ある晴れた日に
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612部分:やがて来る自由の日その二
やがて来る自由の日その二
「ちゃんと」
「それでも一人で五十個って」
明日夢もその数を強く意識していた。
「孫悟空じゃあるまいし無理でしょ」
「そうだよね。けれどそれだけあっても」
竹山も言う。
「食べきれないと駄目だし」
「それじゃあ」
しかしここで加山が皆に話した。
「その桃全部病院に行かない?」
「全部?」
「その百個の桃を」
皆でその加山の言葉に声をかける。
「未晴のところに持って行くって」
「そうしろっていうの」
「そうなの」
まさにそうだというのだった。加山は。
「じゃあそうする?」
「悪くないかも」
「それも」
「そうね」
それに千佳も頷いた。
「皆でね」
「食べたらいいね」
「未晴と一緒に」
「それだったら」
こう話していってだった。彼等は決めたのだった。
「よし、じゃあ桃全部持って行ってな」
「そうしようか」
「それで皆で」
「未晴と一緒に」
そう決めたのだった。そして決めたところでだった。
「おい」
「おい!?」
「その声が」
「俺だ」
正道だった。彼が皆のところに来たのである。
「いいか」
「ってあんたまた」
「俺達のところに来るなんて」
「珍しいわね」
皆まずはこのことに驚いた。いつも自分の机に座ってそこでギターを奏でているからである。それで驚かない方が不思議であった。
「どういう風の吹き回しなんだ?」
「何かあるの?」
「勘がえた」
まずは素っ気無く述べた彼だった。
「俺もだ」
「考えたっていうと」
「何をなの?」
「未晴を植物園に連れていく」
このことを彼等にも告げたのである。
「皆にもだ」
「植物園っていうと」
「あれか?八条大学の」
「あそこなの?」
「そうだ、あそこだ」
まさにそこだというのである。未晴をそこに連れて行くというのだ。
「あそこに連れて行く」
「やっぱりあれ?未晴の為に」
「お花とか草木とか」
「それでなの」
「ああ、そうだ」
まさにそうだと言うのだった。その言葉は強いものだった。
「花や草木はいい。だからだ」
「そうよね、それは」
「確かにな」
「草木もいい」
「それじゃあ」
皆で言う。そうなのだった。
「未晴の為に」
「だから」
「連れて行く」
また言う正道だった。
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