レーヴァティン

「もういい」
「諦められますか」
「その時は」
「そうされますか」
「俺は断られた相手にはそれ以上はない」
　供の者達に実際に語った。
「それで脈無しと思ってだ」
「それ以上はですね」
「声をかけられず」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「次の相手を探す」
　これは起きた時でもだ、もっとも英雄は起きた世界では女遊びはしない。そうした場所が近くになく金もないからだ。
「その時はな」
「では、ですか」
「あの方についても」
「断られると」
「その時は」
「終わりだ」
　まさにというのだ。
「そうする」
「左様ですね」
「それではですね」
「一度声をかけられて」
「素性を明かされたうえで」
「申し出よう」　
　妻に迎えたいと、というのだ。こう言ってだった。
　英雄はここで断を下した、その断はというと。
「一度大坂に戻る」
「そうされますか」
「ここは」
「その様にですか」
「宿を引き払うとな」
　そうすればというのだ。
「すぐに移動の術で大坂城に戻り」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「あの方にですか」
「誘いをかけられますか」
「素性を明かしてな」
　即ち関西全域の棟梁ひいてはこの世界を救うことを使命とする者だということをというのだ。英雄は真剣だった。
「だからここはな」
「一旦ですか」
「大坂城に戻りますか」
「あの城に」
「そうする、俺は遊ぶが妻についてはな」
　常にという口調での言葉だった。
「隠さない」
「ご自身のことを」
「一切ですか」
「そうする、妻と向かい合わずして誰と向かい合う」
　こうまで言うのだった。
「常に共にいる相手とな」
「だからこそ余計にですか」
「そうされますか」
「結婚される前から」
「結婚を申し出られる時から」
「そうする、では戻るぞ」
　供の者達に告げた、そしてだった。
　英雄は実際に宿を引き払うと彼等と共に移動の術で大坂に一瞬で戻った。そしてその後ですぐにだった。
　城で文章を書いた、そのうえでまた言った。
「ではだ」
「その文をですね」
「長田のあの娘に送る」
　こう傍にいた官吏に述べた。
「郵便でな」
「今整えているそれで」
「そうだ、それを使ってだ」
　そのうえでというのだ。
「大坂に来てもらい」
「棟梁ご自身が」
「結婚を申し出る」
　実際にというのだ。