ある晴れた日に
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494部分:冷たい墓石その二
冷たい墓石その二
「ただな」
「ただ?」
「っていうと?」
「誰のお見舞いなんだ?」
見舞いというからにはその相手が必ずいる。彼女がこう考えていくのも当然だった。
「一体よ」
「家族とか親戚とか?」
「そうじゃないの?やっぱり」
「それかお友達とか?」
「ダチか」
その言葉を聞いてまた考える顔になった。春華だった。
「ダチ、だよな」
「それが誰かはわからないけれど」
「誰かいてじゃないの?」
「そういえばうち等ってよ」
春華は話しているうちにまたあることに気付いた。それは。
「あいつのこと殆ど知らなくね?」
「あっ、そういえば」
「確かに」
他の四人も彼女の言葉を聞いてそのことに気付いたのだった。
「一応どの中学かは知ってるけれど」
「それ位?」
「そうよね」
五人顔を見合わせて話す。気付いてみれば本当に知らないことだったのである。
そうしてさらに話していく。そのいぶかしむ顔で。
「家族とかそういうのも知らないし」
「一応お父さんとお母さんがいて?」
「妹さんがいたんだっけ」
「弟さんじゃないの?」
家族構成についてもこれといって知らないのだった。彼女達は。
「長男だったわよね、確か」
「まあ兄貴や姉ちゃんがいるとは思えないけれどね」
「それはね」
それについては彼の性格からおおよそ察したことだった。その無愛想な性格はどう見ても兄弟の中で一番上の人間のものであった。
そしてだった。ここで春華は言うのだった。
「それであいつのツレは?」
「あれっ、いるの?」
「一応私達ってことになるけれど」
「一応中学時代のツレとかいるだろ」
春華は話した。
「多分よ。いるだろ」
「いるっていっても誰?」
「誰なんだろ」
「この学校に誰かいたか?あいつと同じ中学の奴」
春華はいぶかしみ考える顔で四人に言った。
「誰かよ」
「ええと。一人はいるんじゃないの?」
「二年か三年でも」
「先輩達か」
春華は先輩の可能性も考えて今度は難しい顔になった。そのうえでまた述べたのだった。
「ちょっとなあ」
「聞きにくいわよね、やっぱり」
「先輩達だと」
「ああ、うち等一年だしよ」
どれだけ言ってもこのことは絶対に変えることはできない。学園において学年とはある意味絶対のものがあるのは彼女達もよくわかっていることだった。
「だからな。先輩達だとな」
「難しいわよね」
「話を聞くのが」
「同級生で誰かいないの?」
奈々瀬もまた難しい顔になっていた。その顔での今の言葉である。
「誰か。あいつと同じ中学校の」
「いたらいいけれど」
「あいつと同じ中学校って」
「誰だった?」
「一応探してみる?」
凛がいぶかしむ顔で一同に提案してきた。
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