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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica49王、集う~Belkan König~

 
前書き
毎年言ってますけど、田舎の年末年始・・・急がしいんス・・・。 

 
†††Sideヴィヴィオ†††

リアンシェルト少将のところで保護してもらったわたし達は、そこでルシルさんと、“エグリゴリ”っていう人――フィヨルツェンさんの戦闘を、リアンシェルト少将と一緒に見え終えた。
わたしもコロナもリオもアインハルトさんもイクスもミウラさんも、それに無限書庫探検をご一緒してくれてたヴィクターさん、番長、ミカヤさん、エルスさん、ジークさん、そしてノーヴェとルールーとリヴィも、その次元の高さに本当に驚いていた。

――なんやアレ! 魔力弾!? 弾数が恐ろしい!――

――アレはサピタルっていう下級術式ですね――

――下級・・・ですか?――

――はい。セインテストの魔法は、初代セインテストが生み出したんですけど、幼少時に作り、後の中級や上級の基礎となった下級。さらに1対多数戦を念頭において下級術式を強化した中級。そして自己強化と1対大多数戦のための上級の3種類があるんです。あともう1つ上に、一撃必殺の真技というのがあります――

――フィヨルツェンって人が言っていたようなやつだね――

――創世結界でしたっけ? 魔法ってあんなことまで出来ましたっけ?――

――厳密に言いますと、魔法体系が生まれる前に次元世界に存在していた魔術という体系にある術式ですね――

――魔術ってあれだろ? 非殺傷設定が無いガチの殺し用っていう・・・――

――1歩間違えば死に繋がる、そんな攻防を繰り広げてますのね、ルシルさんは・・・。道理でお強いはずですわ――

(ルシルさんの全力を初めて見たわたしは、黙ってルシルさんの闘いを見届けてたリアンシェルト少将をチラッと見てみたんだけど・・・)

あんなにすごかったルシルさんを見ても、まったく表情を変えなかった。リアンシェルト少将も、フィヨルツェンと同じ“エグリゴリ”っていう人の形をした魔術の兵器で、いつかはルシルさんと殺し合いすることになる・・・。

「そのような目で私を見ても、これからの事に変わりは無いですよ、ヴィヴィオ、フォルセティ」

フォルセティもわたしと同じ気持ちだったみたいで、リアンシェルト少将を睨んでた。歴代のセインテストの人たちや、ルシルさんの家族も殺害したっていう“エグリゴリ”の1人。フォルセティにとっても、お祖父さんやお祖母さんや伯母さん達の仇でもあるから、顔を合わせるなり警戒してた。

「お父さんは絶対に負けない」

「フォルセティ。希望を持つことは悪くはないですが、常に最悪の結果というものも覚悟していなさい。いざという時、絶望で自分を見失わないように、大切な人の手を離さないように」

リアンシェルト少将はそう言ってフォルセティの頭を撫でてると、通信が入ったことを知らせるコール音が部屋に鳴り響いた。リアンシェルト少将が「少し席を外します」わたし達に一言断ってから部屋を出て行った。

「ふわぁ。さすがにもう眠くなりますね・・・」

「もう0時過ぎてっからな~」

「それに昼間も大変だったからね」

「ファビアやね。いろいろあったけど、ウチとしてはええ日やったよ? ご先祖様の事をたくさん知れたからな~」

「あの子の魔女術はもう懲り懲りですわ」

あくびをするエルスさん達に「リアンシェルト少将に、もう休むと伝えましょうか・・・?」わたしは聞いてみた。宿舎の寝室は3人1部屋なんだけど、リアンシェルト少将の護衛の下でここに居るから、複数の部屋に分かれるなんていう護衛がし辛くなるようなことを相談なしでしていいわけない。

(狙われてるのがわたしとフォルセティとイクスの3人としても、どこの部屋にわたし達が居るか判らない以上、他の部屋に誰か侵入してくるかもしれない。それはきっと危ない事だ)

そう判断しての提案をしたところで、「お待たせしました」リアンシェルト少将が戻ってきたから、「あの・・・」そろそろ休みますってことを伝えようとした。

「朗報です。最後の大隊の壊滅に成功したと連絡が地上部隊、聖王教会のマリアンネ聖下より入ったそうです。大隊の中核メンバーである騎士団員キュンナ・フリーディッヒローゼンバッハ、そしてグレゴール・ベッケンバウワーの両名は逃走中ですが、ルシリオン調査官とミヤビ・キジョウ陸曹の2人が、逃走先と思われる場所に先回りするとのことです」

リアンシェルト少将の口から聞かされた最後の大隊のメンバーの名前に、わたし達みんなが「っ!」ハッとした。

「フリーディッヒローゼンバッハってさ、イリュリアの王族の名前だろ?」

「テウタって女王と、キュンナって騎士もそっくりだったし」

「グレゴール・ベッケンバウワーも、クラウスを斃したイリュリアの騎士団長だね・・・」

「いやでも、古代ベルカから何百年って経ってるやろ? そこまで長生き出来るん?」

「グレゴールに関しては出来ると思うわ。彼は当時から不老不死の体を持ち、イリュリア戦争後は行方を晦ませていたそうなの。今日まで生き残っていても不思議ではないわ」

みんなの視線がアインハルトさんに向かう。イクスの家で見せてもらったアインハルトさんが受け継いだクラウス殿下の記憶の中で、クラウス殿下がグレゴールに討たれたシーンを見た。顔を青くしたアインハルトさんは深呼吸をして、「あの・・・!」リアンシェルト少将に向き直った。

「私を、その逃走先という場所に連れて行ってくださいませんか・・・!?」

アインハルトさんのまさかのお願いに「えっ!?」わたし達は耳を疑った。

「危険ですよ? それでも行きますか?」

「見届ける義務があると思うんです。古代ベルカより続く、この血統の末裔として・・・。イリュリアの最後をちゃんと・・・! ですからお願いします! 何かあっても自分の身は自分で守りますので・・・!」

胸の前でギュッと握り拳を作ったアインハルトさんの懇願に、リアンシェルト少将は何も言わずにどこかに通信を繋げた。モニターを展開しないままでの通信だから、相手の人の声は判らない。

「・・・少し本局を空けるから車を手配してくれる?・・・ええ・・・。大きさ? 少し待って。行くのはアインハルトだけでいいのですか? 最大で5人連れて行けますが・・・」

そう聞かれたけど、ちょっと迷いがあった。アインハルトさんが抱いてる因縁を、オリヴィエの記憶を受け継いでないわたしは持ち難くて、それに危ないって言われた。なのはママやフェイトママのことを思うと、わたしも行くって即決できなかった。でもアインハルトさんだけを見送れるほど薄情でいたくない。

「(ごめんなさい、ママ)あの、わたしも一緒に行きます!」

「私もお願い出来ますか? 雷帝ダールグリュンの末裔として、アインハルトと同じく見届けたいのです」

「私もお願いします! すでに王としての私はいませんが、それでも冥府の炎王イクスヴェリアの最後の勤めを果たしたいです!」

「ならウチも! イリュリア関連はご先祖様の因縁でもあるし、ウチ自身にはそこまで強い気持ちもあらへんけど、ヴィヴィちゃん達を護るって約束をしたからな」

アインハルトさん、わたし、ヴィクターさん、イクス、ジークさんが名乗りを上げた。

「ま、いいんじゃねぇか? ベルカに関係してんのお前らだけだし」

「フォルセティ君は一緒に行かなくていいんですか?」

「お父さんが向こうに居るんなら、僕がいなくても良いような気がして。それに、あなたも一緒なんですよね、リアンシェルト少将?」

「ええ。私がこの子たちの側に付いています」

「ならいいです。ヴィヴィオ達のことお願いします」

リアンシェルト少将への敵意を潜めて、フォルセティが頭を下げた。リアンシェルト少将は頷き返して、通信相手に車の種類を伝えてから通信を切った。そして「では外で車を待ちましょう。近くのトランスポートから向かいます」って部屋の出口に向かった。

「じゃあちょっといってきます!」

「気を付けてね、ヴィヴィオ」

「うん!」

そうしてわたしとアインハルトさんとイクス、それにヴィクターさんとジークさんは、リアンシェルト少将と一緒に宿舎を発った。

†††Sideヴィヴィオ⇒ルシリオン†††

フィヨルツェンとの闘いを優先したことで逃したキュンナとグレゴール。連中は追っ手もなく逃げ切れたと考えているかもしれないが、あの時の本拠地の全システムは俺が掌握していた。フィヨルツェンとの闘いに手一杯で、自分たちの会話など聞かれていない、と高を括ったのがミスだったな。

――ミッド東部はバース地区の隠れ家へ向かい、そこの転送装置より第2無人世界セラタプラの兵器実験施設へ向かいましょう――

(俺を侮ったな、グレゴール)

ステガノグラフィアからもたらされた情報の確認、つまりキュンナとグレゴールを逮捕するため、俺は施設内の調査を行うために派遣されてきた局と騎士団の混成部隊に、今持ちうる情報すべてを渡し・・・

「本当に良いのか、ミヤビ? 君とて疲れているだろ?」

「いいえ、ルシル副隊長! 今は体を動かしたいのです! それに、私の回復力はご存知でしょう? 騎士プラダマンテとの戦闘で負ったダメージもすでに全快です!」

派遣されてきた騎士団の調査隊の中にミヤビが居たのには驚いた。そんなミヤビが、キュンナとグレゴールの逮捕に同行することになった。

『じゃあミヤビ。よろしくね!』

「はい。アイリ先輩!」

で、このミッド北部の、さらに北の北に位置する島から東部へ向かう手段だが・・・。

「ミヤビ、背をこっちに向けてくれ。君を抱きかかえて空を飛ぶ」

「ふえ!? え、いや、その・・・私、重いですから・・・あの・・・」

顔を赤くしてもじもじするミヤビ。変身魔法を解いて155cmの身長に戻っている俺を見下ろす175cmという高身長の彼女に、「じゃあ背負おうか?」と提案する。

「あの、それでは胸が・・・」

巨乳と言うほどではないが、しっかりと大きな膨らみを持つミヤビの胸に視線を向けると、アイリから『マイスターのエッチ』という怒りの含まれた言葉が。

「『怒られるほどいやらしい目つきで見てないだろ・・・』じゃあリクエストはあるか?」

「っ!・・・あの、へ、変な意味はないですけど! お、お姫様抱っこ・・・とか! ご、ごめんなさい! 私、こんな大きい体ですから、憧れはしても現実では叶いっこないって! こ、この機会に一度でいいですから、お姫様抱っこというのを経験してみたく! あ、あくまで個人的なお願いですから! こ、断っていただいて結構です!」

顔を真っ赤にして涙目になっているミヤビの様子に、俺は変身魔法を発動して180cmオーバーの身長になり、「じゃあちょっと失礼するよ?」ミヤビの肩と膝裏に手を回して、横抱きに抱え上げてやる。

「ひゃわ!?」

『初めてのお姫様抱っこ、どんな感じ?』

「えっ!? えっと・・・嬉しいやら気恥ずかしいやら、です。でも・・・やっぱり嬉しいです。私のような巨女を恋人にしようなんていう男性もいないでしょうし、お姫様抱っこをしようという考えも出ないでしょうし・・・。あっ、重くないですか!?」

「軽い軽い。女の子ひとり横抱きに抱え上げられないほど弱くはないよ。それじゃあ行くか」

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

剣翼12枚と菱翼10枚を展開して空戦形態になり、地面を蹴って空へと上がる。目指すは東部バース地区の隠れ家とやら。そこで逮捕してもいいが、第2無人世界セラタプラの兵器実験施設というのも気にかかる。そこまで案内してもらってからでも遅くはないか。

「ライシエル。きっちりキュンナのデバイスを追っているな?」

『イエス!∠(^-^)』

キュンナのデバイスに潜り込ませておいたライシエルのおかげで、あの2人が今どこに居るのか判る。空を移動しているようで、その速度はかなりのもの。すでに東部に入っているため、急がないとな。

「いい子だ。いくぞ、アイリ、ミヤビ!」

『ヤヴォール!』「はい!」

宙を蹴って満天の星空の下を全力で飛ぶ。1分としないうちにライシエルから報告が入る。

『マスター。彼我の距離が5kmとなったよ。これ以上は気付かれるかも(ノ´□`)』

「判った。えー・・・この先にあるのは・・・」

『バース地区教会だね、マイスター』

この辺りのマップを頭の中で思い浮かべようとしたら、今度はアイリから教えてもらった。それが正解であることを示すようにライシエルから、キュンナとグレゴールが教会に入っていったと報告が入る。

「ミヤビ。近場で降りて、あらゆる魔法を解除した上で突入する」

「了解です!」

キュンナとグレゴールが教会に入ってから数分の時間を置いて100mほど離れた場所に降り、変身魔法などをすべて解除してからダッシュで教会に突入する。

「ライシエル。キュンナは居て、こちらに気付いているか?」

『地下に下がってる。たぶんマスター達には気付いてないかな(^◇^)』

「よし。行こう」

入り口の両開きドアを開け、グレゴールや伏兵といった存在が居ないとも言えないためクリアリングを行いつつ、祭壇までたどり着く。隠し通路といえば祭壇の真下というセオリーに従って、どこかにスイッチなどが無いかを調べる。ライシエルの話だと魔力や電力を感じないとのことで、古きカラクリなのかもしれない。だとすれば尚のことスイッチなど、カラクリを稼動させるための何かがあるはず。ミヤビと探していたそんな時、カタッと入り口の方から音がした。

「なに・・・!」

『なんで・・・!?』

ミヤビと一緒に振り返り、そして教会に入ってきた人物を見て、気配を感じ取れなかったことを含めて二重の意味で驚いた。

「リアンシェルト・・・!? それに、ヴィヴィオ、アインハルト、イクス。ヴィクター、ジークまで・・・!」

この場に居るわけがない面子がそこに立っていた。俺は驚きから怒りへと変化した感情のままにリアンシェルトの元へと向かい、「どういうつもりだ、貴様!」あの子の胸倉を掴み上げる。

「ま、待ってください! ごめんなさい! 私がお願いしました! クラウスの記憶を受け継ぐ者として! グレゴールに殺害されたクラウスの子孫として! イリュリアの最後を見届けたいと!」

「ルシルさん、ごめんなさい!」

「決して邪魔にはなりません!」

「離れたところからでいいんです! 見させてください!」

リアンシェルトの胸倉を掴んでいる俺の右手にアインハルトが手を添え、ここへ来た理由を語った。よく考えれば、オリヴィエのクローンであるヴィヴィオ、ガリアが冥王イクスヴェリア、バルトの皇帝ダールグリュンの末裔のヴィクトーリア、そして鉄腕ヴィルフリッドの末裔のジークリンデ。全員が古代ベルカ、イリュリア戦争に関わっていた人間の関係者だ。

「ルシル副隊長。どうしますか・・・?」

「・・・リアンシェルト。何があっても命に代えてこの子たちを護りきると誓え」

リアンシェルトの胸倉から手を離し、俺の手に添えられているアインハルトの手をそっと離してそう言い放つ。不死性を失ったグレゴールなど敵ではないだろうし、キュンナもテウタのクローンであったとしても勝てない相手じゃない。

「無論です。軍神と畏れられているあなたを容易く斃せるほどの私ですよ? 次元世界で私を斃せる者など存在しません。護ると誓った者は必ず護りきります」

俺に掴まれたことでクシャクシャになったブラウスを元に戻しながら、リアンシェルトはヴィヴィオ達を見て微笑んだ。今の俺ではリアンシェルトには勝てないという、反論できない内容であるため奥歯をかみ締めて耐える。

「(しかしフィヨルツェンを救い、残るはリアンシェルトとガーデンベルグの2機のみ。どの道、次はお前を相手にしなければならない)・・・ならいい。リアンシェルトの側から離れないようにな」

ヴィヴィオ達に注意すると、あの子たちは「はい!」力強く頷き返してくれた。

「では参りましょうか。キュンナとグレゴールの元へ」

「「『・・・』」」

リアンシェルトにそう促されて、俺とアイリとミヤビは無言で目を逸らした。あの子に「どうしました?」と問われ、俺たちがここで何をしていたのかを答える。キュンナとグレゴールは地下へ向かったのだが、その入り口を見つけられていないということを。

「無理やり床に穴を開けてはどうです?」

「それでトランスポートが破壊されては元も子もないだろう。それに気付かれるような真似もしたくない」

床を破壊してしまえ、というリアンシェルトに呆れの溜息1発のあとにそう答えてやっていると、ヴィヴィオ達が分かれて調べ始めた。リアンシェルトとの会話を打ち切り、「罠には気を付けてくれよ?」注意はしておく。あの子たちの「はーい!」という返事を背に聞く。

「リアンシェルト。お前との闘いは・・・」

いつがいいだろう。早い方がいいのだが、それははやて達との永遠の別れを意味する。2万年近く待ち望んでいた“界律の守護神テスタメント”から、“神意の玉座”からの解放。しかしいざとなって、こうして躊躇してしまっている。

「死にたいのであればいつでもどうぞ」

「っ!・・・くっ」

『マイスター・・・』

リアンシェルトがヴィヴィオの側に控えるように付き、一緒に仕掛けがないかを探し始めた。そして俺も改めてスイッチを探す。

『あ、マスター。キュンナがミッドから居なくなったよ!(゚Д゚)』

ライシエルから時間切れを知らせる報告が上がったとほぼ同時、「あった、見つけた!」ジークが声を上げた。バッとそちらへ振り向けば、祭壇ではなくその奥、聖王のステンドグラスにジークが腕を突っ込んでいた。

「ステンドグラスではないのね・・・!」

「立体映像で、隠し通路を隠していたんですね・・・」

『マイスター。祭壇じゃなかったね』

「・・・そうだな」

俺を先頭にミヤビ、子供たち、そしてリアンシェルトの順でステンドグラスの映像を潜り、隠し通路へと入る。一切の魔法技術が使われておらず、三つ又の燭台に立てられた蝋燭に灯る火が唯一の光源だ。通路の先には螺旋階段があり、縦穴で吹き抜けということもあり、踏み外せば奈落のそこへ真っ逆さまだ。

「フローターで降ります?」

「ライシエル」

『トラップなどは感知できず。魔法を使っても問題ないよ!(≧ω≦)b』

リアンシェルトからの提案に、俺はまず魔力使用による仕掛けが有無をライシエルに確認し、無いと判ったことで「フローター」を人数分発動しようとしたんだが・・・

「あなたは魔力を温存しておいて下さい。フローターは私が発動します」

リアンシェルトがそう言って、人数分のフローターを発動。ヴィヴィオ達やミヤビからの「ありがとうございます」に「どういたしまして」と微笑み返すあの子は、ヴァナヘイムに洗脳される前のあの子を思い起こさせる。

「行くぞ」

飛び降りる順番はこれまでのとおり俺からだ。ゆっくりと降下して、50mほどで最下層に降りられた。石製廊下を進み、両側にスライドする鉄扉を手動で開けると、そこはよく知る機械の部屋。中央にはトランスポートが1基だけ設けられていた。

「ライシエル」

『イエス! 転送履歴と転送先座標の割り出しを開始するよ!((o(>▽<)o))』

トランスポートのシステムにライシエルを潜り込ませ、キュンナとグレゴールの転送履歴を探らせる。

『第2無人世界セラタプラの兵器実験施設の転送室に座標固定!o(^^o)(o^^)o』

10秒としないうちにライシエルは座標設定を行ってくれた。俺たちはトランスポートの上に集まり、第2無人世界へと飛んだ。

「ライシエル。この施設を丸裸にして来い」

『イエス!∠(^-^)』

近代的な造りのホールへと着いてすぐに施設内のマップの構築、カメラやトラップの制圧をライシエルに指示する。そして今度は30秒くらい経過して、『できた~!』戻ってきた。この施設もかなりの大きさを誇り、地上1階、地下4階建てだ。

「キュンナとグレゴールは・・・ここか」

マップ上にピンが立てられている。しかしカメラがその部屋には無いのか姿は確認できないが、生命反応がこの2つだけという報告を受けたため、俺たちは中央ホールと表示された部屋へと目指す。

「リアンシェルト。ホールに入ると同時に俺とミヤビで速攻を仕掛ける。中まで付いて来ても構わないが、ヴィヴィオ達を必ず護れ」

「ええ、判っています。結界を展開すれば問題ないでしょう」

ようやくホールの入り口にたどり着き、ライシエルにドアを開けさせて突入する。ホール内の中央にある円卓にキュンナとグレゴールが着いて、何かを話し合っていた。そんな3人が俺たちに気付いて、「な・・・!?」驚愕に目を見開いた。

「ルシリオン! それにヴィヴィオ様・・・!」

「リアンシェルト・・・!」

ガタッと椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった2人は、それぞれデバイスを起動した。 
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