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ある晴れた日に

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439部分:辺りは沈黙に閉ざされその六


辺りは沈黙に閉ざされその六

「病院って」
「どうするの?伊藤さん」
「どうするってお見舞い行くんですけれど」
 春華は何を言っているのやら、といった顔で先生達に返した。
「うち等と未晴友達だし」
「そうですよ。ずっと一緒なのに」
「お見舞い行かないと」
「ねえ」
 ここで五人は口を合わせて言った。
「私達が行かないと駄目じゃないですか」
「先生、それで何処ですか?」
「何処の病院ですか?」
 五人の問いに先生達はしどろもどろになる。だがやがて顔に流れ続ける汗をそのままに何とか落ち着きを取り戻してそのうえで答えるのだった。
「まだ安静にしていないと駄目だから」
「病院に行くのはね」
「駄目なんですか?」
「それって」
「ええ、そうよ」
「だからね」
 こう五人に告げたのである。
「今は止めておいて」
「静かにしてあげて」
「そうなんですか」
「そんなにやばいんだったら」
 五人はこれで納得した顔になるのだった。
「今は見送るか」
「そうしましょう」
「皆もよ」
「いいかしら」
 先生達は今度は五人だけではなく皆に対しても言ってきたのだった。
「今竹林さんは大変だから」
「入院先は教えられないの」
「大変?」
 正道は今の先生達の言葉に眉をぴくりと動かした。
「何か妙だな」
「だからね。今はね」
「お家に何かを届けてもらう位はいいけれど」
 それはいいというのだった。
「入院先へのお見舞いはね」
「悪いけれど止めてね」
 先生達は真面目な声で止めた。
「くれぐれもね」
「それは絶対によ」
「絶対、か」
 それを聞いてまた考える顔になる正道だった。
「随分と慎重、いや厳重だな」
「風邪だよね」
 隣の席の加山が彼の言葉を受けて言ってきた。
「確か」
「ああ、そう言っているよな」
「インフルエンザかな」
 加山は首を捻って言うのだった。
「そこまで厳重って」
「だから肺炎なんだろう」
「いや、肺炎は移らないよ」
 彼は言うのだった。
「肺炎はね」
「肺膿になりかけてもか」
「そこまでいったら確かに絶対安静だけれど」
 このことはしっかりとわかっている加山だった。彼は最低限の病気に対する知識を持っているらしい。それはよくわかる言葉であった。
「けれど。面会謝絶レベルって」
「普通の風邪だとないか」
「肺炎でもだよ」
 それでもだというのである。
「移らないし。命に別状はないっていうし」
「命!?」
 その言葉にピクリ、と眉を動かした正道だった。未晴のことで命の話になると流石に冷静さを失う。それだけ未晴のことを思っているからである。
 
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