ある晴れた日に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
546部分:柳の歌その十三
柳の歌その十三
「柳って風にゆらゆらと揺られてるじゃない」
「ああ」
「それがどうしたの?」
「何かね。こう言うのって柄じゃないけれど」
こう言ってからまた言うのだった。
「あれね。不安定な感じで寂しくて」
「不安定で」
「寂しくて?」
「今の私達みたいな感じね」
今一つ晴れない顔での今の言葉だった。
「何かね」
「そうだね」
今の彼女の言葉に頷いたのは加山だった。
「言われてみればね」
「そうでしょ?」
加山の言葉にまた応えて言う茜だった。
「そんな感じがするわ、本当に」
「柳か」
「そういえばそうね」
「何かな」
皆彼女の今の例えに頷く。
「そうした感じに見えるのは」
「確かだよな」
「未晴は。どうなるかわからないし」
今度は彼女のことを言葉に出す。
「何かそんな気がするのよね」
「ええ」
隣にいた奈々瀬が彼女の今の言葉に頷いた。
「そうね。風に吹かれて今にも折れそうね」
「でしょ?折れたら終わりだし」
茜はこうも言った。
「何か似てるわよね」
「折れるとか終わりとかって」
「えらく悲観的な言葉ね」
「ちょっとね」
悲観的であるのを否定しない茜だった。
「それはね。何かね」
「否定できないっていうのかよ」
「それは」
「ええ」
また言う茜だった。
「どうもね」
「それも仕方ないかしら」
奈々瀬も俯いて茜のその言葉に頷いた。
「今は。やっぱり」
「仕方ないって」
「あんまり悲観的じゃない」
静華と凛も今の奈々瀬の言葉に目を顰めさせずにはいられなかった。
「そんな。折れたら終わりなんて」
「前向きに考えたら?」
「考えられる?」
しかし奈々瀬は二人にその暗い顔で返したのだった。
「今。未晴があんな状態なのに」
「それは」
「そう言われると」
弱った顔になってしまう二人だった。そしてそれは二人だけでなく今一緒にいるみんなの殆どがだた。そうなってしまっていた。
「ちょっと」
「少しはね」
「私達もさ。やってること無駄になるんじゃないかな」
茜がまた言った。柳を見続けたまま。
「未晴が元に戻らなくて。それで風に揺られて折れて終わりなんじゃないの?」
「折れないわよ」
しかしだった。ここで言ってきた者がいた。
「折れないわよ。柳だったら」
「えっ、めぐりん」
奈々瀬が彼女の仇名を呼ぶと共に彼女に顔を向けた。すると彼女は顔をあげて毅然とした顔でその風に揺れる柳を見続けていたのである。
「柳は折れないわよ」
「折れないっていうの?」
「見て」
今度は茜に対しての言葉だった。その最初に言った彼女に対してのだ。
ページ上へ戻る