ある晴れた日に
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608部分:アヴェ=マリアその八
アヴェ=マリアその八
「それはね。もうね」
「その時は、って覚悟はしていたわ」
「そういうことよ。幸いにしてそうはならなかったけれど」
「それでも」
「覚悟は」
「それが友達じゃないかしら」
また言う恵美だった。
「心から心配するのがね」
「いざという時には」
「そうやって」
「何か。そう思えてきたのよ」
話しながら自分でも考える顔になっていたのだった。顎に自分の右手を当ててだ。
「私もね」
「そういえば最近恵美も」
「変わったわね」
二人もふとこんなことを言った。
「昔はもっとクールな感じだったのに」
「何かそういうこと言うようになったのね」
「私もね」
すっと笑ったのだった。今度は。
「明日夢と茜だけじゃなくて」
「私達だけじゃなくて」
「あの五人が本当に友達だって思えてきたのよ」
「そうね。私達も」
「何か」
そしてそれは二人もなのだった。
「ただ遊ぶだけじゃなくて」
「そういうものも」
「皆そうだと思うわ」
それは三人だけではないともいうのだった。恵美の言葉はさらに深さを増してきていた。
「皆がね」
「じゃあ野本とかも」
「男連中も」
「そうよ。皆同じなのよ」
そうだともいうのだった。
「このことについてはね」
「そうなの。皆が」
「同じなのね」
「未晴も」
彼女もだというのだ。
「それに音橋も。音橋は特にね」
「あいつ、本当に何処までもね」
「頑張ってるのね」
「その心は絶対に未晴に届いているわ」
恵美の言葉がまた強いものになっていた。
「絶対にね」
「そうね。それはね」
「絶対ね」
それは二人もわかっていた。わかるようになってきていた。
「それじゃあ」
「私達も」
「このまま行きましょう」
恵美は二人に告げた。
「このままね」
「ええ、じゃあ」
「このまま」
そして二人も彼女の言葉に頷くのだった。
「進んでいきましょう」
「このままね」
こうして二人はこのまま先に進むのだった。彼女達も意を決したのだった。そしてその頃正道もまた。その道を歩いているのであった。
今日も見舞いに来てだ。ギターを奏で歌を歌っていた。今日は病院のすぐ側の公園に未晴を連れ出している。そこで晴美と共にいた。
その彼女が歌が一曲終わったところで。車椅子の娘の側のベンチに座って音楽を奏でていた彼に問うた。彼女はそこでは立っていた。
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