ある晴れた日に
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371部分:天使の様なその十六
天使の様なその十六
「後は」
「どうするのかしら」
「はい」
しかしここで、であった。それまで人の気配すらしなかったカウンターから声がしてきた。中年の女の声であった。
「キーはここです」
「あっ、あそこか」
「あそこで貰えるのね」
「201号室ですね」
やはり声だけがする。窓からは中身は見えない。
「こっちですよ」
「それじゃああそこに行って」
「鍵よね」
「お金は帰りの時で御願いしますね」
そしてこうも言ってきたのだった。
「今は三九九〇円です」
「わかった」
正道がその金の話に頷いた。
「じゃあ帰りにな」
「お金は」
「持ってる」
こう未晴に答えるのだった。
「だからな。安心してくれ」
「そうね。それじゃあ」
「サービスは何かいりますか?」
また声が二人に対して言ってきた。
「無料サービスありますけれど」
「無料。ですか?」
「ウィルやプレイステーション2貸し出ししていますよ」
こう言ってきたのだった。
「他にもコスチュームも」
「コスチュームって」
未晴はそれを聞いて目を点にさせてしまった。
「そういうのもあるんですか」
「セーラー服にナースにスチュワーデスにバニーガール」
声は淡々と述べていく。
「チャイナドレスにブルマーもありますよ。どれがいいですか?」
「あの、どれって」
未晴は顔を真っ赤にさせて言葉を詰まらせてしまっていた。
「どれって言われまして」
「サービス何かいりますか?」
「いえ、私は」
「俺も」
正道も言うのだった。
「別にいいです」
「必要ない」
見れば正道の声もかなり戸惑ったものであった。やはりそういったことは知らないので淡々とさえ言われたので驚いているのである。
しかしそれでも。ここで彼は言ったのだった。
「それは別にな。いい」
「そうですか。いりませんか」
「それでキーは」
「これです」
黒いプラスチックのカード状のものだった。
「これをどうぞ」
「ああ。それじゃあな」
そのカード状のキーを受け取りカウンターの左手のエレベーターに二人で入るのだった。二階だったので辿り着いたのはすぐであった。
「部屋は」
「ここみたいよ」
未晴がエレベーターを出てすぐの部屋を指差した。
「ここね」
「ふうん、ここか」
正道はその部屋の扉を見てまずは何とでもない声を出した。
扉は白いプラスチックのもので何とでもないものだった。ただ部屋の扉のその上にあるナンバーが赤く点滅しているのだけがはっきりと見えた。6
「ここに入るんだよな」
「201号室ってあるしね」
「そうだな。じゃあここに入るんだな」
「間違いないわ。じゃあ」
「行くか」
こうして彼等はその部屋の扉を開けた。しかし部屋の中は真っ暗闇であった。何かが見えるような部屋ではなくまずは灯りを探すことになった。
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