ある晴れた日に
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545部分:柳の歌その十二
柳の歌その十二
「それで二つ目はね。彼和菓子系統も好きじゃない」
「よく見てるわね」
凛が今の彼の言葉に少し驚いた顔をして突っ込みを入れた。
「甘いものは何でも食べると思ってたけれど」
「実際にはそうなんだけれどね」
それは否定しない彼だった。
「実際に甘いものも何でもいけるしね」
「それでも和菓子がか」
「好きなのね」
あらためて頷く彼等であった。
「それでお抹茶のカステラも」
「そうなるの」
「そういうことなんだ」
また言う桐生だった。
「それで二つ目はお抹茶でね」
「それで最後の蜂蜜は」
「何でなの?」
「この前蜂蜜がたっぷりかかったパンを食べていたからね」
そうしたところまでじっくり見ている彼であった。ただそこにいるだけではないのである。
「だから最後はそれにしようって思ってね」
「成程」
「それでなんだ」
「これでどうかな」
自分の考えをここまで出して述べてから皆にあらためて問う。
「この三つで」
「いいんじゃないの?」
「そうだな」
皆これで納得して頷いたのであった。
「特にそれでね」
「問題ないよ」
「よし、それじゃあ放課後はね」
はなしは放課後の話にもなる。具体的に何をするかということある。
「百貨店に行こう、皆でね」
「その抹茶と蜂蜜のカステラを買いに」
「八条百貨店に」
「カステラはどれもたっぷりあるらしいわよ」
咲はここでまた皆に話した。
「もうね。たっぷりね」
「そう、たっぷりと」
「じゃあ問題ないな」
「お抹茶のもカステラのもまず大丈夫だと思うわ。何だったら」
スカートのポケットから携帯を取り出す。そのうえでメールを打つのだった。
「お父さんに?」
「そのカステラをキープしてくれって?」
「パパじゃなくてお兄ちゃんだけれどね」
くすりと笑って皆の問いに応えてメールを送信するのだった。
「お兄ちゃん食料品担当だから」
「へえ、そこなのかよ」
「あんたのお兄ちゃんってそっち担当だったの」
「それまではインテリアにいたけれど配置替えになったのよ」
だからだというのだった。
「それでね。今そこにいるのよ」
「じゃあ御前の兄ちゃんに頼んだら」
「カステラはキープできるのね」
「そういうこと。さて、これでいいわ」
画面に出る送信完了の文字を見て満足した顔で微笑む咲であった。
「これでね」
「じゃあ放課後かあ」
「そこで買ってからいざ」
「病院に」
こう打ち合わせをして放課後百貨店に向かい咲の兄が取っておいてくれたその二種類のカステラを買ってそれから病院に向かう。そこで買ってからであった。
そうして恵美の言ったやり方で差し入れをしてもらい病院を後にする。皆それからスタープラチナに寄ることにした。
その途中の道に柳が続いていた。緑のその細い木の枝を見て。茜がふと言った。
「ねえ」
「何だ?」
「どうしたの?」
「何かあれね」
その柳を見ながら皆に話すのであった。
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