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ある晴れた日に

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490部分:歌に生き愛に生きその十二


歌に生き愛に生きその十二

「ネーミングは悪くないし」
「そうだろ?黒い燕なんていかすだろ」
「それはそうだけれどね」
「じゃあいいんだよ。それで帰るからさ」
「事故るなよ」
 野本がここで彼女に言ってきた。
「こけたりしたら洒落にならねえぞ」
「それはわかってるって。安心しなよ」
 実に気軽に彼に返すのだった。
「まあ速いバイク見たら追い抜かしたくなるけれどな」
「それ駄目なんじゃないの?」
 茜が今の春華に対して返した。
「そういうのが事故の元なんじゃ」
「うっ・・・・・・」
「だからそういう癖は止めなさいよ」
 くれぐれもといった口調だった。
「本当にね」
「まあそうだけれど」
 同じ女の子に言われる方が弱いらしい。春華の返答はしおらしいものになっていた。
「それはさ」
「まあ最近格好いいバイク見るしね」
 春華に言ったところでこんなことも自分から言う静華だった。
「ハーレーとかサイドカーとか」
「ああ、あのサイドカーな」
 サイドカーと聞いてすぐに顔をあげて言ってきた春華だった。茜に注意されてそれでしおらしいものになってしまっているのであったがそれが元に戻ったのだ。
「黒と金色のカラーリングのだろ」
「サイドカーだから目立つのよね」
 茜はこうも言った。
「ちょっと以上にね」
「あれな。うちはサイドカーは趣味じゃないんだけれどな」
 こう断るがそれでもという調子であった。
「いいよな、やっぱりな」
「そのサイドカーも追い抜かそうとするの?」
「いや、あのサイドカー異常に速くてよ」 
 春華はそのサイドカーについても話した。
「追い抜くなんてとてもな」
「できないのね」
「できねえできねえ。ありゃかなりチューンアップしてるな」
「サイドカーかよ」
「俺はまだ見てねえけれどな」
 ここで言ったのは坪本だった。
「俺もバイクやるけれどな」
「ああ、そういえばそうだったな」
「あんたもだったわね」
 皆彼自身の言葉からこのことを思い出したのだった。
「バイク乗ったんだな」
「そうだったわね」
「ああ。まあ噂には聞いてるぜ」
 彼も話には聞いているのだった。あくまで話としてだけであるが。
「無茶苦茶速い、バイクより速いサイドカーがあるってな」
「それだよ。うちは二回見たけれどな」
「実際にすげえ速さだったのかよ」
「あれはまた特別だよ」
 また言う春華だった。
「運がよかったら会えるけれどな」
「運がよかったらなのね」
 明日夢が春華の話を聞いたうえで述べた。
「じゃあ今日ひょっとしたら?」
「かもな。何か噂じゃな」
 春華が今度話すのはあくまで噂話であった。しかしそれでも彼女は真顔で話した。
「そのサイドカー乗ってる人って八条大学の学生さんでな」
「八条大学!?」
「じゃあ近くじゃない」
「そうだよな」
「私達の学校とね」
「それでそこに行けば結構見られるらしいけれどな」
 こう皆に話す春華だった。
「まあ本当かどうかはわからないけれどな」
「けれど今回も会えるかな」
「どうかしらね。それは」
「家にまっすぐ帰るつもりだぜ」
 このことは断るのだった。彼女の家は八条町にあるが八条大学のある方とは全く違う場所にあるのである。だからこう言ったのである。
 
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