人よ、抗うことなく熾烈なる視線に穿たれ、浄化の炎に呑まれよ。それこそが汝に塗れた大罪を洗う唯一の償いゆえに!」

炎で出来た目が何十個とホール一面に展開されて、その角膜部分がギョロっと動いた。視線の先にはキュンナと総長が居て、瞳孔部分からレーザーサイトのような光線が2人に向かって放たれた。

「陛下、回避を!」

「夢影!」

分身体が十数人と創り出されて、レーザーサイトに突っ込んでった。でもレーザーサイトに当たっても何にも起こらない。そう、この術式はまだ完成されてない。今はまだ当たった箇所に小さな火の目が刻まれただけ。

「ルシリオン! 今すぐこの魔法を解除しなさい!」

「断る。ところでキュンナ。分身体はそれで足りるのか?」

天井や壁、床にまで展開されてるいくつもの火の目から放たれるレーザーサイトが1つ、また1つとキュンナと総長に当てられていって、体中に火の目が刻まれていく。そんな2人はマイスターに向かって走って来た。マイスターの側なら安全圏だって考えてのことだろうけど・・・。

炎神の牢眼(コード・バーレイグ)

マイスターが術式名を告げたと同時、キュンナと総長は足を止めた・・・というより、止められた。レーザーサイトはある意味バインドとしての効果もあるから、レーザーサイトの長さ以上の移動は出来ない。

「ジャッジメント」

そんな号令の下、ホール内の目が一斉に輝きだした。壁面側のレーザーサイトの端っこに火が点いて、導火線みたいにキュンナと総長に迫る。キュンナは「この!」キュンナから大鎌を受け取った分身体がレーザーサイトを斬ろうとするけど弾かれてる。

「おのれ!」

――我が肉体よ、内に宿りし獣を目覚めさせよ――

総長が甲冑を解除すると「うっそ・・・」目を疑う姿に変身、そして無理やりレーザーサイトを引き千切ることで迫り来てた火から逃れた。マイスターも「おい、聞いてないぞ」って仰ぎ見た。黄金の毛並みを持つ巨大な狼が居て、額には総長の顔がある。イリュリアが行ってた生体兵器研究の1つ、キメラ製造によって生み出されたキメラとおんなじだ(サイズは別格だけど)。

『不死性は消せてもキメラ化は治せなかったってこと!? ていうかアイリも、総長がキメラ化できるなんて知らなかったんだけどさ!』

『ああくそ! 俺としたことが!』

「陛下!」

火がもうすぐたどり着きそうになってたキュンナをパクッと口に咥えて、総長は思い切り首を振った。それでレーザーサイトを引き千切ることが出来たんだけど・・・ね。

「ま、もう手遅れなんだけどな」

甲冑を解除してキメラに変身したことで総長の体中に付けられた火の目は消えたけど、ドォーン!と大きな口の中で爆発が起きて、爆炎が牙を吹き飛ばした。声にならない叫び声を上げて、口から黒煙を吐きながら総長は倒れ込んだ。

導火線(レーザーサイト)を千切れば大丈夫だと思ったか? 残念。レーザーサイト――バーレイグの視線を浴びた時点で術式は完成した。まぁ甲冑を解除して、バーレイグを躱したのは良い機転だったが、爆弾と化したキュンナを口に含んでくれたのは嬉しい誤算だったよ、グレゴール」

――第二波装填(セカンドバレル・セット)――

マイスターがスッと右腕を小さく上げると、ホール内の壁面に展開されてる炎の目が再び開いて、瞳孔からレーザーサイトを照射。巨体な総長は未だに口内爆発のダメージの所為か動けず、全身に浴びて火の目マークを刻まれた。

「これで終わりだ」

「セインテストぉぉぉーーーーーっ!」

キメラの額にある総長の顔が怒りに叫ぶとキメラの口がグッと閉じて、さらに前足で口を押さえた。キュンナが今もなお口の中に居るから、キュンナだけでも護るためにそうしたんだね。

「ジャッジメント」

マイスターの号令が下されると、導火線の役割を持つレーザーサイトが燃え始めて、その火は総長に刻まれた火の目に向かう。そしてマイスターがリアンシェルトの結界に飛び込んだ直後、レーザーサイトの火が火の目に到達して大爆発。ホール内を覆い尽くすほどの蒼い炎が発生した。

「ルシルさん、これ・・・亡くなってませんか・・・?」

「非殺傷設定ではあるし、本来の威力の1/3程度しか出していないから、軽めの火傷で済むはずだ」

「これで火傷・・・? ホンマですか・・・?」

「・・・あと人によってはトラウマもあるかもな」

バーレイグの効果時間も終わったみたいで、蒼炎が音もなくスゥ~って消えてく。総長はさっき伏せてた場所から移動してなくて、四肢を投げ出してぐったりと倒れ込んでるし、額の総長の顔も白目を向いてる。

「グレゴール・ベッケンバウワー・・・。クラウスの仇・・・」

「アインハルトさん・・・」

「・・・アインハルト、君にグレゴールを討たせてやるべきだったかもしれないが、奴と君の戦力差を考えれば・・・」

「はい、解かっています。おそらく今の私の拳では、グレゴールの甲冑に傷1つ付けられず、追い詰められていたでしょう」

「そうだな。・・・本音を言えば競技選手を目指す君に、こんなルール無用の血生臭い戦闘をさせたくなかった。こういうのは局員や騎士の役目だ。・・・さて、ミヤビ。キュンナの回収も行うから手を貸してくれ」

「了解です!」

マイスターとミヤビの2人だけで結界から出て、黒煙を吐き出し続けてる総長の口へと近付いてく。そして万が一に口が閉じられることがないようにミヤビが下顎を、マイスターが上顎を右腕で支えて、左手を口の中に翳した。

――闇よ誘え汝の宵手(コード・カムエル)――

口内の影を利用して作られた触手が数本、喉の奥へと向かって行った。数秒とせずに「捉えた!」マイスターがグッと左拳を後ろに引いた。それに倣って触手も戻ってきて、触手に包まれたキュンナを引っ張り出した。

「意識を失ってるようですね。ちょっと心配でしたけど・・・」

『軽く診た程度だけど、心拍数が若干弱いけど命に別状はないみたい。総長は・・・』

総長の巨体が急速に崩れ落ち始めて、骨となった頭蓋骨の額部分から半裸な総長がドサッと床に落ちた。胸が上下してるから息はしてる。破けた上着から覗く肌は若干だけど軽い火傷気味。

『マイスター。ユニゾン・アウトを。念のためにしっかり診ておきたいの』

『判った。ユニゾン・アウト』

マイスターとのユニゾンを解除して、並べて横にされたキュンナと総長を診察。マイスターはこれまでに何度も殺人を行ってる。でもヴィヴィオ達の前で犯させられない。愛するマイスターの心を少しでも守れるように。

「・・・とりあえず応急処置は完了。これで間違っても死ぬことはないよ」

「ルシル副隊長。念のために手錠を掛けておきますね」

「ああ、頼む」

キュンナと総長を確保。それを確認したリアンシェルトの結界を解除して、ヴィヴィオ達を伴ってこっちにまでやって来た。

「イリュリアも・・・これで本当に終わりですのね・・・」

イリュリアと、シュトゥラを始めとした近隣諸国との因縁も、ヴィクターの言うように終わったんだね。キュンナと総長をジッと見てたアインハルトが「はい。永い因縁でした・・・」ポツリと呟いた。

(アギトお姉ちゃんやアイリがマイスターと出会うきっかけもイリュリアだった。今もちゃんと憶えてる。マイスターと出会った時のこと・・・)

イリュリアの融合騎として生まれ、道具のように扱われてきて、でもそこに悲しみなんてなかった。知らなかったもん。アイリ達は道具って教えられてきたんだから。でもアギトお姉ちゃんが裏切った。アイリを置いていったって恨んだ。

(そしてマイスター達と出会って、アギトお姉ちゃんがイリュリアを裏切った気持ちがよく解かった。アイリ達がどれだけひどい扱いを受けてきたのか・・・。だけどその分、マイスター達と過ごせた時間に幸せを感じることが出来た)

総長を見る。融合騎開発を進めたのは総長だから、アイリが生まれたのも総長のおかげでもある。だから誰にも聞かれないように小さな声で「ありがとう。さようなら」感謝と、もう会うこともないことからお別れを告げた。

「・・・ええ、ええ。そうです。座標は先ほど送信したとおり。・・・騎士団の方とも協力しての調査を。・・・では任せました・・・ルシリオン。こちらの施設にも調査隊を派遣するよう申請しておきました。キュンナとグレゴールの連行は・・・?」

「俺とアイリとミヤビで行う。お前の仕事はあくまでヴィヴィオ達の護衛だ」

マイスターの視線が総長たちからリアンシェルトに向いたから、アイリも倣ってヴィヴィオ達へと振り返る。

「判りました。それでは私たちは、お先に帰らせていただきます」

ヴィヴィオ達を伴ってホールの出口へ向かうリアンシェルトをを見守った。そしてドアを潜ってその姿が完全に見えなくなったのを見計らって、「はぁぁぁ・・・」マイスターが床に大の字で倒れ込んだ。

「マイスター!?」「ルシル副隊長!?」

「あー大丈夫だ。少し疲れただけだ。・・・しかし、こんなに体が気だるいのって初めてかもな・・・。起き上がる気力も湧いてこない・・・。すまない、調査隊が来たら起こしてくれ」

そう言ってゆっくりと目を閉じたマイスターを見守った。
そして局と騎士団の混成調査隊がやって来たから起こそうとしたんだけど・・・。結局、それから3日間も昏睡状態に陥って、目を覚まさなかった。 
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