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ある晴れた日に

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540部分:柳の歌その七


柳の歌その七

「ジュースをね」
「ただのジュースじゃないみたいね」
「人参とほうれん草と林檎も」
 まずはそうしたものだった。
「キャベツとかも入れてるわ。ミックスジュースよ」
「また何でそんなもの作ってるのよ」
「ちょっとね」
 ここでもこう言う恵美だった。
「人にあげるの」
「それでそんな野菜ジュース作ってるの」
「あとは大蒜や生姜も入れて」
 そうしたものも入れていくのだった。実際に入れている。
「これでいいわね」
「何か凄い味みたいね」
 横で見ているだけにしろこう突っ込まざるを得ない母であった。
「その人ってどっか悪いの?そんなの飲むなんて」
「悪くなってもらったら困るから」
 だからだというのである。
「だから今からね」
「作ってるの」
「それで」
「そうよ」
 また言う娘だった。
「健康でいてもらわないと」
「明日夢ちゃんとか茜ちゃんだったらそんな心配ないんじゃないの?」
 小さな頃から一緒にいる彼女達の名前をここで出したのだった。
「あの娘達がそうそうへこたれるとは思えないけれど」
「あの二人じゃないわ」
 彼女達でもないというのだ。
「もっとも二人がそうなって欲しかったらこうして作るでしょうけれど」
「そうなの」
「そうよ。けれど二人のうちのどっちでもないわ」
 それは確かだというのである。
「それはね」
「何か話がわからなくなってきたわね」
 母は娘がミキサーからそのジュースを出してコップに入れるのを見ながらまた述べた。そのうえでレモンも持って何処かに行こうとしているのもだ。
「しかも何処に行くのやら」
「暫くしたら帰って来るから」
「車には気をつけなさいよ」
 気をつける言葉をかけるのは忘れていない。
「何処に行くにしてもね」
「ええ、それじゃあ」
 こうして家を出て病院に向かう恵美だった。その入り口で佐々とばったり会ったのだった。
「あんたもできたの」
「まあな」
 楽しげに笑って恵美の言葉に応える佐々だった。それぞれ恵みは病院の左、佐々は病院の右にいてそのうえで顔を見合わせていた。
「これ食ったら随分違うぜ」
「こっちもよ」
 恵美もうっすらと笑って応える。
「これを飲めば間違いないわ」
「あいつに何かあったらまずいからな」
「そうね」
「そしてだ」
 ここまで話したうえで、であった。さらに言う佐々だった。
「おい」
「何?」
「問題はこれをどうやってあいつに届けるかだよな」
「ああ、それだけれど」
 恵美は彼の言葉にすぐに返してきた。
「簡単よ」
「簡単にできるのかよ、それ」
「できるわ。まずはね」
「ああ、まずは?」
 病院に入りながらだった。その中に進みながら佐々に話すのだった。その手にコップと蜂蜜を入れたケースがある。佐々は皿を持っている。
「看護士さんがいたら」
「ああ、そこにいるぜ」
 すぐに側を通る美人の看護士に気付いた佐々だった。二十歳程度のはっきりとした美人で背も高い彼女が丁度側を歩いているのだった。
 
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