ある晴れた日に
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370部分:天使の様なその十五
天使の様なその十五
「おかしいし」
「そうだよな。こうした場所は外で立っていたりする場所じゃないよな」
「そうね。それはね」
「中に入る場所だ」
それはわかるのだった。よく。
「じゃあな」
「このスカイチャベスに入るのね」
「あらためて聞くけれどな」
最後に、という感じの言葉だった。
「ここでいいよな」
「ええ」
やはり小さくだが確かに頷いた未晴だった。
「そこで。御願い」
「じゃあな」
こうして二人はそのホテルの中に入るのだった。二人がまず入ったのはロビーだった。待つ為の白いテーブルが何セットか置かれている。だがそこには誰もおらずカウンターも手を出す場所が見えるだけで他には何も見えない。やはりその装飾も城を思わせるものになっていた。華やかであり赤や白の色が目立つ。そして右手には多くのパネルがあり番号で分けられていた。
「これ。何かしら」
「確か。これは」
正道はぎこちない声で未晴に答えた。
「あれだよ。部屋だよ」
「ホテルの部屋よね」
「ああ。それで暗くなっている部屋に人がいて」
とりあえず雑誌等で得た知識で話をしていた。
「使っているってことだよな」
「じゃあ明るい部屋には」
「ああ、誰もいないってことだよな」
「そこに入ればいいのね」
未晴はまだ戸惑っていたがそれでも言うのだった。
「二人で」
「そうなるな。それでな」
「ええ」
「何処に入る?」
未晴に顔を向けて尋ねる。言葉も動きもぎこちない。
「何処に入る?それで」
「何処って」
話を振られた未晴は困惑した顔を見せるだけであった。
「ええと、何処がいいかしら」
「とりあえずは」
その中の201号室に目がいった正道だった。
「ここにするか?」
「この部屋に?」
「ああ。どうだ?」
パネルを見ながら未晴に尋ねるのだった。その部屋はピンク色の光で覆われた可愛らしい部屋だった。大きなダブルベッドには柔らかそうな枕が二つ並んで置かれ壁の模様は菱形であった。テレビもありそれが中央にあってかなり強い印象を与えるものになっていた。その部屋の写真を見ながら尋ねたのである。
「ここな」
「そうね。じゃあこの部屋にするの?」
未晴の問いはまだはっきりしないものだった。
「音橋君も」
「おたくがいいんならな」
そうするというのだった。
「俺はそれでいい」
「そう。それじゃあ」
未晴は彼の言葉を聞いてそのうえで頷いた。
「この部屋にしましょう」
「そうだな。ええと」
「ボタン押すんじゃないかしら」
どうやってその部屋にするのかわからない正道に対して言った言葉だった。
「その部屋のところにあるボタン」
「ああ、これか」
「そう、それね」
赤い四角のボタンだった。それについて言うのだった。
「それを押したらだと思うけれど」
「そうだな。じゃあな」
正道はここまで話してそのボタンを押した。すると部屋の写真が暗くなった。それだけだった。
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