ある晴れた日に
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538部分:柳の歌その五
柳の歌その五
「指がどうにかなったら終わりじゃない」
「それはそうだけれど」
「けれど指なんて」
「ギターだったらどうしても裸になるし」
「怪我し易いぜ」
五人がそれぞれ桐生に対して言ってきた。
「だから。ちょっと」
「どうしようもできないんじゃ」
「それでもやり方はあるよ」
しかしこう言う桐生だった。
「新しいギターコードを用意したりテーピングの用意したりしてね」
「何か今回も細かいわね」
茜がそれを聞いて静かに述べた。
「けれどそうした細かさこそがなのね」
「うん、それと」
桐生はさらに考えていくのだった。今度は。
「疲れかな」
「疲れか」
「そういえばあいつ」
皆ここであらためて彼のことを考える。毎日十時過ぎまで病室で歌っているという。ギターを奏でながら。そこから出る答えは。
「相当疲れてるな」
「そうね」
「相当にな」
そうでなければおかしかった。人は疲労を感じるものだからだ。
「じゃあやっぱりここは」
「それを取る為にも」
「何でもあるけれどね」
それは何でもあるという桐生だった。
「一番大事なのは身体を休めることだけれど」
「それが出来ない時は」
恵美がここで述べた。
「食べ物か飲み物ね」
「ああ、じゃあいいものがあるぜ」
佐々が言ってきた。
「こっちのスタミナのつく料理な。どっさりとな」
「こっちもあるわ」
今度は恵美が言った。
「いいものがね」
「っていうと」
「何があるの?」
「うちのお店レモンに蜂蜜漬けてるのよ」
彼女が出してきたのはそれだった。
「あと飲み物も。野菜ジュースがあるわ」
「野菜ジュースね」
「健康にいいよな」
「身体を休められないと補給するしかないから」
また言う恵美だった。
「これだとどうかしら」
「それもいいんじゃない?」
「だよな」
「栄養も摂れば」
「うん、それでいいよ」
また応える桐生だった。
「そういった食べ物やジュースで」
「大蒜とかセロリとかな。ニラとか生姜とか何でもあるぜ」
「こっちもよ。そういったジュースもあるから」
「あまり美味しくなさそうだけれど」
「そこは工夫するか」
「よし、そうやっていって」
「バックアップしていくか」
皆で言い合う。
「よし、これでとりあえずは決まりね」
「裏方仕事開始ね」
「気合入れてやっていくわよ」
今にも手を合わせんばかりであった。
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