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ある晴れた日に

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541部分:柳の歌その八


柳の歌その八

「あの人でいいんだな」
「ええ、いいわ」
 いいと返す恵美であった。
「看護士さんならね」
「そうか。あの、すいません」
 早速その看護士に声をかける佐々だった。
「あのですね」
「はい。何ですか?」
「差し入れを届けて欲しいのですけれど」
 恵美が顔を向けてきた彼女にこう話したのだった。
「御願いできるでしょうか」
「差し入れをですか?」
「あのですね」
 ここで顔を曇らせてそっと彼女に囁いた恵美であった。
「隔離病棟に」
「隔離病棟にですか」
「御願いできますか」
 こう小声で囁いたのである。
「宜しければ」
「わかりました」
 それまで明るい顔だったその美人の看護士の表情が一変した。一気に暗い顔になってそのうえで二人に顔を向けて言ってきたのだった。
「あの、まずはですが」
「まずは?」
「こちらへどうぞ」
 こう言って病院の事務所の中に案内するのだった。その奥のソファーに座ってもらったうえでそのうえで白衣の医者が出て来たのだった。看護士は彼を案内するとすぐにその場を後にしたのであった。医者は年配で皺だらけの顔をしている。その彼が二人に問うてきた。
「隔離病棟に差し入れですか」
「はい、竹林未晴さんの」
「クラスメイトでして」
「そうですか」
 それを聞いてまずは頷くその医者だった。
「お友達ですか」
「はい、そうです」
「その通りです」
 佐々と恵美は同時に二人に答えたのだった。
「そこにいる音橋正道って奴に」
「御願いします」
「あの彼ですね」
 医者も彼のことを知っている様であった。話を聞いて静かに応える。
「彼にですか」
「はい、そうです」
「お見舞いと考えてもらってもいいです」
「見たところジュースと果物と」
 まずは恵美のものを見ての言葉である。
「それとそれは」
「鍋です」
 それだと答える佐々だった。
「それを差し入れたいんですけれど」
「そのジュースは」
 医者はまた恵美がテーブルの自分の前に置いているジュースを見た。緑色のジュースであるが一見するとかなり不気味な色である。
「かなり栄養に配慮して作られたんですね」
「わかるんですか」
「はい、おおよそは」
 わかると答える医者であった。
「味はどうかわかりませんが身体にはかなりいいですね」
「それを考えて作りました」
 まさにその通りだと答える恵美だった。
「それとレモンを蜂蜜を漬けたものを」
「それもですね」
「はい、そうです」
 また言う恵美だった。
「彼に御願いできますか」
「わかりました」
 医者は彼の言葉を受けて応えた。
「そうしてそちらの鍋も」
「そうですよ」
 佐々は真剣な顔で応えたのだった。土鍋をそのまま置いてあるのだ。
「これにも色々と入れてます」
「匂いでわかります」
 視覚の次は嗅覚でわかったというのである。
「これもまたかなり健康に気を使って作られましたね」
「当たり前ですよ。あいつに何かあったら困りますからね」
「あのことも御存知なのですか」
 医者は彼の今の言葉からあることを悟ったのだった。
 
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