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ある晴れた日に

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440部分:辺りは沈黙に閉ざされその七


辺りは沈黙に閉ざされその七

 そしてその顔で。さらに加山に問うた。
「命か」
「うん、落ち着いてね」
 加山もまたそんな彼のことに気付いて述べるのだった。
「命に別状はないって言ってたよね」
「ああ」
「先生達はね」
 あえて落ち着いた声で正道に告げる。正道自身も自分でそうした落ち着きを取り戻すべく努力しながらそのうえで話を聞くのであった。
「言っていたよね」
「確かにな」
「それだと肺炎だと流石にお見舞いには行けるよ」 
 こう正道に話すのだった。ひそひそとした声で彼にだけ囁く。
「幾ら肺膿になりかけてもね」
「そういうものか」
「そうだよ。だからね」
 ここでまた言うのだった。
「インフルエンザじゃないかなって思ったりしたんだ」
「それでか」
「うん、それでなんだ」
 加山はだからだと言うのであった。
「それだと思ったけれど」
「インフルエンザか」
「あれは絶対に隔離されるからね」
 加山の囁く声が真剣なものになった。
「それは知ってるよね」
「ああ、一応はな」
 正道自身はかかったことはないがそれは知っているのだった。
「知っている」
「そういうことだけれど」
 加山はここであらためて考える顔になって声もそれに準じさせていた。どうもここで何かしら引っ掛かるものも感じているようであった。
「ただ」
「ただ?」
「インフルエンザにしてもおかしいかな」
「おかしいか」
「何かね。そんな気もするんだ」
 こう言うのである。
「厳重過ぎるっていうかね」
「厳重か」
「入院先まで秘密なんだよ」
 彼が指摘するのはこのことだった。これは正道も抱いている疑念であった。
「それもさ。柳本さん達にまでじゃない」
「あいつ等にもか」
「竹林さんとは本当に親友同士だよ」
 彼女達の絆についてはもう言うまでもないことだった。
「それこそ小さな子供の頃からじゃない」
「それはあいつ等も言っているし皆が知ってるな」
「そんな人達にも内緒だなんて」
 加山はこう言って首を傾げさせた。
「厳重過ぎるよ」
「有り得ないか」
「有り得ないね」
 加山は真顔で言い切ってきた。
「少しね。あの五人にもっていうのは」
「あいつ等に教えなくて誰に言うのかってことだよな」
「あれでしょ?あのグループの付き合いってそれこそ」
「兄弟みたいなものだろ」
「そんな人達にも絶対に秘密みたいだし」
 ここで加山はその咲達を見た。彼女達はそれぞれいぶかしむ顔になっている。しかしそれでも先生達は言おうとはしないのであった。
「後で教えてくれますよね」
「私達だけに」
「未晴の入院先」
「絶対に言わないからさ、他の奴には」
「だから御願いします」
 その五人が先生達に願い出ていた。しかし返答はけんもほろろであった。
「だから駄目よ」
「我慢して、それは」
 あくまでこう言うのである。
「竹林さん今本当に大変だから」
「だからね。御願いよ」
「何で咲達駄目なんだろう」
「そこまで言うのなら仕方ないけれど」
 先生達のあまりにもけんもほろろな態度に引き下がるしかない五人だった。
「何か腑に落ちないけれど」
「仕方ねえ?ここは」
「そうかも」
「ほらね」
 そんな五人を指差してまた正道に告げる加山だった。
 
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