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ある晴れた日に

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372部分:天使の様なその十七


天使の様なその十七

 それは玄関のすぐ側にあった。未晴がそれを見つけて言った。
「そこよ」
「よし。それじゃあな」
 正道がそのスイッチを押した。すると部屋の中がすぐに照らし出された。
 部屋の中はパネルにあった通りピンク色であった。そのピンク色の部屋が奥に見える。二人はまずは靴を脱いでそれから廊下を進んだ。そうして部屋に入り。
 二時間近くしてから二人は部屋を出た。
 エレベーターでフロントに行きそこで勘定を払う。そのうえで外に出るともう夜だった。
「ねえ」
「あっ、ああ」
「ええと」
 見れば未晴はまた顔を俯けさせていた。そうしてその赤くなった顔でいるのだった。
「何ていうかしら」
「何てって何だ?」
「はじめてだったのよね」
「俺もな」
「よくわからなかったけれど」
 未晴は戸惑いながらも言葉を出してきた。
「ああいうのだったのね」
「何か。不思議だな」
 正道もこんなことを言うのだった。
「あれがか」
「話には知っていたわ」
 そのことについては知っているのだった。
「やっぱりね。それはね」
「俺もな」
 それは彼も同じであった。ホテルのその玄関のところで話すのだった。
「やっぱり。痛かったか?」
「ちょっと」
 これが未晴の返事だった。
「ちょっとだけね」
「そうか。そうって聞いたけれどな」
「けれどそこまで痛くはなかったわ」
 しかし未晴はこうも言うのだった。
「別にね。そこまではね」
「だったらいいんだけれどな」
 正道はそれを聞いてまずは安心したのだった。
「それだったらな」
「痛くはなかったわ」
 未晴はまた言った。
「だから安心して」
「そうか。それ聞いて安心したよ」
「キスも」
 未晴は今度はこのことを話してきた。
「音橋君もはじめてだったのよね」
「実はな」
 これは事実の肯定の言葉ではなかった。否定ではなかった。
「そうだったんだよ。本当はな」
「私も」
 やはり未晴も同じだということだった。
「そうだったの」
「お互い本当にはじめて同士だったんだな」
「ええ。けれど」
 しかしなのだった。未晴の言葉は続く。
「これでお互いはじめてじゃなくなったね」
「そうだな。これでな」
「はじめてじゃなくなったわ」
 未晴はまた言った。
「これでね」
「それだけじゃないしな」
「それだけじゃないって?」
「いや、俺達付き合ってるだろ」
 正道はこのことを言い出したのだった。
「俺達はな。それはな」
「そうよね。それはね」
「絆がな」
 正道が今度出した言葉はこれであった。
「絆ができたよな」
「絆が」
「ああ。絆がな」
 彼はまたこの言葉を出してみせたのだった。
「できたよな」
「いえ、それは最初からあったわ」
 だが未晴はそれについてはこう返したのであった。
 
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