ある晴れた日に
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613部分:やがて来る自由の日その三
やがて来る自由の日その三
「次の日曜にだ」
「次の日曜か」
「わかったわ」
皆そのことを聞いてあらためて頷いた。
「御前はそうしたらいいさ」
「私達は私達でね」
「やれることをやるから」
「そうか」
彼等のその言葉を聞いて正道も静かに頷いたのだった。
「それじゃあな」
「ああ、また」
「それで」
これで話は終わった。皆その日は佐々の家に向かい桃を持ってそのうえで病院に向かった。そしてそこで未晴にその桃を渡すのだった。
「はい、未晴」
「食えよ」
「ねっ、美味しいからね」
五人がだった。車椅子の未晴にそれぞれ桃を差し出す。だがやはり反応はない。今彼女は病室にいる。そこで話をしているのである。
やはり未晴に反応はない。全くだった。だがそれでも五人は諦めずに彼女に声をかけ続けるのだった。あくまで諦めないというのだ。
その彼等にだ。桐生が声をかけたのだ。
「あの」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「場所変えない?」
こう五人に言ってきたのだ。
「場所をね」
「ここじゃなくて」
「何処に」
「外に出よう」
そこだというのである。
「病院のお庭なんてどうかな」
「そうね。そこだったら」
「いいよな」
「ええ、確かに」
五人は桐生の言葉を受けて頷き合った。それで病室を後にしようとする。
そしてここで。野茂と坂上が皆に言ってきた。
「じゃあ桃はな」
「俺達が持つからな」
桃を二人で持つというのである。
「先に言ってくれ」
「後で行くからな」
「そう。だったら」
「頼むな」
こう言ってだった。皆で向かう。皆中庭に出るとだった。すぐに未晴を囲んだ。車椅子の彼女を囲んでまた話をするのだった。
「それでな」
「食おうぜ」
ここでも野茂と坂上が皆に声をかけてきた。
「桃剥いてな」
「ナイフも持って来たからな」
「用意がいいのね」
千佳はそんな彼等を見て述べた。
「それもって」
「何かな。俺達もな」
「頑張らないといけないなって思ってな」
だからだというのだった。
「それでなんだよ」
「ちょっとな」
「だからなの」
「そういうこと。それでな」
「俺達もできること考えたんだよ」
その手のナイフを柄から皆にそれぞれ手渡しながら話していく。
「それでなんだよ」
「こういうことからってな」
「そうだね」
加山が二人の言葉に頷いた。
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