レーヴァティン
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第百十四話 長田にてその六
「だからな」
「それで、ですか」
「その倍場合はですか」
「諦められる」
「そうされますか」
「そうだ、その場合はな」
あくまでと言うのだった。
「そうする、だが」
「だが?」
「だがというと」
「ここは」
「この場合はですか」
「そうだ、そしていい娘だと思うが」
それでもとだ、英雄はこうも言った。
「一目ではわからない場合もある」
「だからですか」
「見極められる為にも」
「今はもう少しですか」
「あの娘をご覧になられますか」
「そうしよう、暫くここに留まる」
この長田にというのだ。
「いいな」
「わかりました、ではです」
「この度はです」
「すぐに宿を探しましょう」
「そしてそこに泊まりつつ」
「あの娘を見ましょう」
「そうしよう」
こう言ってだ、英雄は宿を取りそこから娘をじっくりと見極めることにした。するとすぐにわかったことがあった。
「三人姉妹の長女で」
「親に素直、妹達には優しい」
「そして誰にも公平で温厚で」
「随分といい娘ですね」
「働き者で嫌な顔一つしないとか」
「そうだな、そしてだ」
英雄も言うことだった。
「相手もいないな」
「その様ですね」
「このこともいいですね」
「ではですね」
「この度は」
「あの娘を」
「相手がいないこともわかった、それにだ」
英雄はさらに言った。
「心根もいい」
「ならですね」
「棟梁としても問題はない」
「では決められましたね」
「いよいよですね」
「動く」
実際にというのだ。
「そうする」
「ではどうされますか」
「この度は」
「どの様に動かれますか」
「遊ぶ時は素性を隠すこともある」
英雄も遊郭に行く時は一介の冒険者と名乗っていた、ただし身分を隠しても偽りの身分を言うことはない。冒険者は冒険者だったからで今は武士とだけ名乗っている。
「しかしな」
「こうした時はですか」
「ご正室を決められる時は」
「そうした時は」
「やがてわかるのだ」
素性、それがというのだ。
「だからだ」
「最初からですね」
「棟梁であることを名乗られ」
「そしてですか」
「そのうえで」
「妻に迎えたい、だが断られれば」
相手にだ、そうされればというのだ。
「その時は仕方ない」
「左様ですか」
「その時は断られますか」
「そうされますか」
「一度断られるとな」
これは英雄の性格としてのことだ。
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